3話旅立ちの日に

 4の紅月あかつきは、元の世界で言えば8月に当たる時節だ。月の終わりとはいえ、まだまだ暑い日が続く。

 紺碧の色に染め抜いたような空は何処までも広く、強い日差しは世界の彩を一層際立たせる。


 空の東に視線を移せば、その先にあるオセアノスの遥か沖合いから、大きな坊主頭を幾つも突き合わせながら立ち上がっている様な積乱雲が、此処コープタウンからでも、昇り立つその大きな姿が見て取れる。


 そんな夏の空の元、頬を優しく撫でて行く風は、陽射しで暖められた夏の匂いと一緒に町の喧騒も運んで来る。

 馬の蹄が石畳を叩き、車輪が回り馬車が軋む音がそこかしこで響いていた。


 ここは、コープタウンのメインストリート北の端に置かれた、駅馬車の乗車場だ。


 乗車場は、石畳の路面よりも一段高くなっていて、そこに馬車を待つ人の為に木製のベンチが一つ置かれていた。

 今そのベンチの前には、デケンベルに旅立つ者を見送る為にちょっとした人垣が出来ている。

 恐らくその日ほど、この乗車場が騒がしさに包まれていた事は、嘗て無かったのではないだろうか?


 デケンベルへ向かうのは、5人の子供たち。

 わたし、ミア、ビビの女子3名と、アーヴィン、ロンバートの男子2名だ。


 5人とも、ミリアキャステルアイ寄宿校の、真新しい制服に身を包んでいる。


 わたし達女子の制服のスカートは、タータンチェックのカーマインで、胸下まであるハイウエストのコルセットスカートだ。フロント部分にある、六つの真鍮のボタンがポイントかな?

 首元の大きめのリボンタイも、スカートとお揃いの赤い色で可愛い。

 その可愛いタイを合わせるパウダーピンクのブラウスは、夏服だから半袖だけど肩がふわりと膨らみ、胸元にはフリルも付いてて、これもとっても愛らしい。

 冬はこれに、ケープ・ベニングを合わせる事になるのだそうだ。

 今は夏なので、丸みが可愛いポーラーハットだけ頭に乗せている。


 男子はスラックスに白いシャツで、わたし達と同じ色の紐タイを付けている。さすがに男子の制服は女子と比べると飾り気がずっと少ないけど、でもシャツは生地がふんだんに使われていてタックも多く、ちょっとカッコイイ?

 制服を着ているというだけで、ロンバートなんか凛々しさ1割増しだし、アーヴィンもなんかカッコ良さげに見えるよ?アーヴィンなのに!!

 ちょっとビビ!そんな熱のこもった眼でチラ見してるんじゃありません!ラブコメ的な事案起こすなら、人の目の無いトコでやるようにね?!!

 


 今この停車場には、そんなわたし達の旅立ちを見送るために、それぞれのご家族が集まって来ているのだ。

 マティスン家のリチャードさんとノーラさん。クロキ家のサイレンスさんとジェーンさん。ハッガード家のハリーさんとエルマさん。ブロウク家のハリソンさんとステラさん。ロンバートのお姉さんのアリアや、アーヴィンのお兄さんであるライダーは、お仕事があるので来ていない。別に薄情者とか思っていないけどね、別にね!

 ……そして勿論、ハワードパパとソニアママもココにいらっしゃる。

 みんな、それぞれの家族と別れを惜しみ、その旅立ちを祝福して貰っている。


 学校で共に過ごした下級生の子達も、大勢見送りに集まって来てくれていた。

 わたしは、滲み出そうな涙を堪えながら、ヘレナやメアリー下級生達と抱き合って別れを惜しんだ。そして馬車に乗り込む前に、改めてハワードパパ、ソニアママに、出発のご挨拶をしようとして向き合ったのだが……。


 お二人のお顔をシッカリ目に焼き付けようと、ジッと見詰めていると、わたしの中で急激に何かがせり上がって来て、それは一瞬で盛大にわたしの理性を決壊させた!

 プルプルと唇を震えさせながら、大粒の涙と嗚咽という形で溢れ出した感情は、わたしの外へと弾け出た。


「……や、やっぱりぃ……!やっぱり行くのは……嫌ですぅぅっっ!!!」


 わたしはソニアママに抱き付き、その場でボロボロと涙を零し、大泣きし始めてしまった。

 そう、停車場での『嘗て無いであろう騒がしさ』というのは、大泣きするわたしが原因だったのだ!!

 わたしの泣く姿を見て、メアリー達年下の女の子達も、つられる様に大声で泣き始め、それに大人達はオロオロしてしまう。

 ハワードパパなんてひどく動揺したようだったと、後からアンナメリーに教えてもらった。


「スージィ……。もう大丈夫って昨夜言ってたじゃない?」

「でも……、でもぉ!!」

「……い、いや!いっその事、このまま行くのを辞めてしまえば……!」

「ハワード!!」


 わたしの髪を撫でながら、ソニアママが優しく言葉をかけてくれる。

 その横から言葉を挟むハワードパパを、ママはピシャリと制してしまった。


「スージィ……、大丈夫よスージィ。貴女は大丈夫」

「ママ……ママぁ……」

「だって、貴女は私達の自慢の娘ですもの!」

「マ、ママ……!」

「私達は家族だもの。何時でも、何処でも繋がっているわ……そうでしょ?スージィ」


 ソニアママは、わたしを抱き寄せ優しく髪を撫でてくれている。

 そして、わたしを強く抱きしめながら、穏やかに力強く愛おしそうに、そう耳元で仰った。

 ママのその言葉は、わたしの胸に詰まる物を静かに溶かして行く。

 あぁぁ、と涙混じりの吐息を漏らしながら、わたしもソニアママを強く抱き返す。

 頬をすり合わせ、そこに優しいキスをしてくれた後、ソニアママはゆっくりとわたしの身体から離れ、託す様な面持ちで、後ろに立つアンナメリーにわたしの身体を預けた。


「アンナメリー。スージィを……よろしくお願いしますね?」

「お任せ下さい、奥様」


 ソニアママからわたしを託されたアンナメリーは、わたしの肩に手を置きながら力強く答えていた。

 そう、寄宿校へは、わたし達5人の他に、アンナメリーも一緒に行くのだ!


 なんでも、ミリアキャステルアイ寄宿校というのは、元々は貴族のご子息たちが通う、ハイソな学校だったのだそうだ。

 貴族制度が解体された後も、ある程度その頃の風習が残っており、元高位貴族の子息が入学する折には、その身の回りの世話をする者を同行させなくてはならない、という決まりがあるらしい。

 なんだか良く分からない決まりだけれど、今のわたしには有難い。

 アンナメリーという『家族』が一緒にいてくれるという安心感が、『家』から離れるという、わたしの不安を辛うじて埋めてくれているのだ。


「……ソニアママぁ」

「さぁ、行ってらっしゃいスージィ。向こうでも貴女らしく、シッカリおやりなさい」

「…………ママ」


 ソニアママは、静かな毅然とした面持ちでわたしを見つめている。わたしはその眼差しを受け、ゆっくり頷いた。


「……は、はい。行って・・・参り、ます!……ハワードパパ、ソニアママ。…………どうか、……どうか、お身体をご自愛、くだ……くだ、さい!!」


 わたしは姿勢を正し、溢れてくる涙を堪え、漸くそれだけ言葉を紡ぎ、ハワードパパ、ソニアママお二人に向けてしっかりとご挨拶をした。

 でも、涙はボロボロと勝手に溢れ落ちて頬を濡らして行く。

 視界は涙で歪み、周りが滲んで真面に見えない。


「……くぉっ!ス、スージィ!!」


 ハワードパパの、絞り出した様なお声だけが耳に残った。






     ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆






「あ、あんなめり、アンナメリー!アンナメリー!あ、あん!ぁあん!アンナメリぃー!!」

「大丈夫ですよお嬢様。私がおります。ずっと一瞬です」

「スーちゃん!わたしも……わたしが居るよ!大丈夫だよ!!」

「ア!アンナメリぃぃぃ!!」

「……聞いて無いみたいよ!」

「……ふ」

「くっっ!」


 わたしは馬車の中でアンナメリーにしがみ付き、その膝に顔を埋めて嗚咽を漏らしていた。

 アンナメリーは、膝の上のわたしの頭を労わる様に優しく撫でて、安心する様に声をかけてくれている。

 わたしをアンナメリーと挟む様に座っているミアから、なんだか口惜し気な呻きが聞こえた気がするけど……気のせいだろうか?


「しかし、意外だよな。スージィがこんなに泣くなんてな。もっと平然としてるのかと思ってた」

「……そうだな、普段のスージィからでは想像もつかない」


 うるさい男子ども!

 アーヴィンもロンバートも、わたしを何だと思っていたのだろうか?なんか勝手な評価をしている。

 わたしはすンごくデリケートなのだ!それがガサツな男どもには分からないのだ!!


「そう?大体予想通りだったわよ!ああなるのは、端から分かりきってたもの!大泣きするのは想定内よ!」


 くっ!さすがはビビ!と、ココでは言っておこう!


「……そうだよね。……分かってたよね。わかってたから、ハンカチも沢山用意していたのに……してたのに!!」

「大丈夫で御座います。全て私にお任せいただければ。ミア様がお手を煩わせる必要などございませんので、ええ」

「ぐぬぬぬぬ……」


 やっぱり、ミアの呻きが聞こえる気がする、よ?



     ◇



 今、わたし達が向かうデケンベルは、王都メリディエスからは1200キロほど北に位置して、人口20万人を超える北方最大の地方都市だ。

 アムカム群の玄関口でもあるコープタウンからは、直線距離でおよそ300キロ。

 実際には、途中にある山や渓谷を避けて進む為、道のりとしては350キロを超える距離になるらしい。


 去年騎士団がアムカムに来られた時は、その道のりを7日で来られたというお話だ。

 100人を超える大所帯の移動なのだから、本来は10日はかかるだろうその距離を、7日程度の日数で済ませたのだから、随分と強行軍だったのだろう。


 でも、今わたし達が使っているこの駅馬車は、もっとずっとフットワークが軽い。

 なんでもこの馬車は、『特等急行』なのだそうだ。

 『特急』って事で良いのかな?なんか自分が知っている物とは、ちょっと違う気がするけど……。

 まあそんなワケで、普通の駅馬車と比べると断然速いらしい。

 とはいっても、途中の町々で停車しながら進むので、一日に進める距離は100キロ程度だという話だ。

 わたし達はこの馬車で、3日半かけてデケンベルまで向かう事になる。



 街道は、敷き詰めた石で舗装されているので、馬車の乗り心地は悪くない。

 でも街から離れ、荒野ヒースに入ると未だ舗装されていない道はまだまだ多いそうだ。

 それでも、この馬車そのものの性能が良いので、乗り心地をそこまで心配する必要はないらしい。


 わたし達の乗る馬車は12人乗りの大きな物だ。

 馬は四頭立てで、御者席には御者と助手の方がお二人座られている。

 外見の全体は黒くて所々に装飾が施されているが、長距離の移動に耐える為に頑強な造りになっているそうだ。

 わたし達の荷物は車体の屋根に括り付けられていて、手持ち出来る大きさの物は座席の下に置いてある。

 内装は黒檀で作られ、装飾も落ち着きのあるものだ。

 椅子は赤い皮張りで、それなりに弾力もあり、振動も思っていた程響いて来ないけど、長時間座りっぱなしだと、お尻には確実にダメージが蓄積して行きそうだ。

 でも、そんな人の為にと、柔らかいクッションが幾つも車内には用意されているらしい。


 この馬車で3日半という旅の時間を過ごすわけだけど……、当然わたし達6人以外、他にもお客さんは乗っていらっしゃる。

 コープタウンを出発する時、そして今も馬車の中で醜態を晒している事を、マソムのちょっと手前にある峠に差し掛かる頃に気が付いて、慌てて佇まいを直したのだが、ソレが後の祭りなのは十分承知しておりますともよ?!

 他のお客様方の、生暖か~~い視線に見守られ、ここまで来てしまったのだから、もうしょうがないわ、よ?!



 マソム手前にある峠には、いくつものカーブを何度も折り返して時間をかけて登っていく。

 コープタウンとマソムとの間の距離は、直線では6キロほどらしいのだけれど、この峠を越える為に1時間近くかかってしまうのだそうだ。

 標高200メートル程のこ峠の棟は、東西に長く延び連なっていて、この峰々が天然の城壁となっているのだと、前にハワードパパに教えて頂いた。

 峠が何に対しての壁になっているのかは、アムカムに住まう者なら分かり切った話だ。

 イロシオから溢れる物が、これを越る事があってはならないと、アムカムの人々は長い時を過ごして来たのだから。



 峠を登り切り、その頂に到着すると、そこは小さな広場になっていた。

 そこは峠を登り、疲れ切った馬を休める為の休憩所なのだそうだ。

 その場所には、水をたたえた馬用の水桶が置かれ、何処からから引かれて来た水が、サラサラと涼しげな音を奏でている。


 その小さな休憩場所は峠の展望台にもなっていて、止めた馬車から窓を開けば、新緑の中をくねる様に刻み登って来た道と、その先に広がる大地を遠くまで見通す事が出来た。

 少し先にある大きく壁に囲まれた町は、ついさっきわたし達が出て来たばかりのコープタウンだ。

 東西に渡り4~5キロほど伸びて、町を包むように囲う壁もよく見渡せる。

 町の中心を走る大通りと、その左側に大きな尖塔が建っているのもよく見える。

 白い屋根の神殿の鐘塔しょうとうは、この街で一番大きな建物だ。

 通りの反対側にはマーシュさんの工房が、更にその裏手にはセシリーさんの『昼下がりアプレミディ』がある筈だ。

 さすがに此処からじゃ、お店までは見えないけどね。

 でも大通りに立ち並ぶ大小の店々や、通りを行き交う人出が多いのは、ココからでも良くわかる。


 そこから少し視線を上げれば、さらに北の地が広がり伸びて、その先にある景色が自然と目に映し出される。

 遥か遠くに霞む白いデイパーラを背にして、その裾に、地平の先から広がる深き樹林を封じる様に、切り開かれた土地が広がる。

 それこそが、わたし達の村アムカムだ。


 ほんの2~3時間前には、まだあの場所に居たんだと思うと、また胸に何かが込み上げて来るのを感じる。

 この距離からもその存在感を示し、村の中心で堂々と佇むアムカムハウスは、やはり村の誇りなのだと改めて思う。

 アムカムハウスから、少し右手にある緑が纏まっているトコロが、きっと学校がある場所だ。

 窪んでしまっているから見えないけど、学校とアムカムハウスの間のあの辺に、いつもみんなで涼みながら、小魚を追いかけていた小さな橋があるはず。

 それと、アムカムハウスの先に、少し重なって見えるけど、あそこにあるのはきっとあの高台の古木だ。

 そしてその古木とアムカムハウスの間には、ビビのお家のクロキ屋敷があって、そこから西に向かい、今は青々とした葉を付け、堂々と立ち並ぶポプラの並木、『クロキの並木道』が続いているんだ。

 そして……そして、その並木の先の道を南に下れば……。そうだ、きっとあの防風林だ、あそこに……、あぁ、緑色の屋根が見える!小さく、微かにだけど!綺麗な緑の切妻が!あそこが……あそこに!!


「……ぁ、あ、…………あ、あ、あぅぅ!」


 そこで限界だった。

 ソニアママ、ハワードパパの顔が浮かんで来て、それだけでまた、涙が溢れて視界が歪んで行く。


「ひぅ!……ぅ、あ、ぁ、あ……、うぁあ!…………ぁびゅん?!」


 今まさに涙腺が決壊して、洪水の様に涙が溢れ出そうとしたその時……!


 グルリと身体を回されて、顔が柔らかいモノに包まれた。

 それこそ、ポフン♪と擬音が聞こえてきそうな位柔らかく、とてつもなく心休まる感触だ。


「ぁプ!?ぷはぁ……、はむん?ぅン、あみゅにゅみゅぅ…………」

「スーちゃん……、泣きたくなったら……ん、いつでも……ぁ、ココで泣けばイイんだよ?ね?……んン」


 わたしは直ちに、自らの顔が埋まる柔らかな感触の正体を確認しようと、両手を顔が埋まるブツの高さまで持ち上げ、そのままその柔らかな塊を、顔を挟む様に何度も寄せ上げた。

 パフパフン♪と弾かれる様な音と共に、顔がマシュマロの様な柔らかさに包まれ埋没する。


 ミアだった!

 ……いや、分かってはいましたけどね……。

 わたしは今、ミアの圧倒的なまでの胸部戦力に抱え込まれていたのだ!


 その戦力は、初めて出会ったときから更に成長を続け、今現在では遂に『H』に至ったと報告を受けていた。そして未だに成長途上だとか……。恐るべし!

 ついでに言えば、ミアのお母さまも、おばあちゃまも、並の戦力では無かった。これは血筋とかサラブレッドの類なのだ……。お、恐るべし!

 しかもお二人とも、重力に屈したご様子すら無い!

 なんでも、マティスン家の秘伝だとか秘術だとかが、あるとかないとか……。恐るべし!マティスン家!!


 ついでに言えば、今わたし達が着ているこの制服は、胸下まであるハイウエストだ。その為イヤでも胸部は強調される。

 これだと、如何に胸の小さなビビだろうと、それなりに見えてしまうと云う恐るべきシロモノ……ゲフンゲフンゲフン!

 ……今、後ろ頭に突き刺さる視線を感じたゾ?……勘の良いヤツめ!

 ンな訳で!この制服を身に付けているミアは、今まで以上に凶悪な存在と化しているのだ!


 そこに押し付けられて、わたしが無事でいられる筈も無く……。

 只々それを揉みしだき、埋まって行くしか出来なくなるのは無理の無い事なのです!!


「……むにゅ、みゅ……ンむ、にゅみゅにゅ…………」

「ン♡んふ……ン。……フフフ」

「ぬ……くっ!」


 埋まるわたしの頭を撫でながら、ミアの嬉しそうな声が聞こえる。

 後ろの方から、今度はアンナメリーの悔し気な呻きが聞こえた気がしたけど……何故だろう?


 あと、向かいの席から、アーヴィンとロンバートの恥ずかし気に目線を外したような咳払いと、ビビの呆れたような大きな溜息が聞こえた様な気もしたが、そんなもの一切気にしない!


 やがて馬車が動き出し、心地よい振動が座席に伝わって来た。

 もう30分もしないでマソムには到着するはずだけど、それまではこうして埋まって居よう……。

 この沈み心地に抗えるものなど、在りはしないのです! これは人をダメにする駄肉なのだ!!

 わたしは、ネコがフミフミとクッションとかの柔らかな物を、前脚で延々と踏み続ける様に、ひたすらその感触に夢中になった。

 直前まであった不安など、無かったかの様にマシュマロの癒しに包まれる。


「みゅ……むふ♪ぁふ……にゅにゅにゅぅ……」


 揺蕩う様な至福の時は、まだまだ続くのだったのであった!!


――――――――――――――――――――

次回「駅馬車道中記」

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