興味
次に目が覚めた時、私は馬車の中で寝かされていました
一体何があったのかと頭を整理しようとして一瞬で脳が覚醒しましたが……
「んーん!んーん!」
リーヤの名を呼ぼうとするけど口に布があてられたままひもで縛られている
気付けば、手も足も縛られている状況……
………そうか…私はこのままイーワル国に渡されてしまうのですね……
マリア達ではリーヤに勝てるとも思いませんが、リーヤは武器を離していましたし、私が気を失う寸前、魔物がリーヤ達を襲っているように見えました
それで後れを取ったのかもしれませんね…
リーヤには本当に悪い事をしてしまいました。こんな情けない私の為に命を掛けてくれました
彼女はもっと、もっと高みへ昇る事ができる存在だった筈なのに私なんかのせいで……
一度堰を切った涙は止まりません
私は、私の為に死んでいった者達への後悔と無念を想い、ただひたすら、馬車が止まるまで泣き続けました………
「ありゃなんだ?」
デークくんがいきなりそんな事を言うので、つられて僕もその方向を見る
すると、丁度作り終えた大きな住処の上から見えたのは多分木で出来てる大きななにか。
それがゴロゴロと音を立ててこちらに向かって来ていた
その大きな動く何かの周りにはゴブリン達が集まっていて、その大きな動く何かと繋がれたままに四体の生き物がキョロキョロとしながら歩いてくる
ゴブリンより薄い肌の色にゴブリンよりも高い背丈、手と足はほとんど一緒だけど毛の量や太さが全然違う
それはまるでゴブリンと言うよりも僕の姿によく似ていた………と言うより………
「もしかしてあいつら人間か⁉」
デークくんもそう思ったのか、デークくんは僕の方を見て僕の反応を待つ
そんな僕はと言うと、初めて見る同族の姿に何故か、嬉しさでもなく楽しさでもない、不思議な気持ちになっていた………
「村長。ただいま戻りました!こいつ等が例の人間達です」
「うむ、ご苦労。先に報告は受けている。だからこちらもしっかりと用意できた。でかしたぞお前達」
僕とデークくんが住処から降りると、村長が一体のゴブリンと話していた
あ、カー兄だ。カー兄は確か、その強さを認められて戦士長の一体になったって聞いたな
僕は久しぶりに見たカー兄に手を振るけど、カー兄は少しだけこちらを見ただけで直ぐに村長の方へと振り返り、続けて報告をする
「ありがとうございます!では、私の提案を飲んでくれるのでしょうか?」
「あぁ、お前の言う事にも一理あるからな。この人間の女達にはこれからしっかりと、たくさんの子供を産んでもらう」
………なるほど、確か聞いた事があるな。ゴブリンには母さんみたいな女性が産まれる事が少なくて、種族の繁栄の為に人間の女性とかを使って子供を産ませるんだとか
………それにしても初めて同族を目にしたってのに何も感じないなぁ……ゴブリンと比べるならば、背丈はあちらがかなり高くて胸も母さんに比べるとかなり大きい
頭の毛は皆いっぱいでいろんな色をしている
お尻は大きさに違いがあって、足は皆ゴブリンよりかなり高い
四体の中で一体だけは周りより体が大きく、胸もないから男だろうか?
そして皆一緒に口に木を咥えさせられて喋れないようにしてある
《んー⁉んー⁉》
同族が僕を見て何か言っているけれど何を言ってるのか全然理解出来ない
そんなことよりも僕は気になる事がたくさんある
だけど僕はこの村奴隷……しかも村長の前だ、変な事は出来ない……抑えろ……抑えろ……
「では提案通り、中にいる人間の女はまだ小さいので、おとうと……あの人間と同じように奴隷としてこの村の為に働かせましょう」
「あぁいいだろう……」
同族がまだ居るのか?中だって?あの大きな住処の事か?くそ、カー兄め!ダメだ、抑えろー………
「村長!」
僕は胸の辺りが激しく動きながらも一度言いだした僕の口は何故かもう止まらなかった
「…………なんだ?」
「そ、その……あれに触っても良いですか?」
「………」
「だ、ダメ……ですか?」
くうー、頼む村長!僕は……僕は……
「いいだろう。ただし変な気は起こすな………よ………」
やったー!許しが出た!僕は村長の言葉を最後まで聞くことなく走り出す。見ると隣では僕と一緒にデークくんも走り出していた
そうだよねデークくん!君も気になるよね!
あの動く大きな住処!
僕とデークくんは動く大きな住処にへばりつき目をギラギラさせて色んな所を見る。触る。確かめる
凄い!僕の胸の辺りが、初めて自分だけで獲物を仕留めた時と同じ……いや、それ以上に激しく動いている
この住処は木で出来ているのか?だとしたらこんなにキレイな木は見たことがない。もしかしてこの木は作ったのか?よく見れば何個も同じような
木を繋ぎ合わせて作られている。軽く叩いて見ても…うん、頑丈だ。この木は僕も作ってみたい。次はこの回る奴だ。さっき見た時、この動く住処はこの回るやつが回る時だけ動いていた。だとすればこれがこの動く住処の秘密!うん……うん……なるほど……なるほど……
下はどうなっている?棒?これが回る奴に繋がって……は!!そうか!これで………なるほど………
上は?上はどうだ?………これは木とは違う……これは……ゴブリン達がたまに腰につけてるやつの大きいやつ?あ!デークくん、そこは僕も気になっていた所だ!あっちいって!うがっ⁉何するデークくんめ!痛て⁉痛て⁉くそ!僕も反撃だ!くそ…当たらない⁉あ⁉あれは?あれは何?どいてデークくん通してくれ!何?デークくんも僕の後ろが気になるだって?見に行けばいいじゃないか?その代わり僕もデークくんの後ろに見に行くから。え?ダメだ?何でだよ!見るだけじゃないか!……いや無くならないから!……デークくん…君とはいつかこうなる気がしていたんだ………デークくん…うあああぁぁぁ!!
「………………あれなら変な気は起こすことはなさそうだな……」
「…………いや、変な感じにはなってるように見えますが…」
村長とカー兄は、動く大きな住処にへばりつき、あちこち動き回り見て回る変な奴らが、最後には動く大きな住処の一番上で殴り合う姿を見ていた
いや、集まっていたゴブリン達も、手を繋がれた人間達もその姿を見ていた
「うあああぁぁぁ!」
「うらぁぁぁぁぁ!!」
初めて殴ると言う事をした僕の最後の渾身の一撃は、デークくんに簡単に避けられ、逆に真っ直ぐ殴られて僕は鼻から血を吹き出しながら負けた
くそうデークくんめ………今日の所は君にあげよう……だが明日は僕が見るからな……
僕は動く大きな住処の上から追い出されて下に降りる……ん?あれは?
僕はさっき見た筈の所に小さな木の枝を見つける
木の枝と言ってもきれいになっていてちょうど、僕の手でも掴めるように工夫してある
それを僕は引っ張……れないなら押して………も違うなら上…下……横……逆の横、開いた⁉
なるほど、これはこの動く大きな住処の中を見る為のもの……
多分この動く大きな住処の入口みたいな場所はあったけれど、それより他の所が気になってしまい後回しにしていた…
僕はその小さな中を見る為のものから、この動く大きな住処の中を見る
そこには……僕と同族で、僕と同じくらいの大きさの人間が、泣きながらこちらを睨んでいた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます