第5話 再会

モンシュ・リーファ


奴隷の中でも、リーダー的存在らしい。性格は温厚であるのにリーダー的か…まとめる力があるのか?


もし、俺たちと

目的が違うなら、…それまでだな。






翌日、さっそく、雇ってきた。

相手が信用に値するかどうかは、短期間ではわからない。…時間が必要だ。


何せ、平和を望むってことは、つまり、

戦争を放棄するってことだから。

国家反逆罪で捕まっちまう。まずは、コイツを

試させてもらう。




「モンシュ…君にはまず、俺たちと同じ知識を身につけてほしい。」




「…かしこまりました。ですが、どうやれば…」



「俺と同じ学校に来い。学費はいらん。何せ、    

 児童養護施設だからな。」



「…?じどう?よ、ごおう?し?」



「ぁあ、まぁ、そんな場所があるんだよ。勉強していけば  わかるさ。」



「…そうなのですか!?…行かせていただけるならぜひ!!」



「そんなにかしこまらなくても!…確かに

 身分は奴隷かもしれないけど、俺はお前と対等に

 いたい。つまり、…友達ってやつだ。」



「ん…?と、もうだち?」



「あーまぁ!!、それも時期に教えていくよ。よろしくな!これから。


モンシュ・リーファ。」








それから、時が経つのは早かった。

いつのまにか5年が経過し、18の夏、

児童養護施設での教養期間が終了し、

カイヤ、レイグ、モンシュの3人は同じ職場に就職した。




「あれ?モンシュ。ここに置いてあった紙は?」


「あ、カイヤさんに渡しておきましたよ。」


「そう。   …お前相変わらず、敬語だなぁ」


「え?ダメなのでしょうか?」


「いや、ダメじゃないけど友達なのになんか変かとね。  そんなに敬語直せないの?」



「いやその、癖? でして。」


「そうかぁ。それは仕方ないなぁ」



カイヤが作業を止めて静かにメガネを外し

コチラを見つめてきた。




「…何?」





「…、レイグ、モンシュ。手が止まってるぞ。」




「ぁあ。ごめんごめん。」




「はぁ。今日は午後から休暇をとってんだから

 残りの分やっとかないと明日に溜まるよ~。」



「りょーかーい」




今日の午後からは、カイヤの妹、シファと

俺たち3人で隣町のアジィアムにちょっとした

買い物に行く。

どうやらシファが、俺と買い物に行きたいと言っているからだとか。


買い物か…隣町に行ってもなぁ



「でも隣町に行ったって、ここら辺と売ってる物はそんなに変わらないだろ?」



「はぁ。鈍感なやつめ。幸せだな。」



「そりゃ、どういう…!?」




「はいはいぃ。また会話始まってますよお二人とも。作業に取り掛かりましょう!」

 



「いやさっきお前も話してただろ!?モンシュ」



「いやあれはですね!!」




こうして言い合いが始まり、気づいた頃には

午後になっていた。



3人を迎えにきたシファは、

作業場から聞こえる言い合いにため息をついて

入ってくる。


「ちょっと…また、3人ともくだらない言い合いを!!」



「いやシファ!これはくだらなくない!

 妹のために尽くしてきたこの俺が今!

 レイグに侮辱されつつあるんだぞ!

 世界的危機が訪れているんだぞ!」



「は?何言ってんだよ!そもそも

 油売ってきたのお前だろ!?

 手が止まってるぞーってね??だからこの言い合いが始まり結局、仕事が終わらなかった。」



「そりゃ注意しない方法の他に何があるんだっ」



「あの、レイグさん、カイヤさん。

 僕が注意した時にやめれば…!」



「結局、注意してんじゃんかよぉお!






「はぁ。くだらないぃ。」


シファは、3分で準備しろ!と言い残して

怒って外に出ていってしまった。

くだらないとはなんだくだらないとは。

結局、明日は重労働になるな。

今日の分がたまっちまって…


最悪だっ。








なんとか、準備をすまし、

シファのご機嫌を良くした。



「じゃあ行こ行こ!レイグ!」



「そんなに急がなくても…」 



カイヤとモンシュは、にこやかに後ろからコチラを見ている。何がそんなに嬉しいのか…。












歩く途中で、軍事施設にいる兵士を見かけた。


きっと、あの兵士たちは、今の独裁者の管理下にいるのだろう。そしてきっと、政府の目的も…知っているかもしれない。


もし仮に…今後、グリファンデ政府が他の国と戦争する予定があるならば……。



革命でもなんでもしなくちゃいけない。なんとしても、平和な世の中に…。

父さん。待っててな。


なんとしても…この世を平和にしてみせる。

たとえそれが…





戦争によって戦争を終わらせるものであっても。










歩道の横から、波の音がする。

海岸のコンクリにあたり、音は不規則に変化する。



その音が妙に、自分の心を包み込む。









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