第3話 俺ともう一人の神子

結局俺達はカレンが住む家まで喋らないまま到着した。町を出た時には夕日がまだ出ていたが、今では完全に日が沈んでいる。

周りを照らす灯りが俺とカレンが一つずつ持つ提灯しかないので大分暗い。

カレンが住む家まで到着したのはいいんだか、これは家と言うより

「完璧に神社だろ」

「あら?言ってなかったっけ?」

「聞いてねぇよ」

「しょうがないじゃない。グリムも私もここに着くまで一言も喋らなかったんだから」

「それはそうだけど」

開いている門から入ると、玄関までの道を挟むようにして20人位の人が並んでいた。

「「「「おかえりなさいませ、カレン様」」」」

「ええ、ただいま」

「おい、この人達は?」

権禰宜ごんねぎの人達。私のお世話係みたいな人達よ。持っている提灯をその人達に渡して、待たせているみたいだから早く行くわよ」

言われた通り自分の近くにいる権禰宜の人に提灯を渡してカレンに付いていく。玄関を通り廊下を歩くが、外からでも分かっちゃいたが、相当でかい。廊下だけでも歩くのに二分はかかりそうだ。

「待たせてるって誰か居るのか?友人とかじゃなさそうだが」

「一言多いわよ。神子の一人ね、誰かは分からないし」

「?誰か分からないのに神子ってのは分かるのか?」

「ええ、神子同士はどこにいるのか大体分かるから」

廊下の突き当たり。襖を開けて入ると、カレンの言った通り一人の少女が待っていた。黒い髪のボブショートでいかにもな活発系だ。

「や、初めましてっすかね?二人とも、僕はグレーテ。これからどうぞよろしくっす」

「初めましてグレーテ。私はカレン。こちらこそよろしく」

「ああ、俺の名前はグリムだ。えー、これからよろしく頼む」

「固ったいなぁお兄さん!もっと砕けて砕けて!」

いや、砕けてって言われてもあれを見たあとじゃな。

「ははーん?さてはお兄さん…」

なんだよ、こっちを見るな。そのニヤニヤした顔をやめろ。僕は分かってますよーみたいな顔でこっちを見るな!

「な、なんだよ」

「緊張してます?」

「うぐっ!」

しょうがないだろ。あんな光景を見たあとだと、神子ってのがどれだけすごい存在なのか目の当たりにされたんだから意識するなって方が無理だ。

「あははは!お兄さん可愛いとこもあるんすね!もっとこう、ごつい感じの怖い人思ったすよ」

「なんでそんな印象なんだよ。俺は別にごつくはないだろ」

「いやいや。この世界はもはや女の子だけっすから。そんな中のお兄さんは十分ごつい範疇っす」

…それもそうか。世界中が女の子だけになったら、確かに男の俺は十分ごつい。でもなぁ、ごついって思われんの嫌だなぁ。

「さぁ!二人とも来たし!自己紹介も終わったし!お兄さんも弄ったし!遊ぶっすよ!」

「なぁ、一つ要らないのあったよな?俺のこと弄んなくても別によかったよな?」

「さぁ、何するっすか!?」

「聞けよ!」

「とりあえずご飯ね」

「えー。折角遊べると思って気合い入れて来たのに。ほら、花札もコマもコマを回すための縄まで自前で持ってきたんすよ?」

どんだけ遊びたかったんだこいつは。カレンの話を聞く感じ別に近所って訳じゃないと思うが。どんだけ気合い入れて来たんだよ。

はぁ、大分キャラが濃い奴が来て俺はもう寝たい。何でこいつが神子なんだ。







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