第4話 夢
「行かないでよ!!お父さん!」
「レイグ。これはお国様からの命令なんだ。 お父さんだけじゃない。他の人も戦争に行かなくちゃいけないんだ。
だから、……だからっ…だから、レイグ。
お父さんが……、いなくなっても…」
「いなくなっちゃ、嫌だ!!やだよ! ……
お父さんは、戦争があるから行かなくちゃいけないんでしょ?…他の人も。」
「そうだ。…だから、」
「じゃあお父さん!僕がたくさん勉強して
偉い人になって、戦争を止めるから!
それまで!!それまで、待ってよ!
…そんなの、いなくならないでよ。死なないでよ。」
「……ごめん。ごめんな。今回の戦争は…
たくさんの国と戦うんだよ。
だから、いつか、お前が…
この戦争の歴史に、終止符を打ってれ。」
「待ってよ…行かないでよ…」
「いつまでも…父さんは、#お前のそばに__・__#いるよ。」
父さんは、静かに俺の頭を撫でた後、
雪が積もった道を、静かに歩いていく。
一度振り返り、口癖の
「ありがとう。生まれてきてくれて」
父さんが無理矢理、笑顔を作っているのがわかった。…気に入らなかった。無理矢理頑張っているフリをしようとしていることが。
父さんの最後の笑顔から、俺は目を逸らし、
黙って、目の前に積もる雪道を黙って見つめた。
父さんは最後に、「…ごめんなさい。あと、ありがとう。」と言って その道を歩き始める。
そして、それからもう、父さんが帰ってくることはなかった。
戦争が終わって一年後、
父さんの死亡届を渡された9歳の俺は、
一年前と同じように
ただ黙って、あの雪道をずっと見つめていた。
長い時間。ずっと……
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「おーい、おいー。レイグ~。起きろよ~
アリア婆さんにみつかるぞ?」
「ハッ!!……お、ホントだ。教えてくれて
ありがとな。」
「呑気に爆睡しやがって幸せなやつ…」
「…そうだと…いいな。」
俺が見た夢は、幸せなんてものじゃない。
戦争。この存在こそが、俺の唯一の家族を
奪った。
俺だけじゃなく、多くの人が、この戦争に奪われた。…許せない。…戦争は、この世に存在しちゃいけない。
絶対に。戦争を消してやる。
戦争を歴史を…この人生を捧げて、終わらしてみせる。
「レイグ・アークァー。何をボーっとしてるの? 作業の続きをしなさいっ」
「あ、はい。」
クソ、また考え事して手が止まっちまってた。でもいつか、この目的を…達成
してみせる。
「なぁ、カイヤ。突然変なこと聞くが、
世の中を平和にするには何が必要だと
思う?」
「あ~。なんだろ。例えばぁ、
まず、国を乗っ取って、奴隷を解放すると
か?」
「…なるほど。」
「何真面目に考えてんだって!
そんな、国を乗っ取るなんてさ!
そもそもできないし!」
「いや、できる。順番を逆にするんだ。」
「は?」
そうだ。順番を逆にすれば、行ける。
国を乗っ取るには戦力が必要だ。
俺たちでも、戦力を集めることができる唯一の方法がある。
そう、
「先に、奴隷を味方にする。グリファンデは兵士より奴隷の方が数は勝ってる。」
「お、おう。でも、奴隷に力はないぞ?
武器もないし…」
「そう…だな。」
でも、それでも動かなきゃ何も変わらない。
この先の時代、どうなっていくかわからない。でもどっちにしろ、奴隷を支配下に置いておけば情報が手に入れやすいだろう。
「なぁ。カイヤ。この世を、平和にしたくないか?」
「どういう意味だ?」
「文字通り、この世界を救う。」
「そんなの、できるわけ…」
「俺も今までそう諦めてきた。
だが、あの頃の…父さんとの最後の記憶を見て思った。 戦争に終止符を打たなくちゃ行けないって…。」
「…レイグ。 俺も、戦争が消えてほしい。 同じだよ。レイグ。本気なら手伝う。この世界を、平和に導いてくれ!」
「…っ、そんな大袈裟な。
…でも、それくらい。やってみせる。」
この日から、俺たち2人は平和への道を歩み始めた。
2人で話し合った結果、奴隷の中でも顔の広い人物を雇って、奴隷から情報を集めることにした。
近くにある奴隷商店から、一人一人の奴隷について書かれた調査書を見て、1人の男を雇うことにした。
「この人物がいいだろう。」
「どれだどれだー?」
「モンシュ・リーファ。」
奴隷の中でその名をとどろかせているらしいが……
俺たちと同じ願望を持たない限り…。
今は、この男に頼るしか……ないのか?
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