言葉

今日も起きたら先ずは捨て物拾いだ

同じ奴隷の人間の子供も、一緒に起きて一緒に付いてくるけど、顔を歪めたままでやっぱり作業はしない

その後にデークくんの作業を見守るけれどやっぱり何もしようとしない

まぁしようとしたらデークくんに怒られるのだけれど


そして武器の手入れの時も何もしない

ただ横に立って、見ているだけだった

そろそろ僕もどうしたものかと考えてると村長に呼ばれた


「明日から人間達の住処もキレイにしろ。そろそろ匂いで獣を呼び寄せそうだ」

言われて見れば一度見に行ったっきりで、捨て物拾いの作業の時にその場所は行っていない

僕は分かりました言った

そして明日になっていつも通りに作業したついでに人間達の住処に行った時、人間の子供が叫びだした


いきなりの事で僕もびっくりしたけど、なにより生殖行為中のゴブリンが怒ったのか、いきなり叫びだした人間の子供を殴っていた

人間の子供は地面に三回程叩きつけられた後、少しだけ動いて気を失っていた


僕は仕方なく住処に連れて行って人間の子供を寝かせると、また自分の作業に戻った

まぁいきなり叫びだした人間の子供が悪いとも思ったし、なにより何もしようとしない人間の子供に僕は少しずつ嫌な気持ちになっていた


…………だけど不思議な事に、明日になってから目を覚ました人間の子供は少しずつ、作業をするようになった

きっと殴られた事が効いたのか、それともあの光景が効いたのか…ただの生殖行為なのにね?


でも少しずつとは言え作業をしてくれて良かった。そろそろ僕が食べ物を分けるのもきついのがあったし、もう少しで寒くなってくる時になるからちょうど良かった。僕はまた一つ、考えていた事をやる事にした




寒くなるとゴブリン達の動きは少し鈍くなる

それは多分人間と同じようで、僕もそうだし人間の子供もそうだった

人間達の住処である場所ではいつも通りに生殖行為が行われていて、馬車の中の凶暴な女性も大人しいままだった


ちなみにその人間達の食べ物はイッチ達が持ち帰る獲物でなんとかなっている

村長はいつも拾ったと言うイッチ達に、そろそろ怪しんでいるみたいだけどまだまだバレてはいないみたいだ………多分………?


さて寒くなるとゴブリン達の動きも鈍くなると言ったけど、そうなるともちろん捨て物の量も減って、武器の手入れの作業も少なくなる


そこで僕はイッチ達と火を囲む前に人間の子供を連れて馬車へと行き、凶暴な女性の前で座り込む

………この馬車の中は外より寒くないみたいだ、いつかはこんな住処を作りたいものだ……


そして僕は人間の子供と凶暴な女性の前で石を置いた。それで僕はそのままその石を指で指したまましばらく待つ

すると《……この石がどうしたのよ?……》と言った人間の子供の言葉を真似して「…こ、のいしが……ど、たのや?」

と言った。すると人間の子供と凶暴な女性は驚いて僕を見たあと、僕のやりたい事が伝わったのか僕にいろいろな物の言葉を教えてくれた


つまり人間の言葉を僕に教えてくれた。それはいろいろな物に始まり、通常の会話からいろんな専門用語まで

僕が人間と言う事も関係があるのか?彼女達が教えてくれた言葉を僕は次々と吸収していき、そして……


寒い時……いや、冬を越えてこの地に春が訪れた時、僕は人間の言葉を理解できるようになっていた

《本当に人間だったのね……》

彼女達の中では僕は曖昧な存在だったようだ


そして人間の言葉を理解したなら話は早い

先ずは言葉を教えてくれた女の子と女性騎士の身の上話……なんかより大事な事がある。それは……


《おい、起きろ!》

僕は今ではすっかり痩せ細った男を連れて、生殖小屋から出る

そして男に向かってこう言う

《この馬車の作り方を教えろ》


そう、これが僕のやりたかった事。せっかく人間達がこの村に居るのだ、この機会にこの人間達の知識を僕は全て吸収するつもりでいる

始め、何がなんだか分からない様子の男だったが、僕の言葉がしっかりと届いたのか分かることは教えるようになってくれた


衣食住。人間達の世界ではこれらが生活の基盤となっていて、それらは今の僕達の生活でも変わらない物ではあるものの、皆一様に今よりもずっと高いレベルにあるみたいだ


そのことにはあの馬車を見た時から気付いていた僕は、このゴブリンの村を発展させる為に人間の言葉を覚えたといっても過言ではない


あの時に見た彼等の武器に鎧、服や馬車にあった少ない食べ物に、少量だけ載っていた人間達の世界で言う所のお金と薬

僕はそれらを見た時から決めていた

いつか、あれら全てを作れるようになりたいと

だから僕は必死に言葉を覚えた


僕はこの知識を使い、このゴブリンの村を豊かにするんだ

時間と言う知識も身に付けた僕が、この村の奴隷になってから一年。ここから、奴隷である僕がこの村の生活の土台を変えていく













  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る