第4話 俺と彼女たち
「「「食事をお待ちいたしました」」」
三人で喋っている内に食事が運ばれてきた。
「おー。やっと来たっすか!いやー、僕もうお腹ペコペコで」
「嘘つけ。お腹ペコペコの奴があんなにはしゃげる訳ねぇだろうが」
「おー?だんだんお兄さんが辛辣に。ちょっとは遠慮してくれてもいいんすよー?」
「知るか。お前は遠慮したらダメな奴ってさっきの会話で身に染みたからな。お前には遠慮なんかしねぇ。あとお兄さんやめろ」
「いやー、いいっすねぇ!挨拶の時みたいにガチガチになるよりよっぽどいいっす!そうなればこっちも遠慮無しでいくっすよ!あ、あとお兄さんやめろは嫌っす」
「なんでだよ」
「いやー、お兄さんはお兄さんっすよ。あ、でも僕の事はグレーテって呼んでくださいっす」
「いーや。お前がやめないなら嫌だね」
「へー。そんなこと言ってもいいんすか?『祈っちゃう』すよ?」
「うぐっ!おい、それを出してくるのは卑怯だろ!おいカレンお前も何か…言っ…て……」
「そうっすよ!カレンちゃん、君からも何か…言っ…て……」
カレンは俺らのやり取りを聞いていて笑っていた。明らかに雰囲気はほんわかしてないし、なんなら針のむしろみたいにこちらを容赦なく攻撃してくるオーラを出していたが。怒るわけでもなく怒鳴るわけでもなく、ただひたすらに笑っていた。
「座りましょうか、二人とも」
「「…はい」」
「ほら、こっち来なさいご飯をよそってあげる」
「「ありがとうございます…」」
カレンから渡される茶碗が重い。鉛を持っているかのようにさえ、勘違いしそうな圧に俺達は耐えきれる筈もなく。ただただ言うことに従った。
「お腹がすいて気が立つのもわかるけど、喧嘩はよくないわよ」
「「はい、すみませんでした…」」
「ええ、私もお腹がすいたから、なんだかイライラしちゃって」
「「待たせてしまって申し訳ありませんでした…」」
「ええ、早く食べましょ?」
「「はい…」」
「いただきます」「「いただきます…」」
俺達は…無力だ…。
「いやー!いつ食べてもご飯はおいしいっすねぇ!あ、これおかわり!」
「おいそんなに食べても大丈夫なのかよ。そんなにとばして後々大丈夫か?それにしても…」
俺は俺達の目の前に並んだ数々の品に目を向けた。なんか、作物が育たないって言う割には
「豪勢すぎないか?」
俺達三人に対して、俺達の目の前にある品々はパッと見十種類位あるように見える。
「そうっすか?」
「神子の生活はこれが基本よ」
「大分裕福な暮らししてんなぁ」
「まぁ神子が居なくなれば作物は育たなくてここの人達全員死んじゃうっすからねぇ」
「それに私達だって断ったわよ。私一人に回す食料だけでも三人は余裕で賄えるんだから。それを町の蓄えにしなさいって。そう言っても相手が無理矢理渡してくるし、そうなったら断ることも失礼だしで…」
「私達がいなければ生活することもできないからこれぐらいの恩返しはさせてくれって町の住人総出で頭下げられたっすからねぇ」
「断りきれなくて今に至るってわけ」
「昔はもうちょっと控えめだったすけど…」
「そう?私はいつもこうだったわよ?」
「グレーテの場所は違ったのか?」
「おお!名前!…それはともかく。昔でも大事にされたっすよ?ただ最近は輪をかけてこうなっただけで。まぁ僕も食べることが好きになったのは最近だからありがたいっすよ」
なんというかここら辺の人は他の地域より神子に感謝する人が多いようだ。
「さて」
「「「ごちそうさまでした」」」
「さあ、お腹もいっぱいになったし!遊ぶっすよー!」
「さっきも言ったがどんだけ遊びたいんだよ。どんだけ気合いいれてここまで来たんだ」
「そりゃもう!いっぱいっすよ!さぁどうします?花札します?こま回します?あ、カルタもあるっすよー!」
「…さっきも思ったけど。そこにある遊び道具って私のよね?」
そうカレンに言われた途端明らかに動きを止めるグレーテ。
「お前のじゃねぇのかよ!」
「いやー、ばれちゃったっす」
テヘッと擬音が聞こえそうな動きをするグレーテ。なんでそんなに開き直れるんだお前はっ!
「まぁまぁ、いいじゃないっすか。遊ぶことには代わりはないんだし。誰のでも」
「こっちを見て言え!」
「ま、いいんじゃない?それで?何するの?」
カレンが自分は興味ないですよみたいな事を言っているが。声は上ずっているし、そわそわしているし。やる気が隠せてないですよ、カレンさん。
「じゃあ、まずはカルタ!今日は朝までいくっすよー!!」
ふざけんな!こちとら一日でなんか知らん世界に来るわカレンと出会うわ、カレンしかいないわ、終いにはお前に会うわでとっくにキャパオーバーだ!
「ふざけんな!俺は参加しねぇぞ、寝かせろ!」
「ふっふっふっ。…お兄さんは強制参加っすよー!!」
「ふざけんなあぁぁ」
テンション最高潮のこいつには勝てず、無事寝落ちまで巻き込まれましたとさ…
寝させろぉぉぉ
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