第3話スージィ検証を始める
「う~むうむうむ!どうしたもんだろ!?」
眉間を寄せ、むぅ と口をへの字に曲げて、悩ましげに呟いた。
今は水辺の大きな岩の上に座っている。
岩の上でガッツリと大股を開き、左手は左の腿の付け根に置き肘を張る。
右膝に右肘を乗せ掌に顎を乗せていた。
年頃の娘さんがする佇まいにしては、中々にオッサン臭い。
まぁ、中の人は32歳のオッサンだが。
「スキルコンボ試すとか言っても、全部最初に爆ぜちゃうから続かないしなぁ……」
スキルを試し撃ちしているウチに、判った事がある。
今使っているエンチャンター職のスキルだけでは無く、サブ職は勿論、同じアカウントで作った別のキャラのスキルまで使えるのだ。
「これってチート過ぎんだろ!」
つまり、自己強化可能な上、タンカーの硬さ、耐久力を持ったまま、アタッカーの攻撃力、魔法の砲台にもなって、自力回復も可能という。
「ま・さ・に!夢の仕様!!まぁ夢だからねっっ!!!!」
因みに、調子に乗ってスキルの試し撃ちを重ねた結果、森が広範囲で酷い状態になっていた。
木々は薙ぎ倒され砕け、殆どの物は炭化どころか灰になり、風に巻かれて消失していた。
地面のあちこちには大穴が開き、抉れた地面はクレーターの様で、その底には溶けた大地が溶岩となり、グツグツと未だ沸騰している。
また、吹き飛ばされた土砂や岩石が積み上がり、新たな小山があちらこちに生まれていた。
窪んだり盛り上がったり燃えたり融けたりと、一体どこの戦場?或いは地獄?!と云う有様。
実に、実に大変な自然破壊行為である!
そんな地獄の景観を他所に、自身のレーダー範囲も把握していた。
それは、およそ半径10キロほどの範囲が認識できる事が分かった。
今現在、5キロ四方にMobの反応は無い。
完全に枯れている。
デスゾーンである。
そして、そんな背面の地獄の様な有り様とは打って変わり、目の前に広がるのは、とても長閑な癒し空間だ。
鬱蒼とした森の中で、そこだけ別世界のように水の音が響き渡っていた。
周りから切り取られた様なその場所では滝が落ちている。
落差は10メートル程、滝幅は20メートル程だろうか、数メートル突き出した岩から水が落ちている為、滝の裏側には空間がある。
落ちる水はシルクのカーテンの様だ。
滝の裏側の空間は人も十分通れる広さがある。
滝の上に茂る広葉樹の葉の間から差し込む陽の光が、滝の表面と裏から当たる乱反射で、滝の水そのものが淡い光を放っているようにも見える。
水のカーテンが落ち込む滝壺は、白く泡立ち飛沫を舞わせていた。
水量が左程多くは無い為か、深さは人の膝上ほどだ。
それでも水はエメラルドグリーンに輝き、水底にライティングが施されているが如く、煌めき輝いていた。
水場は20メートル四方に広がり、そのまま川幅が狭まりながらゆっくりと下流へ流れていた。
滝の音、川のせせらぎ、風に揺れ擦れる木の葉のざわめき、時折聞こえる野鳥の声。
マイナスイオン天国の癒しの空間である。
スージィは、その清涼なキラキラと瞬いては揺れる水面をみながら……。
「『パッシブスキル』も効いてるのは判るんだよねぇ……全職分!ステータス画面見られないけど、どんなことになってんだろ?夢とはいえちょとコワイわ……」
一筋タラリと汗が垂れる。
「一撃で飛び散っちゃうのはどうにかしたいなぁ、予備の装備でもあればちっとは……?あ、インベントリ使えるな……」
意識すると、インベントリ内の持ち物がイメージとして浮かび上がってきた。
「うおっ!多い?!!これも全キャラ分かぁ……、予備装備あったかなぁ……あれ?倉庫?倉庫も使える?!まぁ倉庫NPCがその辺に居るとは思えないけど……いいのか?あ、ギルド倉庫もある?そかスージィはギルマスだったな。にしても、夢チートっパないっすわ!」
倉庫の収納を増やす為の、倉庫用個人運営ギルドの分まである事が分った。
「ギルド倉庫が使えるなら、育成用の装備が引っ張り出せるな……」
「ふむ?一旦インベントリへ移さないと装備できないか……をぉ!!水着はけんっ!!」
そう嬉しげに小さく叫ぶと、岩から立ち上がり水辺に飛び降りて、そのまま水鏡に映る自分の姿を見下ろした。
フルアーマーで武装された姿が、カシャリと画面でも切り替わった様に、一瞬で白いワンピースの水着姿になった。
胸の谷間が強調され背中も大きく露出し、Vゾーンの角度も中々際どい。
「をを!やっぱり一瞬でお着替え可能か!流石お便利夢仕様!……それにしても、これは中々……」
腰に手を当て、左右に身体を捻じらせながら水鏡に映る自分の姿に、ほぉぉと感動した様な溜息を洩らしていた。
「ふむふむ!さて、コッチはどうかな?」
するとワンピースの水着が、白のマイクロビキニへとやはり一瞬で変わった。
「おぉぅ!これも結構な凶悪さがありますな!」
と、嬉しそうに胸の下で腕を組んだり、頭の後ろに手を回したりとグラビア的なポーズを色々してみる。
「やはり女キャラ使ってるうま味ってコレだよなー!自分で好きな衣装着せて好きな恰好させられる!夢よありがとぅぅ!!」
なにやらとても満足気だ。
「あぁぁっ!もしかしてっっ!?」
ハッと何かに気が付いた様に顔を上げた。
「これはひょっとして……イケルって事でしょか?!!」
フッと突然水着が消え、ブラとショーツだけの下着姿になった。
「やはり装備全部外すと下着になるか……、問題は、……ココからだ」
ゴクリと唾を飲み込んだ。
身に付けているのは、タンクトップの様なスポーツタイプのブラだ。
シャツを脱ぐように一気にブラを捲り上げると、ポロリと形の良い白い双丘が露わになった。
外したブラを近くの草の上に置く。
「やた!!脱げたっ!脱げましたよーー!!!」
全力の歓喜の声だ。
「いやーー夢のようだーー!夢でよかったーーーー!夢よーーありがとぉぉーーー!」
感極まった声を上げながら、両の掌で、何でも出来る二つの膨らみを包み込んだ。
所謂『手ブラ』と云うヤツだ。
「ンむむ……Bくらいはある、よね?……Cマイナス、とか?……いや!Cだな!Cにしよう!推定Cカップ!!」
などと、二度三度と手を動かしながら、思い込むように、言い聞かせる様に呟いた。
「ひんぬーキャラ選ばなくて良かった。ホント良かった!」
何かが溢れかけている様だ。
「……つ、次は……いよいよ最後の砦……」
そう言いながらショーツに指をかけ、一つ深く息を吸い込むと、カッ!と目を見開き、意を決した様に ズルリッ! と勢い良くその最後の砦を脱ぎ降ろした。
脱いだ後、手に持ったソレをマジマジと裏を表をと見入ってしまう。
だが直ぐに、ハッと我に返り 何やってんだ自分? と頬を僅かに染めながら、ソレを草地に置き改めて水辺まで足を進めた。
そのまま足首まで水の中に入った所で足元に目を落とし、水鏡に映る姿を確かめてみる。
「
何も遮るモノの無くなった体を、改めて眺めながら呟いた。
身体の線を探る様に、右に左に身を捻りながら自らの身体を水面に映し、それが我が身である事を確認して行った。
そのうちに、意識が自ずと下方に向いて行く。
ゴクリと思わず唾を飲み、頬も多少上気している様だ。
「……うむ、ココは男であれば探究せずには済ませられない領域……。見なかった事にして、通り過ぎる訳にはいかない!」
躊躇いがちだった手が意を決したように動き出す、そして………………。
◇
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◇
清流の静かなせせらぎと、優しげな野鳥の声が木々の間を響いて行く。
スージィは水辺に茂る草の上に力なく横たわり、全力疾走した直後の様に呼吸がとても荒く、頬も紅潮し、全身もひどく汗ばんでいた。
「…………ヤッベ、これヤッベ……これ、ヤッバイ……よ」
呼吸が乱れたまま、身体を横に向けて起き上がろうとするが、どうやら腕には力が入らない。諦めて仰向けになり、呼吸が整うのを待つ事にした。
鼓動を確かめる様に右手を心臓の上に置き、仰向けのまま空を見上げた。
「……女ってすンごいんだなぁ……」
何かしみじみと感慨深いとでも言いたげに呟いた。何が凄いのかは詳しく言えない。やがて呼吸も落ち着き、上下していた胸の動きもゆっくりと、そして穏やかになって来た。
「…………………」
落ち着いて来ると、また何やら意識がそちらに向いていく。
そちらに向くと、何かせずにはいられない物なのだろうか?またも何やら動きはじめる。そして…………。
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もう陽が頂上を越え、午後の日差しを帯びてきた。
「…………や、やばい。これはヤバイ……程々にしよう。程々にしないと、エ、エンドレス?に、なっちゃう……よ。……ヤッバいよ……。程々に……しよう…………ウン」
程々にやるらしい。
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