幕間4 温泉へ行こう!

 カコーーーン と、桶が当たる音が辺りに鳴り渡る。

 チャプチャプン と、お湯が湯船を打つ音が優しく響く。


 目の前に広がるのは、海沿いの街ニューノックスポートにある大浴場だ。

 しかも岩風呂、露天風呂!

 そんでもって、なんと温泉!

 なんでもこの街には温泉脈があるそうで、2百年ほど昔に温泉掘削され作られたというお話。

 うむ!恐らくは勇者の犯行だね!グッジョブだっ!!


 ここは『グリーン屋敷』と呼ばれる邸宅にある温泉なのだ。

 200年前だと、まだこの屋敷はニューノックスポートの領主邸だったから、露天風呂の温泉くらいは持っていても不思議はないのかもしれない。


 去年カーラ達とこの街に来た時は、海が近いと云う事もあり、海が目の前のクロキ家の別荘を使わせて貰ったんだけど、今年は皆で温泉に入りたい!という意見が多く、今回こちらの屋敷にお邪魔する事になったのだ。

 去年来た時は、クラウド家だけでお邪魔したけれど、今年の夏は大人数で伺いたいという話も、グリーン屋敷はわたし達を快く迎えてくれた。

 グリーン屋敷とわたしたちとはどういう関係なのか?と言った詳細はまた後日!


 今はそんな事よりも…………!


「……ぁあ、ホント、こんな大きなお風呂を使わせて貰えるなんて……、ありがたいわねぇ」


 とても15歳とは思えない、貫禄のある佇まいを醸し出しているコリンは、着衣時には一見わからぬ隠れ巨乳で湯面を揺らし、辺りを波立たせている。

 相変わらず肌が白い……。

 お風呂の中だからメガネは外しているけれど、緩めたミカン目の下の頬をほんのりと赤めている姿は、何でそんなに色っぽいの?!!


「んん~~~!やっぱり足が延ばせるのは気持ちイイなぁ~~!」


 そんな事を言いながら湯船で背泳ぎをしているダーナは、これまた手脚の締まったメリハリボディの腹筋女子だ。

 やっぱり、決して小さくはない胸元を、お湯から突き出して浮かんでる絵面は結構ヤバイと思うんですけど?!!


「ダーナ!湯船で泳ぐのはマナー違反よ!!」


 こちらも、14歳とは思えぬ貫禄のあるお声を飛ばすのはビビだ。

 元がスレンダーで腰なんてすごい細いから、後ろから見ると相当スタイル良いんだけど……。

 唯一わたしが勝ててる相手でもある!何処がとは敢えて言わない!!

 そんなわたしの思考を読んだとでも言うように、コチラに「キッ!」と視線を向けるビビ!

 当然わたしは視線を逸らす。しかし、「何か良からぬ事を考えたわね?!」と言いたげなビビの視線が突き刺さって来りゅ!うーん、イタイ、痛いよビビぃ。


 そして、視線をそらした先に居るのは、腕を思いっきり上に上げ大きく伸び上がりながら、胸元の凶悪な代物をまるで崩壊する巨大氷山が大きな波飛沫を上げて海面に沈んで行く様に、駄肉様を湯面に叩き落す姿があった。

 当然波がうちたち、辺りはちょっとした洪水の様に波が広がる。

 辺りを水害まみれにした張本人は……。


「ンんーーーーーーーっ!きっもちイイっねーーー」


 ミアは気持ちよさげに伸びをしていた。

 湯船に洪水を起こした当の肉塊は、ミアの胸元でダプンダプンと湯に浮き揺れていやがる!いや?バインバインか?

 何れにしても、凶悪な物体である事には変わりがない!あの代物は未だ成長を続けているという!ぐぬぬ!!

 しかし!あの白さ柔らかさ大きさは、目が勝手に奪われてしまうのですよ!!

 あの波間に翻弄され、形を変えながら浮かぶ様を見続けてると、勝手に鼻血が垂れてきそう……いあ!きっとのぼせてるに違いない!!

 

「スーちゃん、お湯の中にタオル入れちゃだめだよ?」

「そうよスー!湯船にタオルを漬けるのはマナー違反よ!!」


 はたと気付いた様に言うミアと、ビシィっと指を突き付けて来るビビ!風紀委員キャラかっ?!

 そうなのだ、マナー違反とは分かってはいても、どうにも恥ずかしくって、わたしは身体の前からタオルを離せなかったのだ。


 最近では、精神が随分と女子化していると自分でも自覚はあるが、ちょっと前までは男目線で見えていた訳で……、そういう目線ではこれは天国の様な光景なんだけど……、なんだけど!

 みんなの様に、開けっぴろげに身体を見せる事に、凄い抵抗を感じてしまう。

 有体に言って『恥ずかしい』のだ!


 お風呂に入る時も、そそくさと体を洗って、サッサと湯船に入ってしまった。

 なんだこの初心うぶさは?!と思われるかもしれないががが!

 だって恥ずかしいんだモン!!恥ずかしいものはしょうがないんだモン!!


「ぁ、あぅ……。うみゅぅぅ」


 わたしが、恥ずかしさからか、茹だっているからか、顔を火照らせモジモジしていると、波をかき分けチャプチャプ近付いてくる者が居た。ダーナだ。

 ダーナはわたしの傍まで来ると、そっと肩に手を置いて、そのまま……。


「スー!!いつまでタオルで隠しているんだーー!」

「ぁぴゃぴゃぴゃぁぁあぁ~~~っっ!!」


 一気にお湯に浸かっているわたしのタオルを奪い、そのまま後ろから抱き着いて来た!


「ふむ?うん!ちゃんと成長してるな!ヨシヨシ!この調子で行こうー!」

「ぅにゃぁあぁぁ!じ、じか……はっ!にゃぁっめぇえっ!」

「うんウン!良い感じ!ウヒ」

「ひにゃっ!つ、つま、みにゃっっい!」


 背中にはダーナの立派な胸部装甲が押し付けられ、なかなか結構な天国感覚なのだが、今はそれ処ではない!

 ダーナは抱き着いたまま、わたしのを直に掴んで、その大きさや掴み心地を確認して来ていりゅのだっ!!

 わたしがのたうってると、ダーナの手は更に追撃をかけてくる。


「ウヒヒヒ!」

「ぃにゃぁあぁぁぁ!!」


 パコォォーーーン!とその瞬間、凄い音が大浴場に響き渡った。


「ぉおおおぉぉおぉごぉぉおお!!!」

「ダーナ!いい加減にしなさいハシタナイ!」


 コリンが思い切り、桶でダーナの頭を殴ったようだ。


「あ!頭が割れる!割れる様に痛いぃぃ!割れた!これは割れてるるーーー!!」


 頭を押さえ、今度はダーナがその場でのた打ち、湯船に沈んだ!


「もう!スーも困ってるでしょう?!程々になさい!」

「あぴゅゅっ?!」


 わたし的には困っているどころではないのだが!

 コリンはそう言いながら、わたしをそのまま抱き寄せ頬をスリスリして来りゅ!


「あぁ、相変わらず抱き心地が最高ぉ。直だとホント、モッチモチよねぇ。これともうお別れだと思うと……」


 隠れ巨乳のコリンは、何気にダーナより1サイズも2サイズも立派なモノをお持ちだ。

 それを直に押し付けられ、抱きしめられ、剰えスリスリされているのだから、わたしの内面が大変な事になっているのは最早やむを得ない事だと思うのだけれど?!


「あぴゅ!ぁにゃ!はにゃにゃぁあぁぁあ!ぁンん!」


 コリンは、わたしを抱きしめながら身体のアチコチもさすって来りゅりゅ!!

 コ、コリンーー!せ、背中は撫でちゃダメにょぉぉおおお!!

 こんな他所様のお風呂場で迄、セクハラされているわたしって一体---っ?!


 そんな事を考えている間もコリンの撫で回しは続き、直ぐに復活してきたダーナにも後ろから抱き着かれ、4つのお山に挟み込まれたわたしは、いつもの様にグルグル目玉になるしか成す術を持っていなかったのだっっ!!


 お湯を盛大に波立たせ、いつもの様に翻弄されているわたしを、やっぱりいつもの様に呆れた視線を向けるビビ。そして、それ以外のもう一つの視線がある事に、その時のわたしは気が付いていなかった。

 そう、鼻息も荒く眼を爛々と輝かせ、何か揉みしだく様に両手をニギニギとするミアの視線に!!




 その夜、ベッドの中のミアに捕獲され引き摺り込まれ、声も上げられずにのた打ち回ったのは、致し方のない事ではなかったのだらうか?!


――――――――――――――――――――

次回「流れよ我が涙、とスージィは言った」

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