120話バウンサー達
実は今回、ビビやミア、アーヴィン、ロンバートも護衛依頼を受けている。
勿論この『野外授業』参加の生徒達に対する護衛だ。
生徒達には、アムカムの皆が『護衛』をしているとは知られていないけどね。
不必要に生徒達へ不安を与えずに、例年の様にアドバイザーとして居て欲しい。と言う理事長様のお考えからだ。
そして、今回の『野外授業』の護衛層は何気に厚い。
それは、例の黒幕と思しき元ニヴン家の長男の行方が、未だ不明なままだからだ。
ヤツは明確にカレンとその弟、妹ちゃん達に対する害意を示していたそうだからね。
その為、理事長は大いに警戒を強めている。
なので、当然の様に学園周りの警戒は厚くなっている。
カーラ達学園内のアムカムの兄さん姉さんだけでなく、更に
この話を教えてくれたのがロンバートだから、向かっているのはきっとあの姉御のチームなのだろう。
キャリー様のお父様であるゴールドバーグ卿も、防衛機構本部長の権限を以て、学園警備に協力をしてくださっているから尚の事心強いよね。
実はあの後、こっそりとゴールドバーグ卿が寮まで訪ねて来られて、わたしに向かって頭を下げられたのだ。
突然の事で思わずコチラの頭もパニくるし、ビビやコリンなんかは、「今度は一体何やらかした?!」ってな感じで胡乱な目を向けて来るしで実に大変だったのよのさ!
まあ結局謝罪の理由は、わたしとの約定が守れなかった事に対しての物だったのだけれど……。
あのアンデッドが街で暴れた日。
衛士詰所に隣接していた、凶悪犯罪者を収容する地下留置所もアンデッドの襲撃にあったのだそうだ。
厳密には、収容されていた囚人たちが次々と狂暴なアンデッドへと変貌し、中の囚人衛士を問わず、次々と生者を襲い暴れたのだとか。
収監者の中に、例の違法薬物の常習者が結構な数いたって事なのだろう。
その結果、最下層の厳重な獄舎に封じられていた、例のフルークともう一体の人間
まだわたしにやられた傷が修復しておらず、下半身も腕も無い達磨状態だった二体の、頭部だけが食い千切られていたのだとか。
残っていたのは、胸元から下、腹辺りまでの肉片となった成れの果てが2つ。ゴロンと無造作に転がっていたそうだ。
ゴールドバーグ卿は、「必ず取り調べを行う!と言って無理に引き渡して貰ったのに、こんな結果になってしまい誠に申し訳が無い!」と頭を下げられたのだ。
いやいやいや!そんなの災害の被害みたいなもんじゃないですか!
卿やデケンベルの衛士さん達は、充分仕事を全うされたと思いますよ?
衛士さん達の負傷者も、かなりの数が出ているそうではないですか!
それにゴールドバーグ卿は、初めから厳重で強固な守りで固め、過剰なまでの警備を指示されていたと聞いております!どうぞお顔をお上げくださいませ!!
てな感じでワタワタしながら、ゴールドバーグ卿にやっとこさ頭を上げて頂いた。
ふぅ~~いぃ。デケンベルの最高責任者に頭を下げられるとかさ、庶民にはまったく本当に心臓に悪いイベントだわさ!
もし仮にだ。万が一本当にフルーク達が逃げ出しているのなら、わたしが必ず見つけ出して塵にするだけだし。
しかし奴は、わたしの探知に引っ掛かってはいない。
もう既にデケンベルから……、わたしの索敵範囲外へ出てしまった為か、それとも本当に他のアンデッドに喰われて取り込まれたか……。
最終的に処理されたアンデッドだった物の数は、
恐らくはノソリ先生が仰るように、多くの者が共食いをして、力を増そうとしていたのかもしれない。
あのフルークだった者達も、他のアンデッドの糧となった可能性は十分有り得る事だ。
そんなワケで!ゴールドバーグ卿からも、我々に「全面的な力添えしてくれる」とのお約束を頂いた。
ゴールドバーグ卿は、学園の守りだけでなくこちらの『野外授業』にも、バウンサー協会へ護衛派遣を依頼してくれたのだ。
実にありがたい話だよね。
なので今、マグナムトル市には高ランクのバウンサーが何組も来ている。
その一組は、あのルドリさんのチームだった。
先ほど、ご挨拶も済ませて来た。
この人達ならば腕も確かだし、知った仲だから安心だよね。
そのルドリさんから聞いたけど、わたしの補助をしてくれる為に、もう1人、高ランクのベテランバウンサーがムナノトスまで同行してくれるのだとか。
ルドリさんが高ランクだ、ベテランだというくらいだから、きっと相当に腕が立つ人に違いない。
ンでそのベテランの方と合流するために、ビビ達と別れた後、わたしとモリス先生はマグナムトル市の馬車停車場までやって来た。
停車場には大小合わせて様々な馬車が、十数台停まっている。
どの馬車を使う事になるのかな?と眺めていると「見ればわかる」とモリス先生が歩き出した。
どうやら先生は使う馬車をご存じの様だ。
直ぐにモリス先生が「これじゃ」と一台の馬車の前で止まられた。
それは他の物とは明らかに違い、格段にゴツくて大きな馬車だ。『ウマ』も明らかに他の物よりも一回り以上も大きい。
「まあ!スーちゃん!待ってたわよ!」
その馬車の御者席から、わたしに向けて嬉しそうに声をかけて来る方が居た。
「え?アルマさん?何で?!」
それは、『
「今日はよろしくね!うふ♪」
アルマさんは御者席から軽やかに飛び降りると、わたしの前に立ち、眩しいほどの笑顔をこぼして見せた。
そのお姿は、いつものお店の可愛い制服とは打って変わり、しっかりとした探索装備を纏っておられる。
肩口にはレザーケープをはおり、装飾のように幾つもの留め具で締まる革のコルセットを身に着け、フィッシュテールなバッスルスカートなのでおみ足がしっかりと覗いている!
更にその長い脚を覆う、編み上げニーハイブーツが凄くカッコイイ!!
どれも実に使い込まれていて、とても年季を感じる代物だ。
今、生徒達が身に着けている、昨日今日揃えたような真新しい装備とは大違いの物だ。
それは着こなしているだけで、ベテランだという事がうかがい知れる装いだった。
「もうね!久しぶりのお仕事だからお姉さん頑張っちゃう!」
「ふへ?ベテランバウンサーが居るって……え?アルマさん、が?うぇぇ?!」
「頑張ってスーちゃんのサポートしちゃうからね!」
「ほにゅぎゅみゅ」
この状況が良く呑み込めず、目を白黒させるわたしをアルマさんがギュギューっと抱きしめて来た!
えぇ―――っ?!一体これってどういう事よ?!
アルマさんもバウンサーだったって事ぉ?
なんか意外過ぎだし突然過ぎですのぉ――っっ!!
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