少年を探偵にしたい地下迷路の主「U」
読天文之
「U」との遭遇
第1話Uからの挨拶
みなさん、ごきげんよう。私はある屋敷に住み着いている幽霊です、正体は明かせないのでみなさんは『U』と呼んでください。
実は私、生前は探偵なんです。しかも当時は名探偵と謳われ、これまでに多くの事件を解決してきました。そのかいあって、私は巨万の富を得ることができ、この屋敷をこしらえました。
さてこの私の生涯について語りたいと思います・・・。
子どものころの私は、周りと比べると恵まれていませんでした・・・。
身長は普通くらいで、運動は可もなく不可もなしというくらいで、今の言葉に置き換えるなら「どこにでもいる普通の人」という感じでした。
そんな私にも天性のものがありました、それは「探偵としての推理力」です。
そのおかげで、身の回りに起こる小さないざこざを解決し、私は周りからひそかに探偵と呼ばれていました。
しかしその時の私は「探偵になろう」という自覚はなく、私はそれからある地域の役人になりました。
しかし、そんな真っただ中を生きていた私に、ある転機が訪れます。
それは戦争による惨劇です。
それにより私は家族・住んでいた家・親友を失い、天涯孤独となりました。
生きていく上で必要な恵を失い、役人という職をも失った私は、闇市の片隅に生きる薄汚い男になりました。
そんなある日、道を歩いていた私はある男とぶつかります。
男は「どこ見て歩いているんだ」と怒鳴るとその場を走りさりました、その後いかつい三人組からこんな質問をされました。
「この辺で茶色のカバンを持った男を見なかったか?」
そして私は先ほどぶつかった男を思い浮かべ、その男を三人組と一緒に発見して捕まえた。
三人組に話を聞くと、どうやらこの男は闇市の主に仕えていたが、お金を持ち逃げしようとしたらしいのだ。
「お前、なかなか面白いな。俺たちと来ないか?」
三人組に声をかけられた私は、ついていくことにした。
そして私は闇市の見回り人として抜擢され、闇市で発生するありとあらゆる事件を解決して行くのでした。
しかし時は流れて闇市は無くなりました、しかし私にはこれまでに貯めた金がありました。
私はその金で家を借りて、自分の得意分野を生かした探偵事務所を発足したのです。
探偵事務所に持ち込まれた依頼を解決し、私の評判は世に知れ渡っていきました。
そして私はいつの間にか、名探偵とまで呼ばれるようになり、八十五歳になるまで事件の一線で活躍していました。
そして私は探偵を引退してこの屋敷の主となりました・・・。
屋敷での生活は快適でしたが、私には心残りがありました。
それは結婚できなかったことです・・・。
今まで生きる事に必死で、その後は探偵として日々を送る私には、恋愛と結婚の言葉がありませんでした。
そして私には当然、子どもがいません・・・。
屋敷には使用人がいて彼らと話をするのも楽しかったのですが、やはり私にはわが子と話したいという思いが心のどこかにありました。
しかし年老いた私に縁がやってくることは無く、私はついに病に倒れてしまいました。
私がこれまで生きていたことに悔いは無かった、しかし子供が欲しかったという思いが私にとって一番の悔いでした。
そして私は使用人と医者に看取られて、九十一歳でこの世を去りました・・・。
そして私が目を覚ますと、不思議なことが起きていました。
私は暗いところに閉じ込められていた、そこにはたくさんの本が置かれている本棚があった。
その先の通路を進むと複雑に入り組んでいて、迷路になっていた。
そしてその先に見つけた扉を開けると、驚いたことにあの屋敷の中だった・・・。
屋敷の中にはすでに新しい人たちが住んでいた。
でも私は再びあの屋敷へと戻ってきた、そして私はこの屋敷に地下迷路があることを知った。
私はここで新たに夢を叶えることにした・・・、そして今その望みが叶おうとしている。
長い挨拶を聞いてくれてありがとう、それではこの屋敷での不思議な日々の始まりです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます