第5話

夜、コンビニに行った帰りのこと。


「そっか、僕にも相談共感してくれる人はいるんだ。一人じゃなかったんだ… 近いうち、また話したいな」

そう思った。




ピンコン!

メールをみた。

「ナノ!いつ再開するの?」

「ナノ、いいの?それで、」

「ナノ、ファンの人が待ってるよ?」





それはみんなのファンだよ、僕のファンじゃない。

そう呟いた。




「あの!」

後ろから女の子の声がした。

「え?」

「ナノさんですよね?」

「あ、はい」

そう言うと晴れ晴れとした顔で

「私、ナノさんのファンなんです!」

「え?僕の?」

「はい!いつも配信見てます!… でも、最近配信してませんもんね。すみません。最近アンチ多いですし、そのことですよね?」

「まぁ、そうだね。少しいい?」

「はい」

「相談なんだけど、僕、どうすればいい?みんなとの差を縮めたい。でも、縮まらない。」

「イイヤツラというチームに引っ張られてるからですよ。そりゃあの3人と比べるとファンだって少ないかもしれません。でも、それは思い込みもあると思います。」

「思い込み?」

「はい。イイヤツラの配信に来たらあの3人ばっかり褒められてるんですもん。そりゃ、この3人はすごいんだ。ナノはだめなんだ。とかで思い込みになってる人だってたくさんいると思います。グループだからこそできることはたくさんあると思いますが、ひとりでできることだってたくさんあると思います。」

「そっか、ごめんね、こんな変な相談に、でも、ありがとう。すごい支えになったよ。名前は?」

「野咲恋です。」

「恋ちゃんだね、わかった。必ず覚えとく。メールとか繋げちゃう?」

「いいんですか!?」

「うん」

そして、ファン、野咲恋とメールを繋げた。




数日後

「新しいチャンネルで、1からひとりでやろうと思う。」

そう、メールで恋ちゃんに送った。

「そうですか。いいと思います。新しいチャンネル。教えて下さい。」

「佐藤ちゃん、ねる」

「いいじゃないですか。一人称は僕ですか?」

「いや、私で行く。」

「そうですか。」

「本物の佐藤菜になる。」

「楽しみです。」





そして、新しい配信のこと。いつものつくり男声はやめて通常の女の子の声にする。

地声が高いことを武器に。女の子になりきる。変に男風で話すよりこれのほうが自然!





「どうもー 佐藤ちゃん、ねるの佐藤ちゃんでーす!」


かわいい!

暇だから来たけど、いいもん見たわ

ファンになる!

好きー!


「え?… こんなんで?」

そう呟いた。


うん!と、いうかこんなんじゃないしね!

めっちゃかわいいもん!

自己紹介してー!


「うん!現在継続中の人気配信グループの不人気枠の佐藤ちゃんです。」


そうなの?!

そんなかわいいのに?!

やばー!

まじか…


「うん。ちょっと前にそのグループにいた時のファンに相談して、こうなって、1から始めることにしました!」


へー、そのファンの子のおかげってこと?


「そうなるね。恋ちゃんありがとう!」


恋ちゃん?

可愛い子のファンは可愛い子なのかな?

私は可愛い子だと思う!

私も!



ピンコン!

「あ、メール」


だれだれー?

彼氏ー?

恋ちゃんとか?!


「恋ちゃんでした。」


あたったー!内容は?

気になる!


「個人情報なんで」


えー、まじかー!

聞きたかったけど、そうだよねー、



その時の、恋ちゃんからのメールは

「配信見てます。恥ずかしいこと言わないでください。嬉しかったです。女の子みたいな佐藤ちゃんもかわいいです」

と、来ていた。

「ありがとう。」

そう送り返した。



そして、

「それじゃあ今日の配信は終わりかなー、」


えー!次いつー?

また見たい!

楽しみに待ってるよ


「次か… あ!いいこと思いついた!」


なになにー?


「プロデューサーさんをつける!」


おぉー!

いいね!

誰にするの?恋ちゃん?


「まぁ、そうなるよねー 恋ちゃん?配信見てるー?お願いできるー?」


ピンコン!



え?メールの音、恋ちゃん?


「恋ちゃんだ。いいですよって!」


おぉー!

恋ちゃん、公式プロデューサー!


「恋ちゃん?出れる?コメ欄で出てきてくれる?」


え?出るのかな?

出てほしい!

恋です。

恋ちゃんだー!


「じゃあ、今度からは恋ちゃんのトイッターで色々報告してくれる?」


はい。

マジか~!

プロデューサーの恋ちゃん!


「それじゃあ、今日のところは終わりかなー。じゃあありがとう!バイバーイ!」



「ふぅ。配信終わった。」

その日の配信は久しぶりに楽しかった。

「コンビニいこ。」




恋ちゃんがいた。

「あ、プロデューサーさんじゃん!」

「これからよろしくおねがいします。あの、プロデューサーって何をすればいいのかわからないんですけど」

「えっと、とりあえず敬語やめて」

「あ、はい、あっ、わかった!」

「うん。したら、あとは私の言うとおりにトイッター更新してくれたらいいからね。」

「そっか。わかった」

「よし。じゃあよろしく!」

私は帰ろうと道を歩き始めた。

「あのっ!」

「なに?寂しい?」

「…」

「え?図星?」

「あの、私佐藤菜のことが好きです!」

「あ、うん。ありがとう」

「いや、違くて、いや、違くもないけど。恋愛です」



「え?…」

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