私の不思議な夢の話

そこには、もう詳細を覚えているわけではないが、前に見た夢で戦いを終わりに導いた、ア○パンマン号とア○パンマンの形を模した巨大なロボット、だだんだん2号がいた。

ここの地形は、三方が山で囲まれており、右から、右山、中央山、左山と呼ばれている。残りの一方には海、海に接している海から見て左の方向にある左山は、何処ぞの万里の長城のような、某巨人アニメの壁のように砦のような形になっている。自分たちは学校で、この砦にロボット達はいると教わる。なぜ、学校で教わるのかと言うと、そのロボット達は、先の争いをおさめてくれた英雄だからだ。自分たちはそれをリアルタイムで体験したという自覚があり、そのロボット達の存在が誇らしかった。

しかしながら、殆どの人はそのロボット達の事を直接見た事がない。それは、砦の上部まで行くには崖を登らないと行けないため難しいのと、お偉方が誰も行く事のないように仕向けているからだ。

このロボット達は、一部では信仰されるほど影響力が強まっていた。彼等は英雄教と名乗り、戦争の英雄は我々の唯一の救世主と唱えた。この英雄教の過激派の信者が組織を作り、今では立派な社会問題に発展している。

自分は、その組織のかなり偉い人に追われていた。何故かはわからない。この世界には魔法というものが存在した。相手は空を飛びながら自分を追いかけてくる。自分も、なんとか目眩し程度の魔術で応戦する。住宅密集地に入り、ある程度の高度制限と、視界を遮るものが多くなったのを確認して、自分は猛ダッシュで不規則に角を曲がり続ける。相手も、諦めたのか、別の方向に飛んで行くのを確認して、自分は今日も生き残ることが出来た事に安堵しながら喜ぶ。戦いも終わったのに、何故、こうも毎日毎日命の危険に晒されないと行けないのか、この理不尽さに怒りが込み上げる。目が熱くなり、鼻の奥がつんとする感覚がした。でも、ここで感情が溢れてしまっては、ダメだと思い、必死に堪えた。もう、自分と同じクラスだった人は半分近く殺された。約二十人しか居ないクラスで、三人は戦争で、残り半分ほどはこの過激派にやられた。目の前で、自分を庇って死なせてしまった人もいる。電話で生存が確認できるのも数人程度、やはり皆追われている状態だった。

ある時、とうとう私も捕まった。でも、それはいつも追いかけてくる奴では無く、違うクリーム色の髪をした気の強そうな魔法使いの女の子だった。自分は、死を覚悟したが、その人は私を殺さずに手足縄で縛り、口にテープを貼って自分を何処かへ連れて行った。

そこは、中央山と右山の接している所だった。そこには、自分と同じように手足を縄で縛られ、膝をつけさせられているクラスメイトの姿があった。みんな傷だらけだが、そこにいる人は確かに生きていた。自分達は、お互いの目を見て生存を確認すると、安堵からか、わっと涙が溢れた。自分だけ、何故か口のテープと手足の縄を解いて貰えたので、自分はその足のままみんなの下に駆け寄って、腕の長さが届く限り、力一杯に皆を抱きしめた。中央には、赤毛の親友がいた。その左には、マッシュヘアの薄い金髪の男の子、右には、少し伸びた黒髪のサボり癖のある子、そのほかにも、小太りな茶髪アフロのあだ名が博士の子、のっぽな坊主の子、中には、連絡が途絶えていた子もいた。そこには、自分のクラスの二十人中、生き残った自分を含めた八人のメンバーが集まっていたのだ。また、少し後ろには、親友の弟がいて、自分達を見守ってくれていた。自分達は、お互いの生存を喜び、口々に「君も生きていたんだね」「君もね。」と確認しあった。自分は、一度その場を離れ、弟くんの方へ歩いて行き、弟くんを抱きしめる。彼は、自分達より、一歳歳下だよいうのに、涙ももせずに耐えて来たのだ。自分が弟くんを抱きしめると、少しずつ呼吸が速くなり、自分の肩に生ぬるい何かを感じた。そのまま彼は嗚咽混じりに泣き始めた。自分は弟くんを抱き上げて、親友の元へ連れて行く。すると、一連の我々の再会を見ていた魔女が口を開いた。

「これより、お前達を殺す。」

この言葉に、皆が凍りついた。そんな中、親友が口を開いた。

「何故ですか?」

魔女はこう答えた。

「そう、命令されているからだ。」

弟くんが、魔女の目をまっすぐ見て、質問をした。

「柊木、そう命令されているんだったら、僕をこの場に連れて来るより先に捕まえた時点で殺せばよかったんじゃないのか?」

その言葉を聞いた瞬間、魔女さんの顔が先程までの澄ました顔とは打って変わってほんの少し苦痛そうに歪んだ。その表情の変化をみた弟くんが今度は優しい声で、話しかける。

「柊木、少し話してくれないかな。」

優しい声音に安心したのか、魔女さんは小さく首を縦に振って、話し始めた。その姿はまるで弟くんと同じかそれ以下くらいの小さな小さな、幼い女の子の姿に見えた。

「私は、センパイから、アンタらを殺すように言われた。

 それを英雄様達が望んでいるって…。

 私は、もう人を何人も殺めてる。センパイがこれが世直しだって言っていた。

 英雄様達は戦争のない世の中を望んで、希望を託すために我々に勝利をもたらして

 下さったから、戦争のタネになるような蛮族は消さなければならないって。

 だから、世間からどんな事を言われようとも、これが私達の役割だって言われた。

 私は、戦争で両親が居なくなちゃって、弟が一人いるから、どうにかして、あの子

 を育てなくちゃいけなくて…、まだ、あいつも、幼いから、、私が、しかっり、

 稼がなくちゃって、、思って…!」

「それで、殺しに手を出したの?」

「だって!私には、それしか無かったからぁ…!

 十五やそこそこの娘を雇ってくれる所なんてないし、

 あっても体を売らないと行けない。そんな…そんなのは耐えられない。

 そんな事するぐらいなら、いっそ死んだ方がマシだった!!

 …でも、弟が居るから死ねなかったの。」

「そこで、英雄教に出会ったの?」

「うん…英雄教の教祖様は、戦争は貧富の格差によってより生まれやすくなると

 言っていた。だから、信者が戦争の火種になる事を防ぐために、英雄様達の意思を

 継いで、私達に衣食住を約束して下さったの。

 それで、私は、英雄教に助けられたから、恩返しがしたいと思って…。」

「過激派になったのだとしたら、柊木さんらしくないね。」

「違うよ!最初はずっと布教活動をしていたの。

 チラシを配ったり、人の手伝いをして、英雄様達の思いを広めたの。

 それで、私の活動が評価されて、教祖様が、私に特別な任を与えて下さったの。

 それが、英雄教でも、限られた人しか所属出来ない××っていう組織でね。

 ちょっと怖い噂もあったんだけど、説明を聞いたら、英雄様のお言葉を聞かせてく

 れて、活動内容も、その、怖かったけど、意思に沿っていて、あぁ、忠誠心の高い

 選ばれた人だけがここで活動できると思うと、なんか誇らしくなって…。」

「君以外にその組織に選ばれた人はいなかったの?」

「いたよ。でも、私が殺した。」

この言葉を聞いて、自分たちはギョッとした。その言葉には悪いことをしたと言う罪悪感感なんかが微塵も含まれていなかったからだ。親友が、口を開いた。

「殺したって、今言ったんですか?」

「ええ、当たり前です。」

「何故ですか?」

「英雄教の信者であれば、あの説明を聞いたら、そのことを誇りに思い、

 組織に入るべきです。組織に入らないと選択した時点で、

 彼は英雄様達に最大限寄り添おうとしなかった。教えを拒んだとみなし、

 裏切り者になります。信者の中でも、限られた人しか知らない事を言いふらさない

 とも限らない。

 殺すしかないでしょう。」

自分たちは絶句するしか無かった。少し間が空き、弟くんが話しをもどした。

「それで、なんで僕らを生かしているの?」

「それは…!君が居るから。」

「僕!?」

一同一斉にニヤけるのがわかった。

「それと、最近疑問に思って調べたの。」

「何を疑問に思ったの?」

「私は、殺し屋として才があった。今まで失敗した事は無かった。

 私が殺した一人目はあなた達のクラスの人だった。学校で一年上の先輩だったけど

 優しい先輩だと思ってたけど、英雄様の教えに逆らう人だったらしいから殺した。

 二人目は先生。戦争が始まる前まで、私の部活の顧問だったけど、

 危険な人らしかったから殺した。

 三人目は知らない人、四人目はやっぱりあなた達のクラスの人。

 で、五人目があなた。」

「え、自分!?」

突然、話題が振られて驚いた。

「でも、思った。頻度がおかしいって。五人中四人が同じ学校、それも同じクラスの

 関係者。それで、思った。あなたを殺したら、次は誰を殺せと命令が来るのか。

 生存者名簿と照らし合わせながら、ここに居る人たちを見つけた。こうも、

 クラス単位で狙われるって事は、このクラスに何かあるんじゃないかって思って。

 昔の資料を見たら、このクラスが英雄様達に直接助けられていた。っていうのを

 見つけた。だから、殺す前に英雄様のことを聞いておきたかった。」

自分は、もしかしたら死なずに済むかもしれないと、直感的に思い口を開いた。

「ねぇ、もしかして、英雄様達のこと何も情報が出てないの?」

「何もじゃない!…言葉だって、ちゃんと聞けている。」

「でも、少ないんだね?姿とか見た事無いの?」

「ある!」

「何処で?」

「…写真…で。」

「自分達を生かしてるのってさ、なんで英雄様達自ら助けた人達を、殺せっていう

 命令が出ているのか気になるからじゃない?」

そうだ、彼等は絶対にそんな事言わない。自分は知っているのだ。彼等のことを。

「それは…、それもある。」

「ねぇ、魔女さん。英雄様達を直接見に行けばいいじゃ無いですか。

 自分が道案内しますよ。」

「そんな不敬に当たること…!」

「大丈夫。無理やり連れて行かれたと言えばいい。

 それより、魔女さんはきっと、いいように使われているだけだから。

 きちんと何を信じているのか見た方がいい。」

魔女さんの背中を押すように弟くんが話しかける。

「行っておいで。ここは僕が見てるよ。帰って来て、やっぱり殺したかったら、

 殺せばいいさ。」

親友が畳み掛ける。

「待っているから。」

魔女さんは悩んだ挙句、月が10時の角度まで上がって来た頃、自分と一緒に左山まで飛んで行った。

そこに広がるのはなんとも痛ましい光景だった。

英雄と呼ばれた彼らは、“私達は、もう戦いたく無い。私達をもう戦わせないで。私達をもう戦争に使わないで。”と言いながら、その砦の上を徘徊していた。

魔女さんは、目を大きく見張りながら、ショックで言葉が出てこないようであった。

自分は、英雄達の前に来ると、そっとハグをして頭をくっつけて、その英雄達に挨拶をした。

「ただいま。皆んな。無理をさせてごめんね。もう戦争は終わったよ。

 前は助けてくれてありがとう。さぁ、もう寝る時間だ。おやすみ。」

自分がそういうと、彼等は動くのをやめ、一時的にスリープ状態になった。

彼等の中にいるのは人だ。

無理やり出しても死ぬし、そうでなくても、彼等は殆ど死んでいるに等しい状態だ。

母国を勝たせたいという幼く純粋な心から犠牲になったクラスメイトが中に入っている。彼等の脳はもう人間として機能しているかと言われれば、否と自分は答える。

彼等の寿命が尽きるまで。中の人間が物理的に消えるまで、このロボット達は、本来そう動かないはずなのに、プログラムを変更されたため、中に入っている人の全てを糧にして、それが消えるまで稼働し続ける。そして、中に何もなくなったら、自分からもエネルギーを作ろうとして自爆するのだ。なんと救いの無い兵器だろう。なんて悲しいのだろうか。彼等はもう、覚えることが困難なまでに衰弱している。きっとさっきの自分の言葉も忘れられる。それでも、彼等に忘れられても自分は何度でも言い続ける。哀れなクラスメイトが楽になるその時まで。しかし、あと二、三十年は稼働し続けるだろう。

自分は魔女に言った。

「見えるかい?これが君が信じていた者の姿だよ。もう彼等には、考える力や、人を殺める気力は残ってない。指示をする事なんて出来ないんだよ。」

「…。」

「帰ろうか。」

自分は、ショックで動けずにいる魔女さんを連れて、みんなの待っている場所に戻った。

ショックを抱えきれていない魔女さんを見た弟くんは、手足の縄を解くと、彼女の元へ駆けていき、そっと抱き寄せた。その瞬間、彼女が声を上げて泣くのを聞いた。

夜明けが来て、日が上り、昼になったタイミングで、見回りに来ていた過激派のいつも私を追って居る人が我々を見つけた。その視線に気づいた魔女の子は、私達に逃げるよう指示を出して、そいつに向かって行った。

魔女さんが怒りの混じった声で、そいつに話しかける。

「騙したな…センパイ…!!信じてたのに!!」

「見たのか。いい駒だったのに残念だよ。

 君のその信仰心がこちらを向いていれば良かったのに。」

「ふざけるな!人の心をなんだと思ってるんだ!」

「人の心?ここに居るのは人殺しだけだろ。

 人の道から逸れた、人間の皮を被った化け物の気持ちならわかるぞ。」

「英雄様達はこんな事望んで無い!なのにどうして…!

 …戦争も終わったのに、どうして罪の無い人が殺されないといけないんだ⁉︎」

「おっと、あたるなよ。一つ言っておくが、殺したのはお前だぞ?

 私じゃない。濡れ衣は着せてくれるな。」


二人は、相打ちで終わった。しかし、魔女さんの方は虫の息程度だったが、呼吸をしていたため、そのまま救急搬送された。

もう一人の方はもう、心臓が動いていなかった。

結論から言うと、英雄教は、政府が作った宗教だった。だから、政治的にもかなり発言権が強いらしく、今まで野放しになっていたそうだ。

そして、英雄の二人は助からなかった。

そこで、目が覚めた。起きたら、何故だか、自分の目から涙が出て来て、驚いた。

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