第11話エピローグ スージィ大いに慌てる
「お腹減ったなぁ……」
つい心情が零れてしまう。
今は、オーク集落のあった窪地を背にして進んでいた。
川で身体を清めようと、西に向かっているのだ。
因みに、先ほど下着は付けた。
不用意に女の匂いを放って、オークを誘い込んだ事に、少しばかり反省をした様だ。
「それにしても、ココって森の端から、もう10キロも無いよな……。人里からこの程度の距離に、こんな危険なコロニーがあるってヤバくね?……もう少し、この近辺見回ってから、人里へ出た方が良いかもね……ウン」
なにやら、言い訳じみた事を考え始めた様だ。
「あぁ、でも食糧確保は憂鬱な問題だよなぁ……。そ言えばあの汚物共、上手いコト捌いてたな……。何の動物かはよく分んなかったけど、なんか鹿っぽかったり猪ぽかったり……。魚もあったな……、いや!いらないけどね!汚物の手による物なんか絶対に食わないけどさっ!……ン?イヤまてっ!?サカナっ?!魚があったか!魚なら解体しなくて良いんじゃね!?そうだよ!なんで今まで気が付かなかった?魚ならそのまま焼けば良いんじゃん!なんてこったい!ずっと水辺で過ごしてたのに何故今まで気付かない?!オレってマヌケ?!大マヌケ!!川に急がねば!!魚採るぞ!川魚だ!塩が欲しいかもだけどそのままでもイイや!サカナだっ!焼き魚パーティーだっっ!イヤッフゥッ!!」
思わず喜び勇んで走り出そうした時……。瞬時に右腕を上げ、握っていた剣を背中側へ廻し、ガキンッと高速で飛来した何かを剣で斬り弾いた。
「うえぇ、またぁ?」
『ブレッドビートル』だった。
「何で又来んねん!?」
エセ関西弁が胡散臭い。
「まっさか昨日の仕返しって事?仲間連れてお礼参りとか、一体どこのヤク〇屋さんよっ!?よくまぁ見つけて来たなっ!?ストーカーかっ!女の子に嫌われるからねっっ!?うわぁコレ500超えてね?」
そんな、愚痴とも悲鳴ともつかない叫びを上げながら、次々と飛来するビートルを斬り落として行った。
ブレッドビートルの初速は500m/sを上回る。
連続で、音速を超えた破裂音を響かせ、マシンガンが弾丸をばら撒く様に飛来する。
それを逆手に持った剣で、キンキンと金属音を響かせ、ブレードの残像を残しながら次々斬り弾く。
「また、つまらぬ物を切ってしまっ……ぢゃなくてっ!ホンットキリ無いわコレ!!!早く魚取りに行きたいのにさっ!!クッソ!またスキルでブッ飛ばし……」
いや。待て……と思いとどまった。
もうココは、人里から10キロと離れていない場所だ。
そんな所で派手なスキルぶっ放し、広範囲の森林に大ダメージを与えたら?
今居る数は、昨日より遥かに多い500超えだ。
全部一度で殲滅するとなれば、威力は昨日の比では無い。
(ヤヴァイ!!今スキルを使う訳にはいかねぇ!!)
先ほど、オークの集落を焼き尽くして来たばかりの筈だが、オークに対してはカウントを取らないらしい。
「うぁーーっめんどくせっ!全部落とさなきゃいけないのね!?何この作業?この苦行?……まぁやりますけどさっ!やりますけどねっ!!……いや?まてよ。コッチの使えば良いんじゃね?」
やはりスキルを使う事にした。
「無駄無駄無駄ぁ!」
《ザ・ワールド・オブ・フィアー》
エンチャントチャネラーのスキル。
自分を中心に、広範囲に渡り自分より弱い敵に恐怖を植え込み、逃げるように仕向けるスキル。
周りの空気が変わった。
一瞬で凍りついた。
恐怖が瞬く間にスージィから溢れ出す。
まるで闇のオーラが、その身体から噴き出す様に、急激に、広範囲に広がって行く。
ザワァッ……と森が揺れた。
猛烈な勢いで、生き物と云う生き物が、スージィの周りから全力で逃げ出し始めた。
「わははははははははは!見たか!ワタシだってなぁ!こうやって平和的解決出来るんだよ!自然破壊も行わず見事敵を撃退して見せたぞっ!わはははははh……あ、あれ?ちょ、ちょっと!逃げすぎぢゃね!?逃げすぎでしょアンタらっ?!5キロ以上先のMobも逃げてるってどゆことぉーっ?!うぇえええ?!ヤッバイってぇ!!あひィィィ!溢れちゃう!森から溢れ出ちゃうぅぅ!!でちゃうよぉぉぉ!!!」
何故か最後の方の言い回しが、妙に卑猥になっている気がするが、本人大慌てである。
このままだと、人里へMobが大量に雪崩れ込む。
ちょっとしたスタンピートを起こした様になってしまう!!
犠牲者だって出るかもしれない!
コレは……、不味いぃぃ!!
スージィは、大慌てでMobを殲滅し尽くすべく、南へ向かって全力で走り出した。
「うひぃ~~~ん!サカナァーーーっっ!」
泣きながら走った。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
やっと序章終了でございます^_^;
色々ポンコツな主人公ですが、この後もお付き合い頂けると幸いでございます。
やっと次回から人里です!
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