第2話 何処でも親分

 ティムはここガイネア王国のスラム街に住む、孤児だ。

 親に虐待されて逃げて、着いた先がこのスラム街だった。その中で、同じような境遇の仲間と出会い、行動を共にするようになった。自分より年下の子たちも集まり、ティムが作った集団は、それなりに大きくなっていた。

 その日、その日を恫喝や盗みを集団で行っていた、そうしてこの日も同じように、目の前にいる少年を恫喝しようと近づく。


*  *  *


「おい!食料か、金を出せ!!」


 目の前に現れた三人の少年を、怪訝そうに見るジン。装備を見ると、錆びたナイフ一本の貧相な装備をしていた。メニューで相手のことを見れるか試してみた。


◇  ◇  ◇


ティム 種族:人間 性別:♂ 年齢:7歳


レベル2

HP :70

MP :70

STR:70

DEF:70

RES:70

AGI:70

INT:70


コモンスキル

戦闘スキル

短剣術 (Lv1)

話術  (Lv2)


魔法スキル

なし


生活スキル

なし


創作スキル

なし


固有スキル

なし


装備

武器 :錆びたナイフ

防具 :布の服

装飾品:なし


◇  ◇  ◇


カム 種族:人間 性別:♂ 年齢:7歳


レベル2

HP :70

MP :70

STR:70

DEF:70

RES:70

AGI:70

INT:70


コモンスキル

戦闘スキル

拳術  (Lv1)

話術  (Lv2)


魔法スキル

なし


生活スキル

なし


創作スキル

なし


固有スキル

なし


装備

武器 :なし

防具 :布の服

装飾品:なし


◇  ◇  ◇


ゼノ 種族:人間 性別:♂ 年齢:7歳


レベル2

HP :70

MP :70

STR:70

DEF:70

RES:70

AGI:70

INT:70


コモンスキル

戦闘スキル

拳術  (Lv1)

話術  (Lv2)


魔法スキル

なし


生活スキル

なし


創作スキル

なし


固有スキル

なし


装備

武器 :なし

防具 :布の服

装飾品:なし


◇  ◇  ◇



 ジンは三人のステータスを確認して、自分のステータスと比較してみる。


(ステータス的には負ける要素はなさそうだけど、3人相手どこまで通用するか。銃や手榴弾を使うのはマズいな)


 ジンが黙ってティム達のことを、見ているのが気に入らないのか、ティムがじれたように声をかけた。


「おい、何とか言えよ!金か食料出せ!」


 ティムの言葉に、苛ついてジンはティム達を睨む。


「っう」


 その迫力にビビった、ティム達。


「出せって、言ってんだっ!!」


 ティムはナイフを振って、ジンに突き刺そうとする。が、ジンに腕を掴まれて、捻って、抑え込まれる。


「な、何だ、お前、ティムを放せ!!」


 ジンはティムを二人に突き飛ばして、他の二人にぶつける。


「うおっ!」

「ぐぁ!」


 ゼノとカムはティムと共に後方にとび、壁に激突する。ティムは立ち上がろうとするが、ナイフをとられて首に添えられてその場で止まる。


「お前たちの名前は?」

「テ、ティムだ」


 ティムは今まで感じたこともない、恐怖に身を竦ませ質問に答える。


「お前らは三人だけで暮してるのか?」

「いや、もっと多くの人数が別にいる」

「そうか。そこまで案内してくれ」

「うっ。そ、それはだめだ」

「なぜ?」

「俺は、仲間を守らないといけないから、お前みたいな怪しい奴、連れていくわけにはいかない」


 ジンは顔に驚きを浮べて、ティムのことを見返す。スラム街で危機管理能力があるなら、ティムがそれなりに優秀な人間だとわかる。


「そうか。だが、俺がここでお前たちを見逃しても他に強い奴が、お前たちのことを見逃さないかもしれないぞ」

「そ、それでも、妹たちの所に連れていくわけにはいかない」


 スラム街の住人は、盗みなどで逃げるために自分たち用の隠れ家を用意している。そこの場所をばらすのは、自殺行為のほかない。初対面の奴に、おいそれと教えるはずがない。


「お前たちに手を出す気はない。俺のやることに、人手が必要だからお前たちに手伝ってほしいだけだ」

「な、何をする気だ」

「とりあえず、お前たちを鍛える。その間に、俺は周辺で獣なんかを狩る。その後は、お前たちが好きにしろ」


 取りあえず、敵意はなさそうなので、ゼノとカムを起こして、ティムはジンを自分達のアジトに案内した。


*  *  *


「この先だ」


 ティムが案内している間に、他の二人の自己紹介を済ませて、ジンはティムの後についていき、他の二人はジンを警戒しながらついていく。すると先の方から、大人の男と子供が争う様な喧騒が聞こえてきた。


「離せよ~!!」

「うるせーぞ!!このクソガキどもが!!」


 ティムの仲間たちなのだろう。ティムは焦ったように飛び出して、大人の手に掴みかかった


「やめろよ、おっさん!!そいつから、手離せよ!!」

「あん。まだガキがいたか。丁度いい、この場所使ってるガキどもなら、俺様にショバ代はらう義務がある。さっさと払え!」


 男はティムの頭を掴んで、金を払う様に要求する。


(タイミングが悪いな。こいつ一人ならいいが、他に仲間がいると厄介だ)


 ジンそう思いあたりを見回すが、特に人が潜んでいる様子はない。


(なら、こいつだけ片付けて。あとは、全員別の場所へ逃げるか。それと、魔力でどんなことができるのか、確認してみる必要があるな)


 そう思うとジンは、とりあえず魔力で体を覆ってみた。


(なんか、力が上がったな。このままだと、少しきついが何とか動けるか)


 そのまま、構えをとって男に向かって、猛スピードで突撃した。まるで、瞬間移動のように接近して男の顎を正確に打ち抜いた。


「がっ!!」


 男は反応する間もなく気絶した。


(体に纏ったままだと、節々が痛いな。なら体全体を、強化するようにしてみれば)


 体全体を強化するようにしてみると、体の節々にあった痛みが消えて、もっと体が軽く動くようになった。実験に夢中になっていると、ジンに声がかけられた。


「お、あ、ありがとう!助かった」


 すると、ティム達が一斉に頭を下げてきた。


「いや、いい。気にすんな。それより、この男は前々からここに来ていたのか?」


 疑問に思ったことを聞いてみた。


「いいや、今日初めてここに来たな」


 ジンはその言葉に少し考えてみる。


(今日ここに来たなら、その前からここは気付かれていた可能性はあるな。悪くはない立地だが、引っ越しした方がいいだろうな。丁度男も武器を持ってるようだし)


 そこまで考えると、ジンは孤児たちにこう言った。


「おい、その男の武器とか装備を外そう、持てるもんだけ持って、ここを離れるぞ。此処は誰かに気付かれてる」

「あ、ああ」


 促されるままに、撤収作業に入る。ジンは男の装備を剥ぎ取り、金を財布ごと奪う。剣があったので、腰に差し、男を全裸にして、足を引っ張る。いったん、ティム達と別れて大通りにつながる路地に男を捨てる。

 そうして、ティム達と合流すると今後の説明を始めた。事前にティムとゼノとカムが説明したのか全体の説明はスムーズにいった。


「これからは俺の指示に従い、訓練、勉強、防衛、狩りをしてもらう。配置については後で言うが、当面はここを生活拠点にする。狩りがうまくいけば、食事に関して心配事はなくなるはずだ」


 そう、ジンが言うと、孤児たちは困惑したような顔になる。そうすると、一人の少女が手を挙げた。


「それって、あなたが私たちの生活の面倒を見てくれるってことですか?」


 不安そうに、少女はジンに問いかけた。


(まあ、ぽっと出の奴がいきなりリーダー面するのも、良い気がしないよな)


 でも、ジンにとってはこの孤児たちは、自分の能力を試したりするのに必要なのである。それにこのスラム街で生きるのにも、お互いを利用しあったりした方が効率いいのも、ジンの中で納得済みの事だった。だがそれをこの孤児達が納得するかどうかは、また別の問題である。


「当面の生活に関しては、何とか面倒を見ることができる。だが、その先に関しては自分達で生きていかなきゃいけない。そのためにも、俺は君達に技術や知識を授けるんだ。君達だって死にたくはないだろ?今だけじゃなくてこれからの事も考えて、これからは生活していこう」


 ジンは、孤児たちを落ち着かせるように、しっかりした声で自分の今の考えを伝える。孤児達はまだ疑問を抱えながらも、とりあえずは首を縦に振った。


「よし、まずはここに5人残って、後の奴らは箱や布を集めて来てくれ。その間に俺は食料や他に必要そうな物を持ってくる。いいな?」

「「「「はい!親分!!」」」」

「誰が親分だ……」


 半ば呆れたように、孤児たちを見る。その顔はジンの事を信用しているようだった。


「まあいい、ナイフは預けるから、日没までには戻る。それまで用心していろ」


 忠告だけして、そのままジンは魔力を纏って跳び上がって、屋根に乗り王都の外にある森に向かう。


(獣か野草があればいいんだが。取りあえず探すか)


 剣に手をかけて、少し期待しながら森の中に入る。

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