告白問答

シヨゥ

第1話

「あれこれ考えたところでムダだと思うの」

 そう彼女は言う。

「だから考えるなって?」

「そう。だって先々のことを考えたとしても、その考えついた結果ってまだ起きていないんだよ? 起きていないことに、起きたときにできるかも分からない対処方法を考えるなんてムダだよ」

「言いたいことはわかるけど、やっぱり先々の与件を考えて、対応考えるのが人間として正しいと思うんだ」

「それは人間の欠点でもあるよね。有りもしないことを心配して、不安になって。動物はその場その場の直感で生きるんだよ? 人間もそうやって生きてきたはずだよ? それなのになんでこんなに難しく考えるようになったのかな?」

 反論するとこちらの隙を見つけては反論してくる彼女。

「そんなに僕と結婚したいのか」

 それも当然。彼女が結婚を申し込んできたのだ。

「それはもちろん。その理由も論理的に説明しようか?」

「それは勘弁。恥ずかしさで死にそうだ」

 結婚の申し出から小一時間。もっと冷静になるように諭していたはずが、ちょっとした討論になってしまっている。もはやムードも何もあったもんじゃない。ただ呆れることなく反論してくる彼女の情熱だけは感じることができた。

「分かった分かった」

 ついにこの討論会に終止符を打つことを決めた。

「今の気持ちを大事にして、君の申し出に返事をしようと思う」

 勿体つけて言ってみると彼女が息を飲む。その仕草すら可愛いと思う時点で僕の負けだろう。

「結婚しよう」

 返事は一言でさらっと言ってのけた。

「決断が遅い!」

 なぜかそう怒られて抱きしめられた。むず痒い。だがこれを幸せと言うのだろう。

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告白問答 シヨゥ @Shiyoxu

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