第6話 同じ道を歩みたい

隣町の商店街に到着した。エレキ社が発明した

【全自動偵察機ドローン】が数機、

何分おきに飛び交う。 犯罪を防止するためのものだ。ここは、治安がよさそうだ。






俺たちの住む街と違って

通りすがる人々は、けっこうな服を着ている。

ここは、奴隷身分の人口が少ないからな。それも

治安がいい理由だろうな。



「ねぇねぇ!レイグ!あのアイス食べよ?」



「…アイスかぁ。今はそんな気分じゃ…」



何か視線を感じる。後ろを向くと、カイヤの殺意であることがわかった。……やっぱり前から思ってたが、コイツ…ブラコンか??

なぜか、妹の提案に俺が乗らない時、いつもこうやって殺意の視線を送る。

気持ち悪っ…



「…いや、やっ、やっぱ食べるよ…!」



「やったぁ!!!」




「わかってるじゃぁないか!レイグ君?」



「そうですね。」



カイヤに同情するフリをした。

めんどくさいなぁ。まぁいい。

と考えているうちに、シファとモンシュが

勝手にアイスを選んで買ってきてしまった。


「レイグさん。はい、どうぞ。」


「あぁ、どうも。」



一口いただく。   ハッ!何ぃ!?

バニラ❗️バニラだと!?こんな高級アイス!?

なんだと!?



「ちょっと待て!モンシュ!これはなんだ!?」


「何って…バニラのアイスクリームですが?」


「んなバカな!!」



そんなはずがない。     科学的発展、

人口爆発と地球高熱化で、あらゆる資源が減少してきている時代だ。

その影響で今や、牛は絶滅危惧種のはずだ!

牛に関連した食べ物は、だいたいが高級食品になる。つまり、牛のミルクから作られるバニラも同じだ!



「……モンシュ。どうやって手に入れた?」



「え?普通に。シファさんと同じあそこの店で」



「なぬぅ!?……ありえない。値段…は?」



「1万3000円…」



「…ありえない。月給は130円のはず。」



仮に、130円を貯め続けても、100日間

1円も使わずに生活しなければならない。



「レイグ。モンシュはその130円を使わずに

 奴隷の時のままの生活をして貯めたんだ。」



「え?」



カイヤの話によると、5年前

モンシュを雇ったあの時から

奴隷生活で学んだ

1円もかけずに生活する方法を実践していたらしい。



「そんな…なんでその生活を続けた?」



「どこかで、レイグさんにお礼をしたくって

 僕を救ってくれたことを。奴隷の世界から。」



「でも、だからってこんな代金…」



「ご心配なく!!あと貯金が221,000円あるので!」



「……そういう問題じゃない。お礼してくれるのは嬉しいけど、君に何か、俺が特別なことをしたわけじゃない。」



「してますよ。  友達…にしてくれたことです」


モンシュが真剣な眼差しになる。

そして、背を向け

空を見上げてこう言った。



「僕自身のために、この貯金をレイグさんは

 使ってほしいんですよね。」



「あ、ぁあ。そう言いたかった感じだ。」



「僕のためになるのは、あなたに感謝することなんですよ。だから、いいんですよ…」



「は?はぁ。」





「あのぉ……レイグ?私もアイス買ってきたからあげる!」



「ぁあ、シファ。さすがに2個はいら…」


まただ。カイヤの憎悪を感じる。わかったわかった。



「もらいまーす。」




こうして、なんやかんや、

商店街を満喫し、


家に帰ってきた。



「レイグ!また今度どっか行こーね!」


「おうっ」



カイヤは通り過がりに

妹泣かしたら許さねぇ…と言って


カイヤとシファは、帰っていった。

2人は、16の時に、里親に引き取られた。

今はこうして、同じ職場に働いている…









そうこうカイヤ達について考えて、気づけば

2人だけになった。


この5年間、モンシュ・リーファを見てきた。

今日のこともあるが、これだけ過ごせば

完全に、信用できる。



「なぁ。モンシュ。この世が平和になってほしいか?」











今までの経緯を全て、モンシュに話した。

彼は黙ってうなずき、窓から見える夜空を見つめた。



「平和……。それは国家反逆罪ですよ。」



「あ、あぁ。そうだ。」




「でも。レイグさんが本気であるならば

 僕は、どこまでもついていきます。

 そばで平和への道のお手伝いさせてください!」





俺は、彼の勢いに驚いた。彼の目は、本物だ。

同じ目をしている。平和を望む…その目。


彼にもまた何か、辛い過去があるのだろうか。

だから、平和を望むのだろうか。






…父さん。確実に進んでってるよ。きっと。

小さすぎる一歩だけど、確実に。



平和にしてみせる。

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