第2話少年の来訪

三月十八日、地下迷路のある屋敷の前に車が停車した。

「さあ、侑。ここがあなたの新しいお家ですよ。」

「ここが、ぼくの新しいお家・・・。」

侑は車の窓から屋敷をながめていた。

侑には両親がいない、二人ともいろいろな事情で侑の前からいなくなってしまったのだ。

それから侑は三年の間、児童養護施設で暮らした侑は今日、道明寺家に引き取られていったのだ。

侑は車から降りた、四人の使用人が侑を出迎えてくれた。

「初めまして侑様、これからの身の回りのお世話は私にお任せください。」

執事の新井田にいだと三人のメイドの上条かみじょう藤雄ふじお蓮実はすみは、侑に向けて深々とお辞儀をした。

侑は母親になる女性と新井田に案内されて、屋敷の中を歩いて行った。

そしてやしきの応接間にやってきた侑を、父親になる男が出迎えてくれた。

「やあ、よく来てくれたね。改めて紹介しよう、私が父親の道明寺重雄どうみょうじしげお、そしてこちらが母親になる道明寺百合絵どうみょうじゆりえだ。これからよろしく。」

「侑です、これからよろしくお願いします。」

侑は礼儀正しく挨拶をした。

「さあ、ここで歓迎パーティーの時間だ。侑は部屋で合図があるまで待っていなさい。藤雄、侑を部屋まで案内してくれ。」

藤雄は侑を部屋へと案内した。

「さあ侑様、こちらがお部屋になります。」

藤雄が部屋のドアを開けると、そこは施設にある就寝部屋くらいの大きさの部屋が広がっていた。

「うわあ・・・、広い。」

侑はこんなに広い部屋が自分のものになるなんて、侑は思いもしなかった。

侑の部屋にはいろんな子供向けの本が並ばれている本棚、自分だけの机、そして大きなベッド。侑は初めての自分の部屋にすごく喜んだ。

侑がウキウキしながら部屋で過ごしていると、机の上に一枚の封筒が置いてあることに気が付いた。

「なんだろう・・・、これ?」

侑は封筒を手に取った、封筒にはUのマークがついていた。

「侑様、用意ができました・・・って、それは!?」

突然ドアを開けて入ってきた藤雄が、侑の手元から封筒を奪い取った。

「ああっ、それぼくが見つけたのに!!」

「侑様、すみませんがこの封筒だけは決してさわってはいけません。」

「どうしてさわっちゃだめなの?」

「そういう言いつけなのです、後でお父様に説明させてもらえますので、どうか私にください。」

侑は素直に言う事を聞いた、そして侑は藤雄に案内されて食堂へと辿り着いた。

「さあ、侑。今日はお前がこの家に来た記念だ、さあ召し上がれ。」

侑は目の前に並べられた料理に驚いた、施設の頃よりも量が多いからだ。

侑は幸せそうに食べた、この家に来て本当によかったと侑は思った。

食事を楽しんでいた時に、重雄からこんなことを言われた。

「なあ、侑。さっきUのマークがついた封筒を見たと言ったね。」

「うん、机の上に置いてあったよ。気になっていたけど、取り上げられてしまったんだ。ねえ、あの封筒もう一度見せて。」

しかし重雄は、侑の肩に手を置くと厳しい顔で言った。

「もし侑がここで暮らしたいのなら、絶対に守らなければならない約束がある。一つはこの屋敷の一番奥にある扉を開けてはいけないこと、そしてもう一つはUのマークがついたあの封筒を開けてはいけないということだ。」

「封筒・・・開けちゃだめなの?」

「そうだ、あの封筒には恐ろしい場所へと導く手紙が書かれているんだ。」

「ちょっと、せっかくのパーティーの最中なんだから、今話さなくてもいいじゃない?」

百合絵が口をはさんだ。

「いや、今のうちから教えておかないと、まさかという事態が起きてしまう。そうならない内に、教えておくべきだ。」

重雄の反論に百合絵は口を閉ざした。

そして重雄は侑を連れて、屋敷の一番奥にある部屋へと案内した。

「ここがその扉だ、この扉を開けると地下迷路になっていて、昔ここに多くの人が迷い込み、出られた人はほんの僅かだ。だからこの地下迷路には今でも多くの人たちが幽霊になって、夜な夜な化けて出てくる。だから決してこの扉を開けてはだめだ。」

侑の幼い心に恐怖心が襲いかかった、侑は重雄の言いつけを守ろうと心に誓った。

「わかったよ、ぼくこの扉を決して開けないよ。」

「いい子だ、侑。それじゃあ、パーティーの続きをしよう。」

そして侑は重雄と一緒に、食堂へと戻っていった。しかし侑はこの時、自分が扉を開けることになろうとは夢にも思わなかった。





侑が道明寺家の屋敷に来てから一月が過ぎた、侑は学校のクラスで友達ができて、今日はその友達を屋敷へ招く日なのだ。

「へぇ〜、お前ん家大きいなあ。」

「うん、こっちにお菓子があるから食べよう。」

侑の友達の名前は大野健太郎おおのけんたろう、クラスでは侑のとなりの席の子どもである。

侑と健太郎は侑の部屋でお菓子を食べていると、健太郎があの封筒を見つけた。

「なんだろう、これ?」

「どうしたのって・・・、それは!?」

侑は慌てて健太郎のところへむかった、そして健太郎から封筒を取り上げようとしたが、健太郎は封筒を返してくれない。

「何で封筒を返してくれないの?」

「いいじゃないか、何か面白そうだし。」

そして健太郎は封筒から一枚の紙を取り出した、そしてその紙にはこう書かれていた。

『地下迷路のカギは、ハック○○ン+サイの引き出しの中にある。』














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る