第7話スージィ白い山脈を越える

 標高は既に8,000メートルを超えていた。

 しかし、装備は相変わらず、白い毛皮のコート一枚で済んでいる。


(エベレストって、気温マイナス30とかなんだよな?酸素マスクなんかも必要なんだろけどホントは……。エベレスト並みの標高で、この軽装備!登山家が聞いたら『ふざけんな!』と怒られそうだけど、夢だしね!安定の夢クオリティだしねっ!!)


 楽でいいよねぇ!……とか考えていた。



「しかし……、山頂に近づくほど、出て来るMobが大きくなっている気がするなぁ」


 門番が居た場所からここまで、結構な数のMobを屠って来た。

 今の装備はレベルをAから更に落とし、D装備にしている。



 D装備は、白いハーフプレートアーマーだ。


喉当て、肩当、胴当て、脛当てやガントレットを白いプレートであしらい、腰の草摺りの下は、厚手の皮で作られた膝上スカートで、動くと覗く白い太腿が眩しい。


胸元も開いて、中の双丘を際どく覗かせている。


 武器はジェネレーションソードと呼ばれる片手剣。

 何時もの様に、二本の剣を左右に一本ずつ持っていた。


  肉厚のブレードに太い握り、大きな十字鍔は両端が棘の様に前方に突出し、細かなレリーフが、細密に彫り込まれている。

 最初に持っていた、禍々しいデザインのGゼロの剣と比べると、騎士っぽい精錬されたシンプルな見た目だ。

 この白いハーフプレートと併せて持つと、何気に「聖騎士っぽくね?」とか思っていたりする。


「武器のランクをDまで落としたら、爆ぜる事はなくなったけど……、やっぱ一撃で終るんだよな!さっきの『フロスト・ドラゴン』も、でかかった割に簡単に首落ちたし……。その前に居た『フロスト・ジャイアント』?お台場で見たアレと同じ位だったから、18メートルってトコなのかな?でも、ヤツも唐竹でサクっと真っ二つだったしなぁ……」


 トンットンと右手に持った剣の腹を、肩叩きの様に使って右肩を叩きながら、誰ともなく呟いている。


「やっぱりココも真っ青だもんなぁ、下よりは強いんだろうけど……。もう、違いがワカランですよ!」


 山肌を進みながら、諦めた様に独り語ちた。


 山頂はもう目の前だ。

 スージィの身体能力なら、一跳びで到達できるだろう。

 頂に達する前に、足を止め後ろを振り返り9,000メートル超えの標高から下界を眺めてみた。


「やっぱここまで高いと地平線丸いなぁ……。すっごいねぇ絶景なんてもんじゃない!夢でなきゃ辿り着けない……見られない景色だよ」


 眼下に広がる山脈やまなみの先には、一昨日まで居た森が広がっていた。

 やはり相当に広大だ。

 南の遥か彼方まで続いているのが見て取れる。

 地平線まで雲海で霞み、森の終わりも朧にしか確認できない。

 だが、森の遥か先には、人が住めるであろう平地があるのが辛うじて分った。


 この広大な森林も所々に虫食いの様に樹木が窪み、空いている様な部分があるのが見て取れる。

 恐らく湖とか湿地でもあるのだろう。

 この距離から判るのだから相当大きい湖だな……等と見ながら考えた。

 他にも、巨大な切り株の様な岩が、所々に立っている。その周りには緑が少ないので、そこは荒れ地になっているのかもしれない。

 だが、森はそれらを点の様に飲み込み、遥かに広く遠大に広がっている。


 ここから西である右手には、この山脈と森林が切れる事無く遥か彼方まで続いていた。

 その右手には森を裂く様、一本の河が南へと続いているのが見て取れた。

 この距離でもハッキリ河と判るのだから、相当な大河なのだろう。


 東である左手の方向では、森の終わりも確認出来た。

 100キロは先だろうか、海が広がっているのが分る。

 その上には、積乱雲も確認できる。海から雲が立ち上がっているのが見えた。


 ほぉぉ……っと深い溜息を付きながら、暫しこの霞広がる鮮やかな絶景の中に身を置き、その世界に見惚れていた。



「……さて」


 どれ程の時間佇んで居たのだろうか。

 眼下に広がる世界から目を外し、その身を山側へ向けるとスッと目を細めた。


「居るよな……、やっぱ向こう側に」


 そのままドンッと山肌を抉り、一気に山の頂にまで跳躍した。

 頂に到達すると、直ぐにその眼下へと視線を向ける。

 そこに広がるのは、山脈の背後の白い世界。

 命の息吹溢れる背後の広大な世界とは真逆の、生命の痕跡すら感じぬ程に澄み切り、閉ざされた純粋に白だけの世界。


「……凄いね、まるでこの山脈を衝立代わりにして、何かを隠してるみたいだ」



 標高9,000を越え、遥か東西に延々と連なる遠大なる山脈のその裏側。

 その奥にあったのは、すり鉢状になった、巨大なカルデラの外輪山だった。


 此処からカルデラの縁の尾根まで、距離は10キロ程だ。

 カルデラ外周の直径はその倍はある、およそ20キロを優に超えているだろう。


 その外輪山の向こう側にも、こちらと同高度の山々が聳えていた。

 東にも西にも。

 まるでこのカルデラを覆い隠す様に。


 そしてそのカルデラの、そのすり鉢状に窪んだ中心に……。



「……あそこに居る」


 スージィは腕を組み、その中央部を見下ろしながら呟いた。


「ココまで来たんだ、見に行かないって選択肢は無いよな……。レイドって可能性高いけど、手を出さなきゃ平気……って、それはゲームだったからか?どっちにしても、目視できるトコまで行かないとな!折角此処まで来たんだし……。ヤバげなら、即逃げって方向で!!」


 最後の確認をする様に、独りささめく。



「途中、それなりにMobもいるしね、サクッと行っちゃおか!」


 トンっと山頂を蹴って、空中に躍り出た。

 そのまま、雪の急斜面を足裏だけで、スキーの様に器用に滑り降りて行く。


 山のこちら側、今、目の前に広がるのは、雪と岩肌しか無い単色の白い世界だ。

 そこを滑り、跳び進んで行った。


 と、前方の雪がボコボコっと、モグラの通り道の様な盛り上がりを起こし、此方へ何かが向かって来る。

 直後、長く白い巨大な生き物が、雪を突き破って勢いよく跳び出して来た。


 『ポーラー・ワーム』。太さ1メートル、全長30メートルを超える巨大なミミズの様な生物だ。

 その先端には、クワガタの様な、鋭く巨大な大顎が付いている。


 ポーラー・ワームが大顎を大きく開き、スージィを食い千切ろうと真っ直ぐに突っ込んで来た。


 スージィは接触直前、トンっと前方へ跳び、そのまま体を横へ倒し捻り、コマの様に回転した。

 その手に持ったブレードが、ポーラー・ワームの身体を縦に裂く。


 白い巨体が勢いをそのままに、青い体液を飛び散らせながら左右に分かれ、白い大地に沈んでゆく。


 スージィは着地すると、そのまま何事も無かったかの様に、更に走り続けた。



「む、今度は群れ?『グレート・ホワイトハウンド』と『ホワイトフェンリル』コレがボスだな」


 一体の大きさは7~8メートル、ボスの体長は更に倍近くある。

 その群れが8頭ほど、ボスを中心にスージィを囲う様に回り込んで来た。


(ナントカ姫が乗ってそうだよね。突っ込んで来る迫力がサイとかカバみたい)


 ハァァッっと気を溜め跳躍した。

 広げた腕を軸に、伸ばした身体を前方へ回転させ、綺麗な弧を描きながら後方に位置するフェンリルへと向け飛んで行く。





 スージィの素早い跳躍に、一瞬獲物を見失ったフェンリルは目を見張るが、直ぐにそいつが上方から向かってくる事に気が付いた。


 向こうからやって来るなら丁度良い、間合いを合わせ飛び上がり、直に牙で捕らえてやろう。

 フェンリルはそう考え、タイミングを合わせ地を蹴り牙を剥き出した。


 スージィはその牙を難なく躱すと、その鼻梁を踏み付け、そのまま後方へ着地した。

 鼻面を踏み付けられたフェンリルは、そのまま真下へ顎から地上へ叩き付けられた。


 一方、獲物を逃した群れは慌てて、後方のフェンリルに向けて踵を返す。


 スージィはフェンリルの後ろから絶妙な位置取りをし、前方へ向けスキルを放つ為に構えを取る。

 脚を軽く前後に開き腰を落とし、両手を突出して切っ先を標的に向けた。


「刻むぞ!ビィーーートッッ!!!」


《インパルス・バースト》

 『デュエルバーバリアン』のスキル。

 剣気を自分の正面へ撃ち出し、広範囲の敵を攻撃する近接範囲攻撃スキルだ。


 ガッ!と空間を切り開く様に、前方に突き出した両手の剣を、一気に水平に後方まで切り開いた。

 開いた剣先から広がった衝撃波が、フェンリルとホワイトハウンドの群れを切り刻み、全てを一瞬で肉片に変えた。

 スージィは、血肉が飛び散る白い雪原を一瞥すると、そのまま直ぐに走り出す。


 その後も、幾つかのトカゲや虫の様なMobと接触したが、殆どすれ違い様に処理して行った。

 やがて、5分も走った所で外輪山の麓まで辿り着き、そのまま尾根まで一気に駆け上がった。


「この内側はアレ以外Mobは居ないな……。今度はちゃんと準備整えてから行かないとね」


 そう言うと、装備をDからGゼロへ切り替えた。


 暗緑色の重装甲に薄紅色のマント。

 両手に放電する武骨な剣を握り持つ。


 そのまま自己エンチャントをし、自ら能力の底上げを始めた。


「最高級回復剤も十分、フェニックスの滴も100以上あるし、いざと云う時の緊急離脱スクロールもダイジブ!うむ!おやつは500円まで!バナナはおやつに入りません!帰って来るまでが遠征です!ヨシ、行こう!!」


 一気に尾根を飛び降り、白いカルデラの中心に向かって走り出す。


 殆ど崖の様なカルデラの内側を、跳び、走り、降りて行く。

 雪煙を上げながら駆け降りて行くと、やがてソレを目視する事が出来た。


(……こっちを見てるよな?、やっぱアレはオブジェじゃ無い。間違いなく山の向こうからも、オレに気付いてた)



 タゲる事が可能になって、初めて名前が確認出来た。


(『コキュートスドラゴン・カイーナ』?うわぁ、もう他にも何体か居ますよ!的な?色は……黄色かぁ、レベルにしたら100前後ってとこ?微妙だぁーー。普通のMobなら行けるかなぁ?……いや!無いわ!コイツいかにもボスとかレイドだもんなーー。レイドなら薄青でも負けるよね?オレ!!やっぱ記念に一撃入れて逃げ帰るパターンかな?……にしても、でっかいなぁ)


 距離はもう100メートル程まで詰めているが、その大きさが良くわかる。


(スーパーサウルスとか、こんな感じだったんだろか?)


 全長はおよそ4~50メートル。

 首長竜の様に首は長く、四肢は象やサイの様に太く力強い。


 その全身は雪のように白く、氷かクリスタルの様な鱗で覆われ、光により紺瑠璃こんるりの影を落としている。

 背に生える二対の翼。合わせて四枚ある蝙蝠の羽の様な飛膜は、薄く青味がかっている。

 頭部からは白くヤギの様に太い角が捻じれながら、後方へ長く伸びていた。

 その顔には、髭の様に無数の棘が、氷柱つららの如く輝きながら林立していた。




 50メートル程の距離まで近づいたところで、警戒ポイントを探るようにユックリ進んだ。

 眠るように地に伏しているが、薄く目を開けスージィを覗っているのが分る。


 40メートルで鼻から息を吹出す。


 30メートルで顎をこちらへ向ける。


 20メートルの距離で地に付けていた顎を上げ、コチラに顔を向け金色の目を開き見つめて来た。


(……此処か、このラインがバトルポイントね)


 地を揺らす様な唸りが、地響きの様に辺りに響き渡っている。恐らくこのドラゴンからの物だ。


『力を持つ人の子よ、我が面前めんぜんに立つに相応しき強者よ』


(うおっ喋ってきた!?会話通じる系?)


『我が試練に耐え、その力を示せ』


 そう言うとユックリ立ち上がりながら、顔をそらす様に上へ向け、喉元が膨らむのが分った。


「!!!??ヤバッッ!!」


 咄嗟に二刀から盾へと装備し直す。

 左腕に大形の盾が現れた。


「なんとぉぉ!」


《フレッジ・オブ・ガーディアン》

 盾職『センチネルナイト』のスキル。

 盾の防御力を2,000上昇、魔法及び物理防御を250%上昇、回避率及び速度を80%上昇させる盾防御特化のスキルだ。


 左手に持った、縦長のカイトシールドに似たその巨大な盾を振り上げ、その鋭角になっている下部を、ガツンと地に勢いよく突き立てた。


 直後、激しく白い光の奔流が走り迫る。

 ドラゴンの強力なブレスが、周りの雪原を削って行った。

 しかしスージィには盾に阻まれ届かない。


「またも問答無用っすか!?今度こそは会話できるかとチョと期待したのにぃ!!」

(!?ダメージが無い?牽制か?様子見か?)


 白い光が途切れた。

 スージィはその間を逃さない。

 剣を持ったままの右拳を、ドラゴンに向け突き出し叫んだ。


「やあぁぁっっっっって、やるぜっっっっ!!!」


《マジック・ブレイク》

 魔法攻撃職『アークウィザード』のスキル。

 対象の魔法防御を破壊し、魔力ダメージも与える。

 魔法職初手の鉄板スキルだ。


 ガラスが砕ける様な破壊音が、雪原に響き渡った。

 ドラゴンの周りで、千切れた蜘蛛の巣の様な魔方陣が現れ、そのまま空間に融けて消えて行く。


『がはあぁぁっ!?』


 ドラゴンが仰け反り、背面の白い鱗が、氷の欠片の様に煌めきながら飛び散るのが見えた。

 そのままドラゴンはユックリと大地を響かせ、雪煙を上げ雪原に倒れ込む。


「え?!あ、あれ?な、なんで?なんで?え?倒れた??」


 ドラゴンが簡単に倒れた事に、思わず動揺してしまう。


 と、ズ、ズズッとドラゴンが首と顎を持ち上げ、四肢を立ち上げて身体を持ち上げた。


『……ぬ、むぅ……ん』


「フ、フェイントかよっ!?だ、だよなぁ、ンな簡単なワケないもんなぁ」


 身体から抜けかかった力を、再び入れ直した。


「な、なら次はコイツでどうだ?!」

(杖に持ち替えてないけど、様子見だから良いか!……コレ撃ったら一旦逃げよ!!)


 右手を高く上げた後、勢いよく振り下ろしながら叫んだ。


「喰らいっっっっっ!やがれぇぇっっっっっ!!!!」


《マーズ・インフェルノ》

『アークウィザード』の高位炎撃スキル。

 超高密度に圧縮された数万度に達する高熱の炎を、一気に解放する。

 炎属性最高攻撃力を持つ魔法スキルだ。




 一瞬だった。



 ドラゴンの頭上、数メートル上の空間に、小さな太陽の様な輝きが現れた一瞬後。


 ドラゴン共々大地が溶解した。

 気圧の低い高地で起きた超高圧の爆散は、尋常では無い破壊力を生んだ。


 解放された高密度の炎から発生したプラズマは、気圧の低さから更に巨大化し大地を削る。

 破壊的な爆風は、雪も大地も塵のように吹き飛ばした。

 外輪山の尾根は殆どが擦り削られ、外縁の山脈も崩れ、飛び散って行く。

 雲は大気ごと吹き飛ばされ、暴風は地上を這い、広範囲で樹木が薙ぎ倒されて行った。


 踏みしめるべき大地を一瞬で失ったスージィは、爆風になす術も無く飲み込まれ、木っ端の様に吹き飛ばされた。


「どぅうあぉ!?ベッ!ぶはぁっ!ぐぉはっぉ?!いっでえぇぁぁぁぁ!!ぶべばっっ!!!」


 大地に打ち付けられ、飛ばされ、更に地を抉って吹き飛ぶ。


 その身で大地を抉り飛ばしながら、外縁の山脈まで吹き飛んだ。

 山肌に減り込見ながらも勢いが殺せず、そのまま山頂まで削り上げられ山脈の外側へ放り出された。


「ずンべらぼぉっ!あぃだっっ!!がッはぁっっ?!!あだだっっ!!」


 山肌をゴロゴロと飛び出た岩などに当たり、飛び跳ねながら4~500メートル転がり落ちて行く。


「おぉぉぉっごっ!ぼぉぉ!?おっぉぉ!!いたぁっいででっっ!!!ぼへぇっ!?おぅおぉぉぉっっ!」


 最後に大きな巨岩にぶち当たり、岩にヒビを入れながら漸く止まった。


「ぐばぉぅぶぁっっ!」


 パタリ……と、そのまま尻を上に突き出した形で、山頂方向を頭に、その場に俯せに倒れた。

 轟々と、未だ爆心地から拡散する強風が吹き続けている。


(何が……、何が起きたというの……?!)


 やがて麓へ向かう風が収まり、今度は逆に揺り返しで、爆心地へ戻る風が吹き始めた。

 スージィの身体を覆っていたマントが煽られ、捲れ返って頭に被さり臀部が露わになった。


 『頭隠して尻隠さずの図』


 暫し、そのままの状態が続いたが……。


「だぁーーーーーーっっ!どっせぇーーいっ!コンチクショーーー!!」


 マントを払い除け、勢いよく立ち上がった。



「一体、どーーなったんだ!?ってんだーよ!!!」


 その場で周りを見回し、軽く顔を引きつらせてしまう。


「ぉを、こ……、こりわ……?」


 殆どの雪が吹き飛ばされ、白かった山肌が剥き出しの岩肌になり、傷跡の様な跡が幾筋も山頂から広がり下まで続いていた。


「内側は……、ど、どうなっちゃって……るんだろ、か?」


 背中に嫌な汗がダラダラと流れるのを感じながら、山頂に向かって跳躍した。

 やがて、直ぐに山頂の峰に辿り着くが……。


「こ、これ……、山脈の形変わって……る?」


 全身に盛大に汗が流れ落ちて行く。


「初めてココを見た時とダイブ違う?峰の凹凸が随分少なくなってる気がしる……よ?一番高かった頂ってどれだっけ?な、無くなってる……の、かな?かな?!」


 山脈の内側にあったはずの外輪山は、殆ど跡しか残っていない。

 雪は綺麗に消えていた。

 それどころかカルデラは大きく抉れ黒く溶け、所々、未だに赤くマグマの様に燻っている所さえあった。


 壮絶な自然破壊である。

 『世界遺産破壊者』の称号が付きそうだ。

 盛大に顔の血の気を引かせながら、ユックリと後ろを振り返り、麓の有り様を確認した。


 此処から、随分遠くまで雲海が無くなっている。

 大気の不純物も無くなっているのだろう、下界の見晴らしが異常に良い。

 雲海の縁が、ここを中心に綺麗に円形になっている気がするのは気のせいだろうか?


 雪の白さが、山頂から数キロ先まで無くなっている。

 樹木が2~30キロに渡り、山頂から放射線状に広がるように薙ぎ倒されていた。


「ツ、ツングースの大爆発かっ!?い、いや、あれは東京都と同じ位の面積で被害があったって話しだから……、こ、これはセーフだ。ウン!セーフッ!!」


 アウトだアウト!

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