第4話Uへの挑戦

地下迷路へと迷い来んでしまった侑がたどりついたのは、図書室のような部屋とそれを支配する謎の存在・Uだった。

「ねえ、謎ってどういうこと?健太郎くんはどこなの!?」

侑はパニックになった。

『落ち着きたまえ、健太郎くんは無事だよ。だけど私が出す謎に君が答えないと、健太郎くんはずっとここから出られないよ。』

侑は考え込んだ、そして決意のある目をUに向けて言った。

「・・・わかった、謎に答えるよ。」

侑は健太郎を取り返すために覚悟を決めた。

『それじゃあ、謎を出そう。Aくんは母親からお使いを頼まれて、千円を受けとりました。そして買い物を済ませて、二百五十円のお釣りがでました。ところがAくんはおこづかい欲しさに、お釣りから百円をくすねてしまいます。そしてAくんがお釣りと買ったものを母親に渡しましたが、Aくんのある嘘により母親は何も追求せずに、Aくんは百円を得ることに成功しました。さあ、Aくんはどうやって母親にバレることなく、百円をくすねるための嘘をついたのか?」

侑は考え込んだ・・・、なぜ百円を盗むことが出来たのだろうか・・・?

違う店で買った・・・、いや違う。

買うものが売りきれていて、代わりのものを買ったからいつもより高くなった・・・。いいや、これも違う。

侑は考えを巡らせたが、答えは浮かばない。

「ねえ、ヒントはないの?」

『そんなの、ヒントがなくても答えられる。ちょっとしたミスがあった、そんな感じの嘘でいいんだ。』

ヒントを得られず、侑はますます解らなくなった。

ちょっとしたミス・・・、お使いでありえそうな、ちょっとしたミス・・・、買い物をまちがえる・・・、お金を落とす・・・お金を落とす!?

その時、侑の頭にひらめきが輝いた!

「わかった、Aくんは『百円を落とした』とウソをついたんだ!!」

Uは侑の答えに驚いた表情をした。

『正解だ、よくわかったな。』

「やった、答えられた・・・。」

侑はこれで健太郎に会えると、ほっと胸をなでおろした。

『正解できたご褒美だ、健太郎のいる部屋へと案内しよう。』

Uは侑を健太郎のいる部屋へと案内した。

その部屋は壁が埋もれるほどに絵画がたくさん飾られていて、部屋の真ん中で健太郎くんは震えていた。

「健太郎くん!大丈夫!」

「侑・・・、うわーん!!怖かったよ!」

健太郎くんは侑に気づくと、侑に抱きついた。

『この部屋の絵画はね、とてもお喋りが好きな絵画なんだ。だから久しぶりに話し相手ができて、嬉しそうだったんだ。』

「え?この絵がしゃべるの?」

「そうだよ、侑!しかも気味が悪い声でさ、とても怖かったよ・・・。」

「よしよし・・・、それじゃあぼくたちをここから出してください。」

侑はUに頼み込んだ。

『もちろん、ここから出られる道を案内しよう。ただし、君がまたここに来ると約束してくれるならね。』

「えっ?約束・・・?」

『私は君が来るのを、心から待っていたんだ。君がこの屋敷にやってきたのは、まさに運命なんだ。私は君に知恵を授けて、君を名探偵にしたいんだ!』

Uの口調が激しく情熱的になった、侑はきょとんとしている。

「ぼくを、名探偵に・・・?」

『そうだ、君は神が私に授けた一人の息子なんだ!これから、よろしくな。』

Uは侑に握手をしてきた、侑は何がなんだかわからなくなり、Uから手を離した。

「ど・・・どういうこと?ぼくは、君の息子じゃないよ・・・」

『まあいい。君が認めなくても、私にとって、君は息子だ。』

訳がわからないことを当たり前に言うUが、侑にとってオバケよりも怖く見えた。

『さて、そろそろ地上に送り返さないとな。ついてくるがいい。』

侑は健太郎と一緒にUに案内されて、地上へと通じる道の扉へと案内された。

『それじゃあ、またね。君がまた封筒を開けるその時を・・・。』

Uはニコッと笑いながら言った、侑はそれが自分の心に恐怖を引き立たせるものだとわかった。

そしてぐったりとする健太郎を引っ張りながら、扉を開けて先へと進んでいった。









先に進んでその先の扉を開けた侑、するとそこはさっきまでいたあの扉の前にいた。

「あれ・・・?戻ってこれた・・・?」

「侑ーっ!」

すると重雄が慌ててやってきた。

重雄は侑の肩を置くと、怒った口調で言った。

「お前、あの封筒を開けたのか!?Uのマークがついたあの封筒を!?」

「うん・・・、ごめんなさい。」

「ダメだって言ったはずだろ!ケガはないか!?」

「ケガは無いけど、健太郎くんがとても怖い思いをしたみたい。」

重雄が健太郎を見ると、健太郎が恐怖で震えていることを悟った。

「じゃあ、あの扉を開けたのは健太郎か?」

「うん、引き止められなくてごめんなさい。」

侑は静かに謝った。

「まあ、いい。とにかく、健太郎くんを家に帰さないとな。もう、こんな時間だから」

「今、何時なの?」

「もう、夜の8時だ。健太郎の両親が待っているんだ。」

その後、健太郎は両親に引き取られ車に乗せられた。

しかし健太郎は、あの地下迷路から出てからというものの、あの時の恐怖で一言も喋る様子はなかった。

そして健太郎はそれから、この屋敷に来ることは二度となかった。









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