はじめましてソフィさん

放課後、俺はアヴェルに教えてもらった校内にある図書館に来ていた。アヴェルも誘ったのだが、魔導書読んでるより、クラスの子の実技訓練見てる方がいいと言って断られた。お前には理性ってもんがないのか。校内にある図書館は独立した建物で、ぱっと見、塔みたいだった。入ってみると壁一面に本棚が設置されていて、まさしく異世界の図書館といった感じで俺はワクワクした。中央に設けられた受付に行く。そこには、クラスで見覚えのある顔があった。俺は思わずそっちに行く。


「あっ。信託の騎士その2。」


やや癖がついた薄い緑のショートの髪の毛。眠そうなとろんとした目。図書委員というよりもどこかの組織のマッドサイエンティストみたいな感じの受付の女の子は俺に言う。もうちょっと、言い方ってもんがあるだろうに。俺は少し文句を言いながらオンシュザ式魔導書の場所を聞いた。


「言い方かー。別にどうだっていい気がするけどなー。そんじゃコンダクターとかにする?あっ、私がめんどいわ。ターでいい?」


もうそれでいいよ。てか、俺、君の名前知らないんだけど。


「あっ、そうだね。私はソフィ。見ての通りここの受付ー。基本、放課後はここにいるから本のこととか聞きたくなったら来るといいよ。そんで、お探しなのはオンシュザ式の魔導書?」


ソフィか。そう、オンシュザ式魔導書。高位の精霊についても詳しく載ってるらしいその本は、魔法を初めて習った時にシエルさんが教えてくれたものだ。少し難しいかもと心配していたが多分大丈夫だろう。贈り物効果で理解できるはずだ。


「難しい本読むんだねー。えっとね、最上階のd-19に一式揃ってるよー。」


ソフィは上を指差しながら答える。そして、


「今なら大サービスで送ってあげるよ。私も読んだことあるけど、理解できなかったんだよねー。解読出来たら解説よろしくー。」


そう言って、俺に向けて何かの呪文を唱える。すると、俺の身体は温かい風に包まれ宙に浮いた。そして、その風は目的のd-19まで運んでくれた。すげー。魔法でこんなことまで出来るのか。目的の本棚に着いた俺は早速その中の一冊を手に取り近くの席に座った。【オンシュザ式魔導録第1巻精霊】A4ほどのサイズで百科事典ぐらいの分厚さの本。目次の欄を見る。各属性の下位から上位までの精霊の名前が羅列している。その中にはサラマンダーやシルフやノーム、オーディンなど聞いたことのある名前も並んでいた。前の世界の空想がここでは形になっているというのはとても不思議な感覚がした。まぁいいか。俺は習った属性以外の項を探した。…無いか。ペラペラとめくる。各精霊の属性や気性といったちゃんと契約していなければ書けない内容ばかりが書かれている。更には精霊の魔術を使用しての装飾品の具現化などなかなか興味深い内容だった。流石に全部読むには時間がかかりそうだが、内容自体は理解できないというものではなかった。うーん。これっていったい何なんだろうな?確かオンシュザって人が書いた魔導書がこの世界で一番って話だけどそれに載ってないってのはなー。俺は人差し指の先に名前の無い属性を集中させた。そういや、闇とか木とかゲームで見たことあるけどそれか?集めた名前の無い属性は虹色に輝いている。すると、不思議なことが起こった。目の前の本と、オンシュザの魔導書が収められた本棚が同じ光を放ち始めた。そして、俺の身体はその光に包まれた。

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