第25話 連盟の意味
6月23日午後1時、自室。
「兄さん。……質問の時間だよ」
「ハイ」
脱衣所から、珍しく魔力を固めた服ではなく本物のバスローブに身を包んだ瑠莉奈が姿を現す。
そして瑠莉奈は俺のベッドに座り込み、横に座るようポンポンとベッドを叩いた。
「ベルゼブブ連盟、だっけ?ベルちゃん主導のプロジェクト……って、そう考えれば良いのかな?」
「その通り」
「ベルちゃんって……いつの間に兄さんと仲良くなってたの?」
「いや、俺もよく分からん」
山村とベルの話を聞いて自室に戻った後、ベルゼブブ連盟について俺が瑠莉奈に話したところ、見事に質問……もとい詰められてしまっている訳である。
「兄さん。……ベルゼブブ連盟だけどさ……。ちょっと、考えた方が良いと思うんだ」
「……俺は……どうすりゃいいんだろうな」
「それは私にも分からないよ。でも、兄さんが連盟に入るんだったら私も協力するよ。使い魔だから。……でも……そういう連盟がわざわざ『ある』って事は、それに反対してる人もいるって事だと思うんだ」
「……」
確かに、それもそうだ。
「悪魔ベルゼブブに本来の神性を取り戻す」という目的は、「契約という概念を大切にしている悪魔に恩を売る」ということにもなる筈。
悪魔の力をコントロールしようとしている魔術学院連合の目的と合致しないでもないような気もするが……。
わざわざ「連盟」を名乗っているくらいなのだ。
ベルゼブブに神性を戻すことが魔術学院全体の利益になるのであれば、わざわざ連盟や派閥を名乗る必要も無いだろう。
それが学院のスタンダードになるのだから。
逆に言ってしまえば、それが普通ではない状況ということは、ベルゼブブが本来の力を取り戻すことに反対している、或いはその先を危惧している人間が、少なからず学院に存在しているということだ。
「兄さんの味方なら、私と霊音ちゃんと蘆屋さんがいる。ベルちゃんと山村さんは……味方かは分からないけど、兄さんを容赦なく殺そうとしてくる敵では無いよね。そして、今のところ他に敵は見当たらない。……でも、連盟に入ったら、その目的に反対する人が襲ってくるかもしれないって……そう考えられちゃうでしょ?私は、それが心配なんだ」
瑠莉奈は俺の腕にしがみつくように寄りかかる。
「……明日、起きたら書庫まで付き合ってくれないか?」
「いいよ。でも、何で?」
「ベルゼブブについての文献を調べる。その後、山村さんとベルを探してそれぞれ尾行。拠点の場所と雰囲気、それと、出来る限り多くの連盟員の姿とか声とか……そういうのを把握する。で、帰って連盟に加入しても大丈夫かどうか、情報を集めた後で改めて相談したい」
「……分かった。尾行を始める時は私に言ってね。『バラル』で、山村さんとベルちゃんの認識を阻害するから」
「ああ。明日、よろしく」
俺はベッドに横たわり、壁の方を向いて目を閉じる。
「お休み、兄さん」
瑠莉奈も俺のベッドから立ち上がって、バスローブと自分の魔力で作り出した服を入れ替えて自分のベッドへ横になり、掛け布団の中に包まった。
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