第11話Uの陰謀

小学五年生になった侑、高宮くんと疎遠になってから何事もない日々を送っていた。

あれからUへの手紙は何度も来たが、侑は特に気にすることなく手紙を捨てる毎日を送っていた。

そして小学五年生の五月、侑の家にスーツ姿の男が二人やってきた。

「ねえ、あの人たちは誰なの?」

「ああ、不動産会社の人たちですよ。」

「あの人たちはどうして来たの?」

上条は少し沈黙した後、侑に言った。

「・・・実は、重雄様はこの屋敷を売るつもりなのです。それで新しいマイホームを購入して、そこで暮らそうとしているのです。」

「どうして、この屋敷を売るの?」

「ご存知の通り、Uから逃れるためです。あの忌まわしきUのために、私たちは世間から白い目で見られているのです・・・。」

それは侑もつくづく感じていた、クラスで一人ぼっちなのはUによって印象が悪くなった屋敷に住んでいるからである。

「侑様、侑様たちの新たな生活のためにこの屋敷の呪縛から抜け出して、新たな生活を送らなければならないのです。」

上条は侑に力強く言った。

「うん・・・、確かにそうだけど。この屋敷から離れるのは、さみしいよ・・・。」

この屋敷には常識ではありえないことが起こっているのは確かだが、それでも住み慣れた屋敷から出ていくのは、子どもである侑の心にとって不安があった。

「お気持ちはわかります、ですがこれは重雄様が決めたことなのです・・・」

「わかったよ・・・」

侑は一人で部屋へと戻っていった、そしてベッドへと潜り込んだ。

「ぼくはこれから屋敷を出て、新しいところへ行くんだ・・・。友だちもできていないから、みんなに寂しがられることはない。けど、何だか寂しい気持ちがある気がする・・・。」

この気持ちは何だろうと侑は考えこんだが、侑にはわからなかった。









それから夕食の時間になり、侑は重雄に屋敷から引っ越す件について話した。

「ねえ、この屋敷から引っ越す話って本当なの?」

「ああ、そうだ。上条から聞いたんだな?」

侑はうなずいた。

「そうか・・・、この屋敷は近隣の住民などから白い目で見られているんだ。こんなとこに住んでいたら、私だけでなく妻や侑にも悪い影響が出てしまうんだ。どうか解かってほしい・・・。」

「うん・・・、父さんの言う通りだと思うよ。だけど、ぼくはさみしいよ・・。こんなにすてきな家から出ていくなんて・・・。」

重雄は侑の気持ちを察し、優しく頭をなでた。

そんな時に電話が鳴った、重雄が電話に出て少し話した後、どこか不安そうな顔で戻ってきた。

「あら、あなたどうしたの?」

「不動産会社から電話があったんだが、家に向かった営業の二人がまだ会社に戻っていないようなんだ・・・。上条、あの二人を見なかったか?」

「はい、用を足したいということで私がトイレへと案内しました。ですがトイレへ向かったその一人が戻ってこないので、もう一人が様子を見に行ったのですが、その一人も帰ってこなくて、屋敷をくまなく探したのですが二人は見つかりませんでした。」

「むむむ・・・、おそらく地下迷路のアイツの仕業に違いない。だけど、何故アイツがそんなことを・・・?」

重雄にはわからなかったが、侑にはその答えがわかっていた。

「アイツは、Uは、ぼくにいなくなってほしくないんだ・・・。」

そして侑は不可解な寂しさの理由がわかった。

「ぼくはUと離れるのが、嫌だったのかな・・・?」

でもUはぼくと遊ぶために、他の人に酷いことをしてきた。

そんなUとどうして別れたくないんだろう・・・?

侑の疑問が消えることはなかった・・・。







そして翌日、侑は重雄から「一週間後にはこの屋敷から引っ越すことになった」と告げられた。

そして重雄は不動産会社から新たにきた社員と、屋敷の売却について話し合った。

侑はこのまま引っ越すことになるのかと予期していた・・・。

しかし事態は予想外の方向へと向かった。

今日、この家に来たという社員がまたもや行方不明となったのだ。

侑の家に警察がやってきて捜査が始まった。

侑は警察が家にくるたびに自分の部屋に入って、警察が帰るまで部屋から一歩も出ずにすごした。

「また、Uがやったに決まっているよ。」

侑は呟いたが、それを他の人に言う気にはなれなかった。

そして引っ越し予定日の一週間後が来たが、重雄は引っ越しの準備すらままならない状態になり、引っ越しは当面の間延期となった。

「何でこうなるんだ!!まさか、地下迷路のアイツが邪魔しているのか!!」

重雄はこの頃、イラつきが隠せなくなっている。

その様子に百合絵も侑も、不安になっていった。









その翌日、いつものように朝食を食べ始めようとした時だった。

「おーい、あなた!朝ごはんですよ!!」

百合絵が重雄を呼んだが、重雄から反応がない。

「あなた!!ごはんですよーっ!」

今度は強めに呼びかけたのだが、重雄から反応が無い。

百合絵は寝坊していると思い、重雄の部屋へと向かった。

そして部屋のドアを開けると・・・、そこにはだれもいなかった・・・。

「あなた・・・、一体どこにいるの?」

窓が閉まっている部屋の中で、百合絵の体に寒気が走った。













































































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