第40話ハワード・クラウドの覚悟
「マリーナ、お前ぇは暫くこの中に居な」
影のような男が、朝陽に焼かれたヴァンパイアに手を添えながら、自分の影の中に落し込んで行く。
「お前ぇ達もだ。陽が落ち着くまで中でイイ子にしてな」
男の足元の影が大きく伸び、かき抱く様に残り二体のヴァンパイアも、その中に飲み込んだ。
「よお、てめぇ『鉄鬼神』だな?クハ!」
巨大な影を背負いながら、男はハワードに目線を向けそう言った。
そしてそのまま、影を翼の様に広げ、壁の上からハワードの前へと降り立った。
「……成る程、こりゃ此奴等じゃ手に負えねぇわな。クハハッ!」
男は、背に括り付けてあった巨大な剣を引き抜き、それを持って構えるでも無く肩に乗せ、緊張感の無い面持ちでそれで肩を叩きながら、世間話でもする様な気楽さでハワードに話しかけて来た。
「てめぇ、かなりやるらしいじゃ無ぇか。噂は知ってるぜぇ……、『鬼すらも、灰も残さず滅する鉄鬼神』ってなぁ。怖いねぇ、コワイコワイ!クハハハッ!」
「ふん!いつの時代の話だ……」
ハワードは、男から意識を逸らさぬまま、素早く周りを一瞥した。
直ぐ近くで、コンラッドとジルベルトが地に伏している。
(ジルベルトは、素早さは高いが、耐久力が低い『グラスフット』だ、大きな一撃を受ければ動けなくなるのは道理だ。早く治療を受けさせねば不味い事になる。
コンラッドが魔力を大量に放出した直後とは言え、一撃で戦闘不能に陥るとは到底信じ難い。だが、こ奴が油断ならぬ相手である事は間違い無い!)
「カイル、トニー。2人を連れて急いで下がれ」
ハワードは男から目を離さず、若い2人にそう告げた。
カイルとトニーは一瞬、逡巡する様を見せたが、直ぐにハワードの意を汲み、2人を引き摺り下がって行った。
「すまんな、カイル、トニー、助かる……」
ハワードが小さく呟いた。
カイル達と男の間に立つ様、そのままハワードは足を運び、構えを解き、剣を下ろした。
その場で力を抜いたまま、男に向かい問いかける。
「今回の首魁は貴様か?」
「あぁん?」
「このアンデッド共の親玉なのかと聞いている」
「まぁ、この女共は元からオレの物だし?骨共も、オレが出したからモンだから、親玉っちゃあ親玉か?クハハ!」
「……貴様の狙いは何だ?何が目的でこれだけの大軍を操る?」
「あぁ?目的だぁ?目的っつてもなぁ……。オレ達ちゃぁ、生きた人間がソコに居りゃあ、只餌食にする。良くも悪くもそれだけの存在だぜ?それ以上でも以下でも無ぇ。違うかよ?クハハ!」
「…………」
「ぁあー、それと、あれだ!イイ女がいりゃ尚の事良いねぇ。イイ女の身も心も、極楽送りにしてやるってのは、男冥利に尽きるってもんじゃねぇか?なぁ?クハッ!クハハハッ!」
「……ふん、元より真面に話すつもりも無いか」
「クハ!何言ってんだ?こうやってシッカリ話してるじゃねぇか?どこが不満だってんだ?なあ?クハハ!あ?そう言や、自己紹介がまだだったか?こりゃ悪かったな!名前も名乗らねぇ相手となんざ、会話なんぞ出来ねぇわな?クハハハハ!」
男は始終、飄々とした態度のまま話しかけてくる。
まるで偶然道端で会った古い知り合いの様に、酒場で偶々隣合せて意気投合した相手の様に、顔を綻ばせ、実に気楽に、実に親しげに話しかけて来るのだ。
「ハルバートだ。オレはハルバート・イースト。よろしく頼むぜぇ!クハハ!」
男は屈託の無い笑みを浮かべ、軽い足取りでハワードに近付き、握手でも求めるかの様に右手を差し出して来た。
黒い髭に覆われているにも拘らず、その笑顔は、まるで邪気の無い少年の様だ。
大抵の者は、その笑みを向けられれば毒気を抜かれてしまう事だろう。
ハワードは『グランドデバイダ』を左手に持ち替え、相手の手に合わせる様に右手を出した。
――――その刹那
巨大な兇刃が、巨岩をも砕かんとする勢いで、ハワードの頭上間近に迫っていた。
だが、同時にハワードの装備の魔法印が光を放つ。
迫る兇刃を、魔力の籠った左で握る『グランドデバイダ』で弾き飛ばした。
周りに激しい金属音を響かせ、剣圧に依り生まれた突風が二人を中心に吹き巻いた。
「ふん!見え透いた……手だ!」
「クハ!やっぱ食え無ぇ爺ぃだぜ!クハハハ!」
ハルバートと名乗ったヴァンパイアは、それまでの人好きのする態度を塗りつぶし、その眼に凶悪な光を宿らせ、肉食獣の様な牙を剥きだしにして覇気を叩き付けて来る。
「成る程、らしい本性だ」と、ハワードが呟く。
更に矢継ぎ早に打ち込まれる禍々しい剣の連撃を、ハワードは受け、躱し、打ち払う。
轟々と互いの剣が大気を斬り裂き、二人の周囲を嵐の様な闘気が吹き荒れた。
「クハハハ!想像以上だ!想像以上だぜ鉄鬼神!!クハハハハッ!!」
片手で己が身よりも巨大な剣を振り回し、紅い光を放つ眼を細め、荒ぶる暴力の波に身を踊らせながら、ヴァンパイアは愉しげに大きく声を上げた。
血が固まって形を成したかの如き悍ましい刃は、振るう度に辺りに瘴気を撒き散らす。
何かの骨を組み合わせた様な刀身は武骨で禍々しい。
あの『ダーク・スケイルダナソー』の骨を使っていると言われても、納得する重量感だ。
その兇刃をグランドデバイダで正面から受け止めれば、ハワードの身の芯に、ズシリと骨まで響く重い衝撃が落ちる。
刀身を弾くだけでも、手に嫌な痺れが残る。
ヴァンパイアはドレッドヘアを振りまきながら、浅黒い肌を踊る様に舞わし、縦横無尽に剣を振う。
陽が登るにつれ、ヴァンパイアが背負っていた影が小さくなって行った。
やがてその影は、そのまま背に吸い込まれる様に小さくなり、遂には消え失せた。
「さぁて、そろそろ本番ってトコか?なぁ鉄鬼神よぉ?!クハ!クハハハッ!」
背負っていた影が無くなったヴァンパイアは、嗤いながら更に大胆に巨大な刃を振るう。
これまでに無い重さで撃ち込まれた剣激を受け、ハワードは、その身の骨が軋むのを感じた。
どうやら、このままで押し通す訳にも行かぬようだ。
静かに長く息を吐きながら、ハワードは深く魔力を装備に籠めて行く。
装備の中層に刻まれた魔法印にも魔力が通り、装備の放つ輝きが二重の層となる。
魔装が纏う魔力の煌めきを振り撒き、瞬時にヴァンパイアとの間合いを詰める。
身体を圧迫する空気の層を、押し開く様に突き進み、そのまま左に構えたグランドデバイダを、ヴァンパイアの首元目掛け振り切った。
だが剣筋はヴァンパイアを掠め、空を斬る。
次の瞬間、ハワードの左下方から兇刃が斬り上がって来た。それを身体を右へ流しやり過ごすが、直後に斬り返された刃が落ちて来る。
その剣腹を、戻したグランドデバイダの柄頭で叩き、払い落し、その流れのまま、再び剣先をヴァンパイアの喉元に向け振り抜いた。
だがヴァンパイアは、それを身体を反らし、やり過ごす。
身を反らし顎を上げたまま、ヴァンパイアはハワードに目線を向け、牙を剥き出しにして口角を上げる。
そして上体を反らしたまま、滑る様にハワードの間合いに入り込み、再び凶悪な大剣を打ち下ろす。
ハワードはそれを弾き、更に数合斬り結んだ後、互いに一歩引き、相手の出方を探る様一定の距離を置き脚を運ぶ。
ここまでの遣り取りは、常人からすれば、ほんの瞬き一つする間の出来事だった。
実際、離れた場所から戦いを見守るカイルとトニーの目には、そこで何が起きているのか視認する事は叶わなかった。
今の打ち合いでハワードの剣は、ヴァンパイアの喉元を確かに斬り裂いていた。
だが、既にその傷口は塞がっている。
対して、ハワードの頬はヴァンパイアの兇刃で抉られ、血が滴っていた。
僅かな傷の筈だが、魔力と体力がゴッソリと持って行かれた様な感覚だ。
成る程、これがコンラッドとジルベルトを戦闘不能に陥らせた正体か。
ハワードは、その武器とその持ち主に思い当たる。
「『不死将軍』……だったか?」
「ほう?」
ヴァンパイアが大剣を肩に担ぎ直し、知っていたかと言いたげに眉を上げた。
「それは死者を甦らせ、生み出し操る悍ましき『
「クックッ……」
「その手が振るう武器は、人の魂を喰らうと言う魔剣『ディスペアブリンガー』」
「クックックッ……クハッ!クハハハハッ!!こりゃ驚いた!今の世にも知ってる奴が居たとはな!クハハハッ!」
ヴァンパイアが、然も愉しそうに声を上げて嗤い始めた。
「……不本意ながら、
「クハッ!そう言うこった!コレで刻まれた奴ぁ、魂を抉られオレに喰われる!てめえらの命は良い味してるぜぇ、鉄鬼神!クハハハハッ!!」
ヴァンパイアが魔剣を肩に担いだまま、ゲラゲラと嗤いながら、赤い舌を出し舐めずった。
「国で記された貴様の最後の記録は、今より400年も前の物だ。この時代に兵を上げて何とする?!国取りでも気取るつもりかっ?!!」
「……国取りねぇ……。どうなんだかなぁ?クハッ!そんな事よりも……だ!鉄鬼神!オレは、しばらく動けずに居たんでよぉ……。やぁっと動ける様になって、身体が暴れたくってウズウズしてんだよ!えぇ?オイ!てめぇさっきまでより、更に力が上がってるよなぁ?鉄鬼神!殺り合う気満々なんだろ?え?!やろうぜぇ!!俺を精々飽きさせるなよ!!クハハハハハハッッ!!!」
ヴァンパイアが魔剣を肩に担いだまま、ギラギラとした眼でハワードを睨み、力を貯める様に脚を開き腰を深く落し込んで行く。
「良かろうヴァンパイア!存分にその力を振るうが良い!だが、老骨と侮るなよ?そう簡単にワシの命はくれてはやれんぞ!」
ハワードとヴァンパイアの、互いの魂を削り合う殺し合いが始まった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「ありがとうジェイコブ。もう大丈夫よ」
アムカムハウスの執事長、ジェイコブ・エバンスが淹れた茶の香りを確かめ、ソニア・クラウドが笑顔を向けた。
紅味の深い茶の色は、小さな波紋を広げ琥珀の光を振り撒いていた。
「オーガスト達は、もう?」
「はい、準備を整えた方達から、各詰所へ集まって御座います」
茶を一口含み、深く寛いだ様な吐息を漏らした後、茶器の中の輝きを見詰めながら、ソニアはジェイコブに静かに問いかけた。
今より少し前、小さなガラスの割れる音が、静かなラウンジの中に響き渡った。
それは、マントルピースの上に置かれた
ラウンジ内で、執事達から報告を受けていたソニア・クラウドは、マントルピースへ歩み寄り、その落ちた
落ちる筈の無い物が落ち、割れる筈の無い物が割れた。
その、割れた
ハワードがアムカムを発つ前からあった、曖昧な漂う濁りの様だった不安が、その時ソニアの中で確かに在る物として、その存在を強く示したのだ。
イロシオ行きを決めたと言われた時、旅立つ後姿を見送った時、一週間もの間やきもきと過した日々、その不安感は共に在った。
……そして、イロシオの深淵で、不死者の大軍に襲われたとの知らせを受けた時、息苦しい程の胸の締め付けを覚えた。
しかし、それでもハワードなら、いつもの様に笑いながら帰って来るのではないか?そんな希望も確かに在った。
だが、その僅かな希望が今、微塵に砕かれた様に感じていた。
この瞬間、ハワードの身に取り返しの付かない事態が起きている。
それは紛れも無く、ソニアが抱いた確信だった。
そのまま崩れ落ちそうになったソニアを、執事長のジェイコブが支え、ソファーに座らせたのが今より30分ほど前の事だ。
今は、血の気を失っていた顔色にも薄っすらと赤味が戻り、ソニアを介抱していたジェイコブの目も、安堵の為、穏やかな色合いを浮かべていた。
「各村に出向いている家長達には、アムカムに戻らずそのまま警戒に当たる様、ハトにて伝えたそうで御座います」
「そうね、アムカムだけ押さえ込んでも、他から溢れてしまっては意味が無いわ。例え万を超える大軍であろうとも、1体たりとも森を抜かせるなどあってはならない事です」
「仰る通りで御座います」
落ち着きを取り戻したソニアに、ジェイコブがそれまでしていた報告の続きを告げ始めた。
「それで、使節団代表様は今どちらに?」
「はい、先程コープタウンを出られたとの知らせが届きました」
「……そう、では、その先のマソムでお待ち頂きましょうか。代表様には責任を果たして頂かないとね……」
「2名の不審者は、バイロス家預かりで宜しいでしょうか?」
「ええ、お任せします。お好きな様にお使いくださいと伝えておいて。それと、屋敷から逃げおおせた者がいたけれど……。あれはかなりの手練れの様だから、付き添いは
「畏まりました」
ソニアが茶器をテーブルに戻し、更に問いかける様にジェイコブに視線を向ける。
「エルローズ達の準備はどう?」
「はい、壱の詰所前広場にて、順調に奥様方と準備が進んでいるそうでございます。食材は、先程此方からも向かわせました」
「そう、ありがとうジェイコブ。私もそろそろ向かうわ。余り遅くなっては、メルベールやジェーンにも申し訳ないものね」
そう言って立ち上がりながら、ソニアはテーブルの上に視線を移した。
そこには、マントルピースの上から移動させ、テーブルの上に並べた家族の写真が置かれていた。
割れたハワードの
家族全員の写真が並んで置かれたテーブルの上を、柔らかな眼差しで見詰めていた。
ソニアは思う……。ハワードは、どんな状況に置かれようとも、還って来る定め在るならば、必ず自分の元へ戻って来るだろう。
しかし、そこに身を沈める定めがあり、ハワードがそれを選ぶのならば、ソニアは其れを受け入れる。
それが納得出来様とも、出来無かろうとも、その事実は動かせない。
であれば自分は、そのを全て受け止めるまで。
なぜならば、自分はアムカムの女であり、ハワード・クラウドの妻なのだから!と。
しかし、それでも…………。
「ラヴィ、父様を守ってあげて……。スージィ、ハワードをお願い……!」
ソニアが、二人の娘の写真を胸に抱き、静かに、そして力強く祈りを籠めた。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
重い剣撃が上げる金属音が、森の中で木霊の様に響き渡る。
もうかれこれ数時間は、奴との攻防が続いている。
高位の魔獣の牙でさえ容易くは通さぬ鎧の、彼方此方が切り裂かれた。
魂を喰らうと言われる奴の『ディスペアブリンガー』は、我が鎧に確実に多くのダメージを与えていたのだ。
これだけの傷を貰うと、さすがに消耗している事を隠せはせんな。大きく肩で息をしていては、誤魔化し様も無い。
対してヴァンパイアは、多少の傷など付けた所で、見る間に消えて行く。
何度か致命的なダメージは与えた筈だが、結果はやはり同じだ。直ぐに元に戻る。
全く、部が悪いにも程がある!思わず苦笑が漏れた。
兎に角、体力と魔力の消耗が激しい。最早、じり貧である事に変わりは無い。
此奴は、力を出し惜しみしてどうにか出来る程、甘い相手では無い。
ならば取るべき道はたった一つ。持てる力全てを出し切って挑むまで!
ワシの取って置きを、喰らわせてくれる!
制御珠を持たぬ我が鎧は、装備者の魔力を押え込む事無く使用出来る。
慣れぬ者では、たちまち魔力を枯渇させるだけだが、コツさえ掴めば力の出し入れは自在だ。
大きな技を振う祭には、一時的に鎧に貯留している魔力を使い、これを放つ。
でなければ技を出す度、装備者の魔力を際限なく消費してしまうからだ。
『
だが『三ノ撃』は、貯留魔力だけに止まらず、装備者の魔力をも大きく削る一撃だ。
それは己が身を喰らい放つ、滅殺の諸刃の剣。
フフ、まさかな。
生涯の最後に、これ程の敵と出会うとは……。
人生とは誠に判らぬ物だ。
だが、後を託す者が居ると思うと、憂う事無く先へと足を運べる。
あの子が居てくれれば、何の心配があろうものか!
……すまんソニア。今回は、ちと帰れそうにも無い。
ヴァンパイアは相変わらず、牙を剥き出しに口角を上げ、巧みに魔剣を操って来る。
その剣筋を捌きながら、ワシは静かに魔力を高め、鎧に注ぐ。
我が鎧『アルティメット・ウロボロス』は、魔獣の革と魔鋼を重ね合せた三層構造から成る魔装鎧だ。
その三層全て其々に、強化魔法印が刻み付けられている。
今、二層までの魔法印に魔力を籠め挑んでいるが、こ奴相手ではまだ足りん。
だが、三層全ての魔法印を解放すれば、飛躍的な戦闘力の向上は望めるが、その代償として魔力の消費量は、それまでの比では無くなる。
自身で制御は出来るとは言え、これは他の者達の鎧の制御珠を砕くのとほゞ同義だ。
そして此れは、『三ノ撃』を放つ魔力を補う為には必要な
ワシは躊躇う事無く、三つ目の魔法印への経路を開く。
二重だった魔法印の光が三重となり輝きを増す。
瞬時に敵の目前へ踏み込み、渾身の一撃を振り降ろした。
奴はそれを咄嗟に魔剣で受けるが、その足元は一撃の重さに耐えきれず、大地を穿ち、地を窪ませた。
続けざまに剣を打ち込むが、奴もそれを巧みに捌いていく。
ワシの斬り上げた剣で、奴の左の二の腕を斬り飛ばすが、それは瞬時に繋がり修復する。
次の瞬間には、奴の刃が脇腹に食込む。
ニヤリと口角を上げる奴の腹を蹴り飛ばし、距離を開けるが、直ぐ様、地を踏み砕く勢いで間を詰め、追いの一撃を叩き込んだ。
更に何合か斬り結んだ末、我が身に振り降ろされた刃を上方へと弾き飛ばした。
その僅かに開いた胸元の隙に、全霊を傾け踏み込む。
そして、凝縮された己の魔力全てを、その一点に向かい一気に放つ。
『イレイザーブリット』
装備の肩口から伸びる3本の魔力ラインが、瞬間的にグランドデバイダに収束され、爆発的に放たれる。
これを放てば、最早ワシは只の絞りカスに等しい。
外せばそれまで。
耐えられても次は無い。
正しく此れは背水の一撃だ。
「さらば妻よ、
我が生涯最後にして、最大の一撃を喰らうが良い!
――――――――――――――――――――
次回「スージィ・クラウドの胸騒ぎ」
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