はじめましてオンシュザ

図書館で虹色の光に包まれた俺。気付けば、シャボン玉の中の世界と言えばいいのか。視界はゆらゆらとした虹色に埋め尽くされ、自分の身体すら曖昧で不確かでただ精神だけがぷかぷかと浮いているような。そんな不思議な世界にいた。ゆらゆらと漂い、俺自身はその流れに身を任せるしかない。しばらくして上から声が聞こえてきた。


「やれやれ、私が……に旅立って、こんなにも……がかかるとは。想像もしなかったよ。」


ところどころ声が途切れて聞こえないが、それ以上に驚いたのは女性の声だということだった。老魔導士と聞いてイメージしたのは男だった。それが女性だったなんてな。


「想像はついてるだろうけど、私がオンシュザね。そっちの世界の魔法の概念を作った始祖的な存在。」


うーん。思ったよりフランクな人なんだな。なんだろ、この肩透かし感。普通、何を普通と言って良いのかは分からないが、お爺さんがフォフォフォっ的な?そんなんを期待していたんだがなー。


「どうやらその口ぶりでは私の声はとても君にとって意外な印象を受けているようだね?でも、それを望んだのは君さ。」


何を言っているんだ?なんでオンシュザの声が俺の望み通りの声?ちょっとよくわからない。俺は思わず聞いた。


「分からないのか。そうか。それならそれでいいじゃないか。その答えにいつ本当に気付くか。今の君の尺度では、それが一番かもしれないね。出来るだけ早く気付くといいね。だけど、その時に遅すぎると言って、その見つけた答えを見て見ぬ振りすることだけはやめなね。」


さっきからオンシュザはよくわからない話をしている。俺は、はぁ。と答えるしかなかった。俺が分かってない?一体何をだろうか。


「まぁ、それはどうでもいいんだけど。君がここに来た理由なんだけど、特にないんだわ。これが。」


俺は思わず驚きの表情と声を出してしまった。えっ?理由ないの?ファンタジー世界に来たんだけど俺。そんなことを考えているとやがて虹色の光がまた強くなって目を刺激する。思わず、目をつぶる。オンシュザの声が上から響く。


「まぁ、さすがに手ぶらで返すのもなんだし、精霊との会話が出来るようになる魔法を授けてしんぜよう。君がここに来た時使った属性、それを使うの。あとはせいぜい頑張りな。」


気付くと俺はもと居た図書館に戻っていた。周りの生徒たちは何事もなかったように静かだった。俺は夢を見ていたのか?しかし、俺の頭の中にはあの属性を使った精霊の言葉を理解する呪文の公式が確かに存在した。

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