地下迷路へ誘われる者たち

第5話迷い込んだ先生

道明寺侑が小学二年生になった、侑は教室で一人机に座る放課後を過ごす学校生活を送っていた。

元々大人しい性格で自分から声をかけるのがあまりない侑なのだが、それよりも強い影響があったのが、あの「U」と初めて出会ったあの事件だ。

あの事件以降、健太郎は地下迷路での恐怖がトラウマとなり、家から一歩も出ない不登校児となってしまい、あの事件から一ヶ月後に別の町へと引っ越してしまった。

それから侑の住んでいる屋敷は、とんでもなく恐ろしい屋敷だという噂が立ち、侑自身は「人ではない何かじゃないか?」という小学生の思い込みが生まれ、そして侑は自然と腫れ物扱いされるようになってしまったのだ。

そんな噂の中心にされた侑は、あまり生徒とも関わらずに過ごす日々を送っていた。

そして入学式を迎えた日、侑の教室に入ってきたのは顔つきが渋く、見た目に例えるなら重雄と同じくらいの年の男が現れた。

男は黒板に自分の名前を書くと、教卓を叩いて大きな声で言った。

「お前ら!!おれは長澤徳男ながさわとくおだ、これから一年間お前らの担任をすることになった。おれが担任になったからには、このクラス全員が勤勉で真面目なクラスになるように、クラス全員皆勤賞を目標とする。お前ら、気を引き締めて学校生活をするように!」

侑は怖い先生が担任になったと実感した、これからの学校生活がどうなっていくのかという不安が、侑の心の中に渦巻いていた。

それから長澤による厳しい指導の日々が侑に訪れた。

「こら!!侑、もう少し大きな声で返事ができないのか!!」

「侑!みんなから遅れているぞ、校庭一周追加!!」

長澤はみんなを厳しく指導していたが、大人しい性格で元気がないように見える侑は、長澤から目を付けられて人一倍厳しい指導をされるようになった。

侑は沈んだ気持ちを抱えながら登校するようになった。

「今日も学校か・・・、土曜日と日曜日以外にも休みが欲しいよ。」

侑はため息まじりの学校生活を送っていたのだった。










それから二ヶ月がたったある日、侑は目覚めると頭が熱くて足がふらついていた。

上条が異変に気づき、侑は風邪を引いたことがわかった。

侑は自分の部屋のベッドで寝込み、学校へは重雄が連絡を入れた。

侑は学校へいかなくてもよかったことに、少しながらホッとした。

しかしそう思っていた侑のところに、あの鬼のような長澤が近づいてきた。

「侑!!学校へ来るんだ!!」

長澤は侑の部屋に聞こえるほどの大きな声で叫んだ。

「侑!!降りて来なさい!!」

侑は怖くなって布団に身を隠した。

蓮実と百合絵が長澤と話し合いをしにきた。

「侑を学校へ行かせてください。」

「侑は風邪で寝込んでいます、そもそも数分前に学校に連絡したはずです。」

「いや、その通りなんですがね。風邪くらいで学校を休むのは、人として甘えだと思いませんか?社会では簡単に仕事を休めないはずですよ?」

「あなたは、何を言っているのですか!もしそれで侑が倒れたら、あなたは教師としての責任がとれるのですか?」

「もちろんです、約束しましょう!」

「わかりました・・・、それでは父と相談して決めますので、上がって待っててください。上条さん、通してあげて。」

こうして長澤は上条に通されて、屋敷の中へと入っていった。

布団にもぐりこんでいた侑には、知られることはなかった。








屋敷の客室に通された長澤は、イライラしながらお茶を飲んでいた。

「こんなところに長居している場合じゃないのに・・・、早く侑を連れ出してくれないのだろうか、全く・・・。」

長澤がカップをテーブルに置いた時だった、目の前に封筒があるのを見つけた。

封筒には「U」のマークがあり、しかも長澤に当てたものになっている。

「どうして、こんなとこにおれ宛の封筒があるんだ・・・?」

長澤が封筒を開けると、そこにはこんな文章が書かれていた。

『侑の居場所を教えてやろう、この屋敷の奥の扉の先で眠っている。同封されたカギを使って扉を開けてね。』

長澤は封筒の中からカギを取り出した。

長澤は侑を連れ出したいあまりに、カギを持って屋敷の奥の扉へと向かった。

長澤はカギを差し込んで扉を開けた、そこには暗い道がどこまでも続いているような感じがした。

「こんな暗い廊下は初めてだな・・・。」

長澤は扉を閉めて先へ進んだ、陰湿で不気味な道を歩いていく。

「懐中電灯を持ってくるべきだったなあ・・・。」

先へ進めば進むほど、人気の無さが長澤の五感を刺激する。例えるなら夜の校舎内を一人で歩いているようだ。

何歩か歩いて長澤は違和感を感じた、天井を見上げると電灯が一つもない。

「ここは、どこだ・・・?」

長澤の首に冷や汗が流れた。

その時、向こうから誰かがやってくる足音が聞こえた。

「侑か!?」

長澤は声をかけた、しかし反応は無く長澤のところへと歩いていく。

そして足音の主が長澤と鉢合わせした。

「ギャッー----ッ!!」

長澤の前に現れたのは、全身が腐敗し両目が飛び出て、両手両足と指が有り得ない方向に曲がっている子どもだった。

「来るな・・・来るな・・・うわぁ―――!!」

迫りくる子どもに長澤は逃げ出していった、そして長澤は自分がどこにいるのかわからなくなった。

「侑ー-っ、おーい、誰でもいいから返事をしてくれ!!」

そして長澤は暗闇の中で一人叫ぶのだった・・・。

















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