初めての仲間

「ふ~、食った食った。こんなに腹いっぱいに肉なんて食ったのいつぶりかなぁ」

「確か前に戦士長達がたくさんの犠牲と共に仕留めた大物の肉が村に来た時以来だなぁ」

「ゲフッ…もう食えねぇ……」

「美味かった………美味かった………」


ゴブリン達はたくさんの肉を食べてお腹いっぱいになったのか、そのままゴロンと地べたに横になる

……………………ここだ…………

「ねぇ、次からもこのお肉食べたくないかい?」

「「「「!!⁉」」」」

ゴブリン達は僕の言葉に大きく反応する………よし!


「もし僕のお願いを聞いてくれたらいつでもこのお肉が食べられるようになるよ?どうだい?」

「………………お前は奴隷だろ?美味い肉を食わせたのは有り難いが、俺達が命令したら作ってくれるんだろ?」

「…もちろん僕はこの村の奴隷さ!だから言われればまた僕だけでこのお肉をとってくる事はできる」

「……ならそれで良いじゃねぇか。決まりだな、次からも頼むぞ人間」

やはり僕は奴隷。だからゴブリン達も僕が使えると分かれば僕に命令する


だけどそれだけじゃだめだ……

「そうなんだけどね?僕だけでやるとなると凄く遅くなるんだ。君たちは僕がこのお肉を取るのにどれだけ掛かったか分かるかい?」

「……知るかよそんなもん」

僕は振り返り、寝床にある木に付けている傷をゴブリン達に見せる


「この傷一つが、目が覚めて光が天に昇って沈むまでの間さ」

僕は言いながら傷を一つなぞる

「次にまた目が覚めたらまた傷を一つ付ける」

僕は言いながら二つ目の傷をなぞる

「そしてまた光が昇ってまた沈む」

三つ目の傷をなぞる

「繰り返す」

四つ目の傷をなぞる

「そして五回繰り返したら縦に傷を付ける」

僕は縦に付けた傷をなぞる


「分かるかい?そしてそれを二十回繰り返す。それでやっと僕はお肉を取ることが出来るのさ」

「だ、だったら傷をいっぱい付けたら良いってことじゃないのかよ?」

言うなり傷を付けている木に自分で傷を付けようとするゴブリン

「止めろサブ……そういう事じゃねぇよ……そうだろ?」


「……そう!その通り。だから僕だけがやると言うのならばそれだけ遅くなります」

「非力な人間如きじゃそんなもんか?くだらないな。人間のくせに」

………僕はこの言葉を待っていた

「そうなんです。僕は非力な人間ですからね。力の有る君たちと比べると、どうしても遅くなるんですよ…………もし……誰かが非力な人間である僕に変わって穴を掘ってくれたなら、このくらい早くなるかも知れないですけど……」

僕は言いながら地面の土を掴み、木に付けている傷に塗り傷を消していき残る傷は三つになる


「………………」

「………………」

「…人間の他に誰がその穴をほるんだよ?」

「………つまり…俺達…か?」

「「「!!⁉」」」


「そ、そうなのか?人間?」

「俺達が穴を掘ればいつでもあの肉を食えるのか?」

「………そうですねぇ……でも、奴隷である僕の言う事なんか聞きたくないですよねぇ?……すいません、忘れて下さい。命令して貰えれば遅くはなりますがお肉をとってきますので!」


「…ふざけるなよ人間!」

……………………………………………………

「お前みたいな非力な人間がやってたら遅いだけだ。穴を掘るだけならば俺達に任せろ。お前より早くやってやる」

……………………………きた!


「ほんとですか?ありがとうございます」

「ふん、簡単な事を出来ないとは…人間てのはやはり愚かな存在なんだな」

………………………………

「ははは、ではまたお肉が欲しい時は光が昇った時この場所で会いましょう」

僕はこうしてゴブリン達の協力を得る事に成功した

これはまだ僕がやりたい事の第一歩だ


「そういえば獲物を村に持って帰って戦士として認めて貰わないと………」

「え?あれをですか?」

僕は切り分けていた獲物に目を向ける。するとつられてゴブリン達もそちらに目を向ける

「「「「……………………」」」」

そこにあるのはもうほとんどお肉の残っていない獲物の姿。もしこれを持っていったとしても、何処から拾ってきたのかを疑われるだけで終わってしまうだろう


「「「しまったー!!?」」」

フフフフ、まだまだ君たちには僕に協力してもらわないといけないからね。今回は戦士になんてさせないよ?

「そう言えば、名前を教えてはくれませんか?」

僕は唐突にゴブリン達に話し掛ける

僕も経験があるが、お腹がいっぱいの時は頭が少しボーッとして、何でも言っちゃう状態になる時がある

それがもし、普段人間如きと下に見てる存在だとしても、少しならばいいかな?と思えるくらいにはなる筈だ……


「イッチだ」

「ジ、ジロってんだ」

「俺はサブだ」

最初に僕の所に来た三体はイッチ、ジロ、サブと言うみたいだ

「ワイはミッシュてんだ。よろしくな、人間」

そして僕のご飯を勝手に食べていた奴はミッシュって言うらしい


ここからだ。僕はこの村の奴隷だからやりたい事が出来なすぎる。だからゴブリン達の協力を得た今。ここから僕は僕のやりたい事をやっていくんだ

グ~…………

先ずは残りのお肉を食べよう……今ならそれくらいは許されるだろう……はぁ…お腹空いた〜




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る