第4話

最近よくあの時の医者の声が蘇る。


僕が中学2年生の頃、僕の母親はうつ病で、精神科に通っていた。そして、母が医者を目の前にしてうつ病です。と、言われたときはほんとうに怖かった。父とは僕が10歳のときに離婚。だから、愚痴を聞くのは僕。理不尽なことで怒られるのも僕。だから色々辛くなったりして、僕も何もできなくなって、母親はうつ病が治ったら僕をほおってどっかに行く。それが怖くて、うつ病です。という医者の声すら怖くなった。


なのに、それが蘇る。いつも背筋がゾクゾクする。みんなはそれを知ってる。でも、そんな、無理、みんな離婚なんてしない親のもとで生まれ育ち、母親からの悪影響極まりない言葉。そんなすら聞いてない。僕はそんな言葉すら、聞きたくなくても聞こえてしまう。そして、逃げ場がない。僕の親は2人とも捨てられた落ちこぼれ。でも、その2人はいずれ優しい捨て子保護の方に拾ってもらって、愛たっぷりで育ててもらって、それに共感してくれる兄弟なんてたくさんいる。でも、僕は一人っ子だし、落ちこぼれの子供。もう、何もできない。

「落ちこぼれの子供は落ちこぼれ。どうあがいてもこの世界にいちゃだめな存在… そっか、もうだめなんだ…」





すると上から高い声が聞こえた。

「ねぇ、」

「え?」

「ふふっ こんにちは。あなたの姉の美樹」

「え?姉?僕一人っ子ですよ?」

「私ね、もう旦那さんも子供もいて幸せな日々を送ってるんだけど、弟のことはね、見捨てられないわ」

「だから、僕は一人っ子です!」

「さっき君、落ちこぼれの子供は落ちこぼれっていったでしょ 私はね、落ちこぼれが産んだ落ちこぼれなの。君みたいに本物の親にも育ててもらっていない。捨て子が子を捨てたのよ」

「え…?」

「ほら、もっと落ちこぼれがいたでしょ? 上には上がいるって考えるのもいいけど、それはいつか窮屈になるわよ 上には上がいる通り、下には下がいるし、たまには下を見て安心してもいいんじゃない?」

「でも、それは…」

「人間的に許せないよね なんか悪い感じするし。でも、あなたの周りはレベルが高いの。なのに、あなたの1番近くにはレベルが低い人しかいないの。だからそもそものスタート地点が違うの。」

「そっか… じゃあ仕方ない、」

「そう、無理して背伸びしなくていいの。背伸びしたところでほんとうに変わるか、そんなことはないでしょ?」

「確かに、ありがとう。ほんとうに僕の姉なんだね。それじゃあ。今日のことは感謝するよ。」

「そう。じゃあばいばい!」

「うん!」

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