77話カレンの赤い靴
「ぁ……、ぅ、……あっ!」
アニーが手に持っていた剣の握りを取り落とし、苦悶の声を漏らす。
手足が震え、立っていられずそのまま膝を付いてしまう。
身体に力が入らない。気力と体力が急速に失われて行くようだ。
全身に痛みが走り、涙が勝手に溢れてくる。
アーヴィンやスー姉さまが言っていたのは、こういう事だったのだ。「まだ早い」「やれると感じても、1人じゃやっちゃダメだよ」2人がそんな風に言っていたのは、まだ自分の身体が出来上がっていないからだ。
先ず基本の身体作りをする事が大切なのだと、何度も教えてくれていたのに……。ごめんなさいスー姉さま。
「ぅああぁあぁぁーーー!!」
身体を襲う激痛に耐え切れず、叫びを上げながらアニーはその場にしゃがみ込んだ。
「こンのクソガキがぁあっ!!」
そのアニーを、フルークが真横から思い切り蹴り飛ばした。
「あぎゅっっ!!」
蹴り飛ばされたアニーは、建屋の壁まで飛ばされ、そこへ激しく打ち付けられてしまう。
「ア、アニー…………!」
それを見たコーディリアが弱々しく声を上げ、アニーへ手を伸ばそうとするが、痛みで身体が動かない。
「こンのクソガキがぁっ!ブチ殺してやる!!」
フルークは怒りが収まらず、手の中の魔法道具だった棍棒の破片を投げ捨て、恐ろしい形相で石畳の上に蹲るアニーへと足を踏み出した。
「え?なに?……これ」
その彼らの後方から、当惑した様な声を漏らす者が居た。
路地の角に、カレン・マーリンが呆然と立ち尽くしている。
「……これは何?どういう事?……どうして?!」
「カ……カレ……ン。来てはダメ……逃げ……て」
「コーディ!!」
カレンが、石畳に伏しているコーディリアを見つけて思わず走り寄った。傍らで膝を突き、助け起こそうと手を伸ばすが、彼女がその肩から出血している事に気が付きハッとする。
「どうして?!こんな……酷い!」
「ご、ごめんなさい……カレン。守って……あげられなかった……」
「何言ってるのコーディ!どうしよう!こんなに血が!どうしてこんな事に……」
「そりゃお前ぇ……。全部お前のせいだからだよカレン」
パーカーが、ニヤニヤと口元を歪ませながらカレンに近寄って行く。
「私のせい?……何を、……何を言っているの?パーカー」
カレンが、取り敢えずの止血だけでもと自分のハンカチを取り出し、血が滲む肩に押し当てるが、コーディリアは小さく声を上げてしまう。
「そもそもが!テメェが端から俺の言う事を聞いて居りゃ、こんな事にならなかったって言ってんだよ!!」
「言ってる意味が分からないわパーカー。どうして私が言う事を聞かないと、コーディ達がこんな目に会わなくちゃいけないの?」
カレンはコーディリアの応急処置を続けながら、パーカーの方には目も向けずに彼に問う。
「そいつがオレ達に歯向かったからだ。世間知らずのお嬢様が、身の程ってヤツを知っただろうぜ!」
ギャハハ、とパーカーが嫌らしい笑い声を上げると、その後ろからフルークがアニーの髪を持ち、その身体をズルズルと引き摺りながら近付いて来た。
「アニーちゃん?!」
苦痛に呻きを上げているコーディリアを、少しでも楽にさせようと壁に寄りかけさせようとしていたカレンが、そのアニーの姿に気付き声を上げる。
「何をしたの?!アナタ達、その子に一体何をしたの?!!」
カレンが、今迄に無い強い言葉を彼らに発した。
普段のカレンを知っている者からすれば、思いもかけないその反応にパーカーが鼻を鳴らす。
「フン!そのガキがオレ達に歯向かって来たからだ。躾が成っていないガキは、身体に教えるのが一番だろが?ひははっ」
「カレン・マーリン。石を出してもらうぞ」
突然のフルークからの言葉に、カレンは何の事かと問い返す。
「何の話?何の事を言っているの?そんな事より、アニーちゃんを今すぐ放して!」
「放して欲しければ石を出せ。お前が持っている事は分かってるんだ!」
「いし?さっきから何の事を言っているの?一体何の話をしているの?」
「惚けるな!!お前が持っている事は承知しているんだよ!赤い石だ!お前が肌身離さず胸元に下げている赤い石を出せ!」
「……なぜ、何故?コレの事を?」
「そんな事はお前には関係無い!良いから今すぐソレを出せと言ってるんだ!!」
そう恫喝しながら、手の中のアニーを無造作に、荒々しく前方へ放り投げた。
石畳に打ち付けられアニーは、吐き出すように小さな声を洩らし、人形の様に転がってパーカーの足元で止まる。
それを見たカレンが目を見開き、思わず口元を抑える。
「なにを……何をするの?!!」
「お前のトコのガキ二匹は、今家の中に逃げ込んじまったが……、まあ、とりあえずはこのメスガキからだ」
そう言ってパーカーは足元に転がるアニーの髪を無造作に掴み、そのままカレンに見せ付ける様に持ち上げた。
「テメェが持ってるモン出せよカレン。出さなきゃまずはこのガキを絞め殺す」
「……何を言っているのパーカー?アナタ……正気なの?」
「あ゛あ゛?!テメェは黙って言う事を聞いてりゃ良いんだよ!そもそもが、テメェがオレ達に逆らっていなきゃ、こうはならなかったんだよ!」
「私が逆らった……から?私の……せい?」
「ああ!そうだ!テメェだ!全部テメェのせいだ!!あの店で、あんなワケの分かんねぇ連中けしかけやがって……」
フルークが探る様な目線でカレンを睨み、パーカーの顔が赤みを増して行く。
「全部テメェのせいなんだよ!クソがっ!!テメェは大人しく、コッチの言う事を聞いてろ!でなきゃこのガキの次は、家の中に逃げ込んだチビ共だ!」
「パーカー……あなた」
「それでも足りなきゃ、そこで惨めに這い蹲ってる粋がってたお嬢様方だ!」
「…………」
「身の程を知らねぇからそういう目にあうんだよ!だけど安心しろよ!この後で、フルークさんの店で使って貰うからよ!そこでタップリ、男への媚び方でも教わりゃイイぜ!」
コーディリア達を嘲る様に、パーカーが下卑た笑い声を上げる。
「……ぅ……カ、カレ……ン……逃げ……て」
そんな中、振り絞る様にカレンに逃げろと呟くコーディリアの声を、カレンの耳が辛うじて拾う。
カレンはコーディリアを支えていた手に力を籠めて、そのまま抱きしめた。
「コーディ…………」
「ごめん……なさい……カレン。守って……あげられ……なかった。守って……あげた……かった」
「違うのコーディ。謝るのは……私の方。ゴメン、ごめんねコーディ……!」
カレンの手が、コーデシリアの髪をそっと撫で付ける。
「だからまずテメェは大人しく、言う通りに出すものを出せ!」
「私が言う事を聞けば、この子達に手は出さないと約束してくれるの?」
男達に背を向け、コーディリアを抱いたまま、カレンが彼らに問い質す。
「あ゛ぁ?!なにテメェが条件出してんだよ!テメェにはそんな資格ねぇんだよ!まだ分んねのかよ?ああン?!そいつらは、そんなテメェを庇おうとしたんだ!ハッ!自業自得ってヤツだ!」
カレンはコーディリアを抱いたまま、パーカーに視線を向けた。
その顔の表情が消えている事に、パーカーは気付かない。
「あなたは、私が言う事を聞くのが当たり前だと言うのね?」
「ああン?!そんなモン当たり前だろが?!!テメェは端から俺達に逆らうなんて許されてねぇんだよ!!身の程を知れって言ってんだ!!!」
カレンはコーディリアを改めて優しく壁に寄りかけさせると、そのまま立ち上がり、静かに彼らと向き合った。
「あなた達がいくら私を蔑んだって構わない」
今、カレン・マーリンの目から、それまであった怯えと云う名の色が消えている。
「それは私が自分で決めた事だから」
そうだ、自分で決めたのだ。
グルースミルの学校へ通うと決めた時、「ごり押しで決めてしまった為、子供達からは反発があるかもしれない。だが、そこはどうか子供達同士で上手くやって欲しい」とニヴンの小父様には言われていた。
その時は「そう言う事もある物なのかな?」と漠然と思っていたけど、ルゥリィからの当たりは思いの外、最初からきつかった。
私が「特別扱いされている事が気に入らない」と彼女は言う。
私は、自分が特別扱いされているとは思っていなかった。
だからそんな事は無いと伝えても、それは彼女の感情を逆撫でするだけだったのだ。
何度かそんなやり取りをした覚えがあったが、いつの頃からか、彼女の理解を得ようとする事を諦める様になった。
顔を合わせれば言い合いになるなら、距離を取ればいい。
不要な争い事は、するべきでは無い。
叔父様も言っていた。「お前の力はお前が思っている以上に強い。決して無闇な事で力を振るう様な真似をしてはいけない」
だからなるべく彼女達には近付かない様、心掛けるつもりだった。だけど狭い学校ではそれも難しい。
いつしか小さな嫌がらせが始まった。
いつの間にか物が無くなっていたり、服が汚れていたり、何処からか水をかけられたりと。
バスケットが壊された時は、我慢の限界だと思った。
だけど、そんな時にヴァンお兄様が現れて、堪えて欲しいとお願いされる。
その時は何とか我慢したけれど、私が何も言わないと分かると嫌がらせの数も増えて行った。
また我慢の限界が来そうになると、再びヴァンお兄様に諌められ矛を収める。
そんな事を何度も繰り返すうち、私の中で諦めの気持ちが育ってしまった。
いつしか学校の子供達は皆、今パーカーが言った様に私には何をしても良いと思う様になっていた。
そうだ、それは私の選択だった。
そうなっても良いと思ったのだ。
でも、この子達は違う。
叔父様の言葉が今ハッキリと蘇る。「お前が守るべき時、守るべき者を守れ!お前の力はその為の物だ」私の目を見て、そう力強く仰った。
何故、今まで忘れていたのだろう。
「でも……、だからと言ってダンやナンを、アニーちゃんを……」
何故、怯えて逃げる事ばかり考えていたのだろう。
「コーディを……私の大切な友達を」
私がダンもナンも、そして……コーディも守って上げるって、ずっとずっと昔に約束してたのに……!
「こんなヒドイ事……、許すつもり無い」
カレン・マーリンが静かに呟いた。
その目は、つい先程まであった弱々しい物では無い。
静けさを湛えながらも強い力が籠った目だ。
パーカーは、カレンのその変化に気付きもしない。
その一瞬後、直ぐ目の前に居たはずのカレンの姿を見失った。
刹那、怪訝に思う間すら与えられず、パーカーの左腕の肘が、思いもかけない衝撃を受ける。
「――っ?!!」
パーカーはその時、左肘がおかしな音を立てたのを確かに聞いた。
左手で握っていたアニーの髪が、指から離れた事に気付けもしない。
左から受けたその衝撃で、右に身体が僅かに動いた時に、パーカーは更に突き上げる様な衝撃を胸部に受けていた。
カレン・マーリンが、パーカーの目前で地面すれすれまで身を沈め、両手の指を思い切り広げて地を捉え、そこを軸にして上方に全身の発条を使った蹴りを突き上げたのだ。
最初の肘への一撃も、低い位置から放たれたカレンの回し蹴りだった。
そのカレンの蹴りを受けたパーカーが、後方へ吹き飛ばされ、フルークの目の前に転がって行く。
「てめぇ……」
フルークが額に血管を浮かび上がらせ、憎々し気に呟きながら、パーカーが落とした魔法道具の棍棒を拾い上げた。
「ナメてんじゃねぇぞクソが!テメェも直ぐに寝てんじゃねぇ!起きろ!パーカー!!」
フルークが手に持った魔法道具を横に勢いよく振り払うと、そこから魔力の光が零れ散る。
そのまま脇で呻いているパーカーを毒づきながら、それを激しく蹴り上げた。
「とっとと渡したモン、飲め!ボケが!!」
「……ぁ、が。くは」
石畳の上に転がったパーカーは、左肘の関節が外れている事に此処で初めて気付き、声を上げようとするが、胸のダメージで息が吸えずに声を上げられない。
そこをフルークに蹴飛ばされ、身体が跳ねるのと一緒にポケットからアンプルが零れて散らばった。パーカーは慌ててそれをひとつ右手で拾い上げ、その中身を一気に口の中へ流し込んだ。
カレンはその間にアニーを抱き上げ、コーディリアの横へ静かに座らせていた。
だがそこへ犬の魔獣が3匹、カレンに向かい突っ込んで来る。
魔獣達へのコントロールが回復した事を示す様に、フルークが振り回す魔道具から、魔力の光が溢れている。
カレンは、自分へと走って来る一匹の魔獣に向かい、地面すれすれに脚から滑り込んだ。
そしてそのまま魔獣の顎を下から蹴り上げた。
魔獣が顎を砕かれ、口から血を噴き出し、弾かれたように縦に回る。
その位置からカレンは手を地に付き、それを軸に低い位置から2匹目の魔獣の鼻面に、遠心力の乗った自分の踵を叩き付ける。
鼻面を叩き割られた魔獣は、その勢いでま横に向かって弾かれ飛んだ。
カレンは瞬時に伸びた身体を縮めて戻し、直ぐに3匹目に向けて石畳を蹴って飛び出す。
彼女に向け牙を立てようと口を開いた魔獣の上顎の中、そこにカレンの履くローファーの爪先が喰い込む。
魔獣はそのまま口が閉じれない。
カレンはそのまま左足の踵を魔獣の頭に引っ掛け、手で身体を支えながらその身を回転させた。魔獣の身体はその勢いで振り回され、そのまま石畳に叩き付けられた。
上顎が砕かれ、多くの歯も飛び散った魔獣の口から、血に塗れたカレンの靴が姿を現す。
「カレェーーーン!こぉのクソがぁぁぁーーーーっっっ!!」
パーカーが怒声を上げながら拳を上げて殴りかかって来た。
さっき、壊したはずの左肘も普通に動いている。
カレンは一瞬眉を顰めるが、殴りかかって来たパーカーの拳を横によけ、その場でパーカーの腹に膝を叩き込んだ。
「あ?が……」
カレンはその、隙だらけに突き出されたパーカーの顎を下から蹴り上げた。
脚をY字に振り上げたカレンの踵が、パーカーの顎を砕き、その身体を上方に浮かばせる。
口から折れた歯と血を溢し、パーカーの身体が宙に舞う。
「舐めてんじゃねェゾ!!」
その後ろから、フルークが棍棒を振り下ろして来た。
フルークの棍棒はゴッと風を切り、迷い無くカレンの頭部に迫る。
しかし、カレンはそれを僅かに身体をずらし、何気ない動きの右手で捌く。次の瞬間にカレンの左の肘は、フルークの右脇腹に埋まっていた。
「?ごぁっ!!」
脇を押さえて身体を屈めたフルークの後頭部に、間髪入れずにカレンの踵が振り下ろされる。
「がぼっっ!」
そのまま顔面から石畳に突っ込み、鼻と前歯を叩き折られながらフルークが転がる。
それを見下ろすカレンの後ろから、先程屠った筈の魔獣が一匹飛びかかって来た。
カレンは咄嗟に身体を捻り回して躱し、自分の身体と接しているその横腹へ、己の肘を叩き込む。
肘打ちで吹き飛ばされた魔獣が、その先で体勢を整えるよりも早く、カレンが手を地につけて、低い体勢からの強烈な蹴りをその鼻面に叩き込んだ。カレンの足に、骨の砕ける感覚が伝わって来る。
普通ならこれで屠れる筈だが、吹き飛んだ先で魔獣はまだ動いていた。
気付けば他の魔獣も復活し、此方に向かってくる。
カレンは構えを取ったまま、リズミカルにステップを踏み呼吸を整える。
そう言えば、昔叔父様に聞いた事がある。
世の中には矢鱈とタフな魔獣も居る、と。
――――頭が幾つもあるような奴は、それを1つくらい潰しても平気で向かって来る。
それどころか、見る間に修復したり生えて来たりして実にしぶとい。
だが、そんな奴らも、とどのつまりは生き物だ。回復にだって限界がある。
だったら連中の限界まで、ダメージを与え続けてやりゃ良いだけの話だ!――――
そんな叔父様の話を、ワクワクしながら聞いていた事を思い出した。
お母様が「本当にバァトは脳筋なんだから」と楽し気に笑っていた姿も思い出す。
カレンの口元が、自然に上がっていた。
自分に向かって来た魔獣を僅かな動きで躱し、揺れながら、踊る様に肘で打ち付け、遠心力の効いた足刀を叩き込む。そして激しいステップを踏む様に、踵で頭蓋を踏み潰す。
「ごのぉ!ガレぇえンーー!」
「グぞがぁあぁーーっっ!!」
何度も起き上がって来るパーカー達の力が、幾分か強くなっている気がする。
手足が一回り大きくなっている。
振り下ろした拳が石畳を砕くのを見た。
拳を地に減り込ませ、下を向いた顔にまた正面から蹴りを叩き込む。
今度は、顎を砕いた程度では動きが止まらない。タフネスさも上がっているのか?
でも!それならコチラも、ギアを上げて行けば良いだけだ。
魔力を纏わせれば、左の足首に着けているアンクレットが赤い光を仄かに放つ。
身体がとても軽い。身体のキレが驚く程に気持ちが良い。
周りから一斉に飛びかかって来る魔獣と男達を、低い位置から広範囲にコマの様に回した脚で薙ぎ払う。
身体を動かすのがこんなに楽しいのは、一体何時ぶりだろう?
薙ぎ払われ、文字通り弾き飛ばされた襲撃者の1人、パーカーの後を追う様にカレンが跳ぶ。
追いつきざま、浴びせる様に踵を顔面に叩き付ける。
鼻骨が潰れ、前歯が何本も飛び、ゴボリと血を吐き出す。
いつの間にかカレンの靴は、砕いた魔獣や男達の血で赤く染まっていた。
それをアンクレットからの赤い魔力が纏いつき、カレンが動く度、赤い光が溢れて飛び散る。
間断なく魔獣や男達を血に塗れさ続ける。そんな凄惨な光景を生み出しているにも関わらず、その姿は、まるで楽し気にダンスでも踊っているかの様だ。
コーディリアは曖昧な意識の中、子供の頃、楽しそうに踊っていたカレンを思い出していた。
あの頃のカレンが戻って来た様な気がする。
今、笑顔で踊るカレンが、とても綺麗だと思った。
しかし同時にその事が、自分の心の奥底で小さな震えを生んでいる事にも、朧げながら気が付いた。
赤い光を振り撒く靴で、カレンはリズミカルにステップを踏む。踊る度、脚を振る度、魔獣が、男達が血を撒き散らす。
気分がドンドン高揚して行くのを感じる。
もっと、もっと踊りたいと心底思う。
地を踏む度、砕く度、カレンの心に歓喜が溢れる。
「あは♪」
頬を上気させ、カレン・マーリンが小さく悦びの声を洩らした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そこは何処とも知れぬ光の届かぬ深い場所。
「ああぁ……、やっと芽吹いた」
人の形を取る影が、虚空を見上げ、悩まし気な吐息を漏らし、愉悦に目を細めて小さく呟いた。
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