第ニ夜 タプン、タプン
タプン、タプン。まだ心臓の鼓動すら知らないのだ。
タプン、タプン。まだしっぽのおもかげすらあるのだと言うではないか。おまけに見た目は宇宙人。
タプン、タプン。誰かと誰かの愛の結晶と呼ばれるか、はたまた憎しみの矛先か。それとも
タプン、タプン。それとも精神を吹き込まれたあわれなただの肉塊と呼ぶべきか、誰も答えを知っていない。
タプン、タプン。一人では生きることすら困難な、自分の姿に
タプン、タプン。いつ産まれるやと喜ぶ言葉に、腹ただしくて蹴破りたい。だからお前は動くのだ。
タプン、タプン。陽の光の暖かさなど、感じることもできないその部屋で、お前は恨みを込めて動くのだ。
タプン、タプン。それでも皆産まれるときにはけろりと憎しみを忘れているのである。そうして、悲しみだけが残って泣くのである。
タプン、タプン。タプン、タプン。分かる、分かるぞ、その気持ち。産まれてきたことにゼツボウして泣いているのだろう。私も、私もそうだった。
タプン、タプン。だから、その悲しみ聞く前に。私が呪文をかけてやろう。きっときっと素晴らしい、お前の人生になるだろう。
タプン、タプン。タプン、タプン。揺れろや揺れろ、命のゆりかごで。ゆるりゆらゆらグッスリ眠れ。
「何をしていらっしゃるんですか? 先生」
「うん? ああ、ちょっとした診察みたいなものです。お気になさらず」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます