王女の部屋 後編
謎のパンティを手にしたカケルが、イヤラシイ微笑みを浮かべていたところ——
——ガチャ
部屋のドアが開く音がした。
「マズイ!」
カケルは慌てて部屋の中で走り始め、自分の姿を消した。
走っているにも関わらず、カケルの足音がまったく聞こえない。
流石は『
まるで
「ふう…… まったく、大変な事態になってしまいましたわ」
そう言いながら部屋に入ってきたのは……
壮絶美少女、王女様ではないか!
走りながらパンティを握りしめ、ガッツポーズを示すカケル。
このエロガキ、本当に困ったものだ……
王女の背後には、もう一つ人影があった。
「まったくもって、おっしゃる通りですわい」
この男は、先ほど『謁見の間』にいた、魔導士っぽいおじいさんだ。
「
王女の口から恐るべき言葉が
その表情は、先ほど謁見の間で見せた可愛らしい笑顔とは大違い。
眉の両端がつり上がり、まるでこの世の冷酷さをすべて集めてきたような、ひどく冷たい眼差しをしていた。
『こ、これは…… パンティを見つけて大ハシャギしている場合じゃないぞ』
カケルは心の中で叫んだ。
その通りだ。まずはパンティを手放せ。
「爺にお任せを。『宰相』の名にかけて、あの犯罪者を始末しますゆえ」
『このジジイも俺を殺すつもりなのか。なんだかヤバいことになってきたぞ。それに宰相っていったら、確か家臣の中で一番偉いんだろ? いや、そんなことより、なんで俺が犯罪者なんだよ。まったく、失礼な連中だな』
いや、ついさっき、お金とパンティを盗んだばかりじゃないか。
それはさて置き……
王女とじいさんは、カケルがこの部屋にいることに気づいていない。
それじゃあ、今のうちにさっさとズラかろう。
そう思い、カケルが小走りで部屋の出口へと向かったところ——
「やっと、あのグズ勇者たちを戦場に送って、一息ついたばかりだと言いますのに」
気になる話が、王女の口から飛び出した。
カケルは部屋から出るのを止め、再び室内でジョギングを始めた。
「まったくです。平和だの人権だのと訳のわからぬことをヌカすあのアマちゃんどもを、やっと戦争の道具に出来たのです。今日どこからともなく現れたあの犯罪者が、アマちゃん勇者どもに変な影響を与えることがあっては絶対になりませんですぞ」
『戦争の道具ってなんだ?』
カケルの頭の中は、今、混乱している。
「こうなったら、開戦の時期を早めるしかありませんわ」
「左様ですな。国王陛下は少し慎重になっておられますが、ここは姫様の言う通りかも知れませぬぞ」
コイツらは、本当に戦争をするつもりなのか?
「幸い、国王陛下はあの犯罪者からカンチョー…… もとい、肛門への攻撃をお受けになり、しばらく御公務を担われるのは難しいでしょう。ここは姫様が権力を握る、絶好の機会ですぞ!」
「そうね! 今こそ、わたくしの力を、この国中に知らしめて差し上げますわ!」
「その意気でございますぞ! この爺は、姫様がご幼少の折から、このお方こそ次の王に相応しいと思っておりましたゆえ。愚鈍な兄上様方になど、遅れをとってはなりません!」
「わかっておりますとも! わたくしが『召喚』スキルを使って、異世界から心卑しい者たちを迎え入れたのも、すべてはこの国を手に入れるため。サッサと勇者どもを使って、隣国もこの手に収めてしましょう!」
なんだかキナ臭い話になってきた。
黒幕は国王じゃなくて、王女とこのジジイだったようだ。
あまり聞いていて気持ちのいい話ではないのだが……
しかし、二人の会話はまだ続くようだ。
「それにしても、あのエロい男性勇者どもときたら。いつもわたくしのことをイヤラシイ目で見て、本当にキモチワルかったんですから」
「まったくです。それにあの者共め、戦場に行くのを渋りおって。いったいいつまで王宮に留まるつもりかと、イライラしましたわい。まったく、あの無駄飯食いどもめ」
「ホント、あのイヤラシイ年中発情男どもに、もう色目を使わなくていいと思うと、心の底から嬉しいわ」
『なんだよ! 俺のクラスメイトたちをエロいとかイヤラシイとか言っておきながら、結局、テメーが色目を使ってたんじゃネエか! ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ。お前みたいな性格ブス、こっちからお断りだよ。俺を含めてクラスの男子は全員、とても清らかな心を持ってるんだからな!』
カケルは心の中で叫んだ。
心の中で叫ぶのは勝手だが、パンティを握りしめて、そういうことを叫ぶのはやめて欲しい……
カケルの感情が爆発しそうになったそのとき——
——バタン!
不覚にも、カケルは鏡台の脚につまづいてしまい、おおいにスッ転んでしまった!
「な、何者です!」
「お、お前は先ほどの犯罪者ではないか!」
王女とじいさんが驚きの声を上げると——
「バーーーカ! ブーーース! クソじじい! 俺は絶対お前らになんか捕まらないからな!」
小学生のような捨て台詞を残し、カケルは全力で駆け出した。
ただ、カケルの右手には、いまだ王女のパンティがしっかりと握られていた……
先ほど一瞬だけ、カケルの右手に握られていたブツをその目で捉えた王女が、カケルの背中に向けて叫んだ。
「ちょ、ちょっと! わたくしのパンティ返しなさいよ! この変態!!!」
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