第7話 求人に惹かれて

 拠点となる建物は建った。そこからはスラム街近くの市民街に流布していた通りに広告を行う。下町の安くておいしい店を紹介したり、ポスターを街に張ったりする。その宣伝効果もできているようで、大きいお店の割引セールの宣伝を頼まれることも増えた。デザインと印刷に関しては子分の孤児達で回せるが流石に交渉事は知識と経験の観点から、まだ任せられない。


「爺さん、そろそろ人員を募集したいんだが」

「どっちのだ?」

「工房の人員かな。子分を何人かこっちに引き上げたい」

「工房の方からこっちに回すって事か。事務員の直接募集は確かにリスクが高いな」


 爺さんとの話し合いの結果は工房から二名を事務に引き込み、新規に一人雇うことになった。

 人員の派遣は商業ギルドを通して行われた、面接に臨むのは五人。五人の履歴書も送られてきた、顔写真はないが特徴は書かれている。

 因みに求人は仕事内容と給与さえ書けば、出すことが出来た。

 印刷所の名前は既に決めた。【ニホン・インサツ】である。


*  *  *


 時間は進んで面接当日。

 一人、二人、三人と進んで四人目に気になる子が入って来た。


「えーと、アスタルテ=レンブレントさん、ですか」

「はい」


 人形の様な綺麗な少女が返事をした。彼女は水色の髪を持ち、体格は年相応と言った感じの小柄ではあるが姿勢や体幹は筋が通っている。ジンはそれよりも気になることがあった。


◇  ◇  ◇


スタルテ=レンブラン前世:羽山礼子ト 種族:人間 性別:女 年齢:10歳


レベル:32

HP :370

MP :370

STR:370

DEF:370

RES:370

AGI:370

INT:5370


称号:風の勇者の守護者 異世界転生者 元ガイネア王国王城女官メイド


コモンスキル

戦闘スキル

剣術    (Lv8)

短剣闘   (Lv10)

拳闘    (Lv10)

危機感知  (Lv8)

毒耐性   (Lv4)

衝撃耐性  (Lv4)

斬撃耐性  (Lv5)


魔法スキル

魔力操作  (Lv8)

魔術    (Lv9)

風魔法   (Lv5)

水魔法   (Lv3)


生活スキル

礼儀作法  (Lv10)

話術    (Lv7)

計算    (Lv8)

読み書き  (Lv8)

共通語   (Lv8)

洗濯    (Lv9)

料理    (Lv8)

掃除    (Lv8)

偽装    (Lv10) 

鑑定    (Lv6)

送心テレパシー    (Lv10)


創作スキル

修理    (Lv3)

建物修繕  (Lv3)


固有スキル

異世界人補正 

【ジャン・ウジェーヌ・ロベール=ウーダン】 

偽る魔術師  (Lv5)

鎮静する奇術師(Lv7)

【羽山(はやま) 玲子(れいこ)】 

奇跡の御手  (Lv8)

高速情報処理 (Lv5)


ギフト 

神の隠蔽

風神の祝福


装備

武器 :鋼のナイフ×10

防具 :布のエプロンドレス

装飾品:ナイフホルダー


◇  ◇  ◇


 転生者だ。しかも名前に見覚えがある。


(前世の副官だったやつだ。………バレて来てんのか、店名で辿ってきたのか)


 後者はまだいい、前者なら少し話をしないといけない。と言っても、どっちでも話を聞かないといけないだろう。ジンは頭を抱えそうになりながらも、面接を続ける。


「えーと、ウチに志望した理由は?」

「店名が珍しくて惹かれたのと、こういった宣伝を主にする商売は珍しいと感じ志望させていただきました」

「前職は王宮に努めていたそうですね。差し支えなければ、退職の理由をお教えていただきたい」

「前の職場は給料こそ良い物の、職場内の格差がひどすぎましてね。没落した貴族の令嬢にはつらい場所でした」

「………そうですか」


 ジンはチラリと爺さんの方を見ると、少し頷いた。アスタルテは多少、不審げに頭を傾けている。アスタルテは知識面は爺さんの方が面倒を見ているのだと察した。


「では、働くとして何か意気込みはありますか?」

「ミスをカバーできる関係を気付き、その上で全員と協力して発展させられる様に尽力していきます」

「なるほど。質問は以上です。ありがとうございました。結果は明日に商業ギルドに届け出ますね」


 ジンからしてみれば半分決まったようなものだが、これから先は爺さんと事務員候補と相談して決めることになる。五人目の面接も無事に終わらし、採用面接は恙なく終わった。


「で、どうだった?」

「一人目と三人目は取らなくても良いでしょう」

「私は四人目と働きたいなと思いました」

「私もです」

「俺も四人目に賛成だね」


 半分以上が四人目のアスタルテと働きたいと言った。ジンももちろんこれに賛成した。爺さんは顎に手を当てて考える。すると、全員に逆に質問した。


「では、彼女と働くうえで何処に不満が出て来ると思う?」

「彼女の実力がどれ位あるのかが分かりませんでした」

「実力不足で足を引っ張ってくる可能性がある?」

「新人である以上、そこは許容しないと。それにそこら辺で新人教育の仕方を学んでみた方が良いんじゃない?」

「つまり?」

「働く分には人間関係に問題はなく、能力も前職の関係から多少は問題はないと思う、最悪、火事とかそこら辺をしてもらうことになるね。それに、能力関係なら、俺達の方が問題だろ」

「確かに、文字とかまだ怪しいもんな」

「読めるようには成って来たんだけどね」


 そこから少し話すと、


「じゃ、四番目のアスタルテ=レンブラントさんを採用って事で良い?」

「「「異議なし」」」


 満場一致でアスタルテの採用が決まった。

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