はじめましてマオとユウ 中編①
俺は思わずユウを抱き抱え、狛犬たちから距離を取った。いや、これは流石にセクハラにはならないだろう。いきなり炎纏った牙とか爪とかが鋭い生き物を目の前にして動転してただけだから。全然、攻撃とかされてないけど、万が一ってこともあるわけで。一瞬、一瞬だけど抱き抱えたとき、あっいい匂いとか思ったけども、それはまー、とか、アヴェルにこの姿を見られた場合の回答を考えられるくらいには落ち着いていた。一応、身体能力を上げる効果の魔法を自分に掛けておく。また変化が起こった。社に飾られた宝玉の光が一段と増し、その宝玉が狛犬たちの元へと飛んで行った。二匹の狛犬たちは宝玉に向かって伏せの姿勢を取った。宝玉から発せられている光はやがて人の姿へと変わっていった。切れ長の目のイケメン。その姿はまさしくイフリート。おぉ。俺は思わず感嘆の声を発してしまった。やばいカッコいい。
狛犬たちとイフリートは何事か小声で喋り始めた。なに話してんだ?なんか日本がどうとか言ってる気がするけど。時折チラチラとこちらを見ているのが気になる。
「確かに。あの属性の匂いもある気がするな。エン、ジュ。援護しろ!」
そう言ったイフリートは炎を纏ったこぶしを構えて、俺に向かってきた。ちょっと待て。俺は思わず、イフリートを避ける為に空へ飛んだ。しかし、それを相手も読んでいたのか、狛犬たちが吐き出した火の玉が俺を襲う。俺は水の盾を魔法で展開して火の玉を弾く。斜めに弾いた火の玉は勢いよくドガンと音を立てて壁にぶつかった。遺跡全体が揺れ、落下してきた小石が頭や肩に当たる。おいおい。まずくないか?こんな地面の下でこの衝撃。下手したら落盤なんてことにもなるんじゃないのか?てか、この遺跡は自分ん家だろう。何考えてんだこいつら。ぐいぐいと上に羽織っているローブが引っ張られる。抱えているユウがこちらを見ている。こんな時にどうした?
「あの…転移すれば…」
なるほど。俺は五芒星を探すためキョロキョロと辺りを見回す。またグイグイと引っ張られる。ユウに視線を向ける。ユウは指を右に指している。そちらには五芒星があった。よし。俺は五芒星に向けて飛んだ。うぉ。俺の動きを察知したイフリートが目の前に飛んできた。思わず、後ろに下がる。そんな俺に向けてイフリートは右手から出した炎を近距離で放つ。俺は水の属性を球状に展開し、その炎から身を守った。俺はイフリートに叫ぶ。おい、あんたなんでこんなことするんだと。イフリートはそれを聞いて、
「お前が日本からやってきたからだ。日本からの奴は災いを招く。いらんことは考えんでいい。どうせすぐ無くなる命だ。」
そう言って、炎のこぶしを向けてきた。勘弁してくれ。バフ効果の魔法をあらかじめ掛けといてよかった。イフリートの攻撃はかわせるが流石にずっとはやってられない。俺は思いっきり風の呪文を俺とイフリートの間に展開する。イフリートを壁に飛ばすと俺は一目散に五芒星へと向かいそれに触れた。入った時と同様に、ぎゅんっ。と身体全体に重力がかかり俺とユウはそこから抜け出した。見覚えのある社。まったくなんだったのか。辺りを見回すと担任と幾人かの生徒が少し離れたところで集まっていた。俺はユウを下ろし、そちらへ行こうとユウを促した。ゴゴゴ…突然、地鳴りが響いた。俺たちのいる五芒星の描かれた地面と社が隆起し始める。いったいどうなったっていうんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます