第2話 私、林幹雄(48歳)VSゴブリンという生き物たち。

私は「林幹雄」

みんなからは、おい林と呼ばれている。

先日、異世界に転生した48歳独身男性だ。


この世界では、

とりあえず居住スペースを確保し、

仕事は道具やとして身をおくことにした。


そして、この世界についてわかったことを述べていこうと思います。

まず、この世界の通貨はゴールドと呼ばれる金貨である。

末恐ろしいことに紙幣はなく、更には1ゴールド硬貨しかないということらしい。

何が不便かというと、持ち運び辛く

そして、重いのだ。

1000ゴールド持とうとすると、

約7.8キロ分の金貨を持たなくてはならないのだ。

なんと不便な世界なのだろうか。


まだある。

この世界の住民の多くは、同じことばかり話すのだ。

例えばこの街の門付近に立つ近衛兵のような男は、

「ようこそモールの街へ!」

としか話さないし、そこの女性は

「あーあ、またメガネを無くしてしまったわ」

としか話さない。

なんなのだろうか?


挨拶をしても、

「ようこそモールの街へ!」

道を聞いても

「ようこそモールの街へ!」

名前を聞いても

「ようこそモールの街へ!」

殴ってみても

「ようこそモールの街へ!」

だ。

気持ちが悪い。


また、この世界には宗派というものが存在するようで、これまた厄介なのだ。

そこで口喧嘩する二人の男は四六時中、毎日

ラーメンがどうだのあーだの

うどんがあーだのこうだの。

どうやら、ラーメン派とうどん派で派閥があり、それは高く信仰されているようだ。

無論、私はうどん派だが、ラーメンも好きだ。だから私はこのような過激派には加担しない。好きなものは好きで良いが、人に好きを押し付けることはしない。


そして、もう一つ。

どうやらこの世界にはモンスターと呼ばれる。特定外来生物が存在しているようだ。

アフリカマイマイやセアカゴケグモといったようなものなのだろう。

このモールの街にはお城があるのだが、その門前に掲示板がある、通信欄の横のお尋ね者の欄に、モンスター「ゴブリン」の駆除の申し立てがあった。

どうやら、田畑などを荒らされて困っているのだろう。謝礼も15ゴールドと弾んでいる。


私は、この世界に来たばかりで金がなかったため、このゴブリンという特定外来生物の駆除に向かうことにした。

とりあえずモンスターというものはなかなかに凶暴であるらしく、剣や鎧、盾などを装備して出かけるのが一般的らしいが、私にはそんなもの必要ない。

特定外来生物の駆除なんてものは、だいたい知っている。たいがいは網とカゴさえあればどうにかなるもんだ。


私はジャージにカゴをぶら下げ、網を片手にゴブリンの駆除へと向かった。


森に近づくとそれらしきものがいた。

それは、張り紙にあった絵と大体同じ生き物だった。

だが、問題もあった。

そのゴブリンという生物は人間の小学生ほどの大きさの生き物で、限りなく人間に近い容姿をした生き物だったからだ。

ただ人間と違い、鼻は大きく

肌も緑色をしていた。

私は特定外来生物と聞くと、

亀や魚、虫といったような小さな生物を思い浮かべていたからだ。

まず、カゴにも、網にも入るサイズではなかった。というよりそもそもが私が軽々と駆除できるものではなかったのだ。


だが、引き受けた以上はやるべきだと思った私は、ゴブリンという生き物に先手の一撃で全てを決めてしまうべく。

ゴブリンという生き物がこちらに気づかぬ間に背後へと忍び寄り網をかけることにした。

齢40を超える軟弱で凝り固まった足回り、激重フットワークでどうにか近づき網をかけるすんでのところまで近づいた。いや、そこまでは近くなかったのかもしれないが、必死な私からすれば相当近づいた距離だった。

だが、他にいたゴブリンという生き物に取り押さえられてしまった。


私はその知性、動き、そして社交性から

ゴブリンは人間にかなり酷似した、

危険な生物なのだと感じた。

例えるなら、野生のチンパンジーだ。


おそらくこのまま捕まってしまえば

ただでは済まないと

直感で感じ取れた。

その悪意、人間のそれと似ていた。

おそらくこの生き物に捕まった後は、

想像のつく地獄が待っている。

そう思った。

私はここから全力で抜け出さなければならない。


私は、ここで全身全霊の力。

一将万骨、獅子奮迅、背水の陣、

まさに赤壁の戦いの武将のような、

最高のパフォーマンスでここを乗り切る、

私は咄嗟に後ろにいるゴブリンという生き物に裏エルボーを放ち、その大きな鼻に一発食らわせてやった。一匹は鼻血を出して、後ろへと吹き飛んだ。

そして、わたしの右肘の関節は「パキッ」

っと粉砕した。

これが48のおっさんのジレンマだ。

本気を出せば、体がついてこない。

私とこのゴブリンという生き物のダメージは同じくらいだ。もはや、やってられんレベルだ。


だが仕事はまだ残っている。

あとはもう一匹の目の前にいる無傷のゴブリンという生き物をどうにかしてやらないと、、、。

と、私が立ち上がろうとするその刹那

ゴブリンという生き物は、圧倒的に軽いフットワークで私の背後に回り込み、

ヒモのようなもので私の首をギュッと絞めてきた。

これはまずいと、私は必死に抵抗した、

まずゴブリンという生き物の腕をどうにかしようと思ったが、体格に見合わず力が強くどうにもならない。

まずい、意識が遠のく。

私は、次にヒモのような何かを引っ張り少しでも、

首への締め付けをゆるくしようと抵抗した。

その瞬間、「プツン」と

ヒモのような何かは途中で切れた。

よく見るとそれは、蕎麦の麺だったのだ。

なぜ蕎麦?

これは、助かったとまた肘鉄を顔面(特にでかい鼻)に食らわしてやった。

そして、また私の肘は「パキッ」という音を鳴らして、甚大な被害を受けた。


これで、私、林幹雄(右の肘に爆弾を抱える)とゴブリンという生き物(二体中二体とも鼻に甚大な被害を受け寝そべっている)。

そして、この中で地に立つはわたしだけ。

そう、私は勝利したのだ。

私は報酬のために、この生き物たちを網でどうにか捕縛した。

このまま街に戻れば、ミッション完了だ。

ジェームズボンドから拍手と寒いギャグを聞かされ祝福されるだろう。

しょうもない妄想を膨らませながら、

ダラダラと歩き街まであと2.300メートルのところまでたどり着いていた。


だが、私の体はこのゴブリンという生き物との激しい戦闘と、その生き物たち(私の推測で一体20キログラムほど)を森から約数キロ運んだためもうヘトヘトであった。

足には乳酸がしこたま溜まり、もうこのあと少しが踏破できない状況にあった。


ちょうどいい大きさの石に腰掛け、

水筒に汲んでおいた水をグビグビと飲んだ。

心地よい風が顔と首を滴る汗を冷やし、

熱くなった身体を癒した。

鳥のさえずりが聴覚を癒し、

自然の緑が視覚を癒した。

現代社会では、なかなか体験できない

自然の癒しを身体全てを使って堪能している。

足元にはアリがいて、

ちょこちょこと食べ物の残骸を運でいる。

小鳥が肩に止まり、私の肩をトントンと突いた。私が頭を撫でようとすると飛んでいってしまった。

そして、網にかかっていたゴブリンたちが、

もぞもぞと抜け出している。


ん?


ちょっと!何してんのぉ!?

なんで抜けてんのぉ?!

ゴブリンは私が思っていたより利口だったようだ。

正直、ここで逃げられてしまったら、

一ミリも追いかける体力はなく、

そのまま見逃すことしかできない状況にあった。


だが、それは逃げた場合だ、

ゴブリンという生き物の

一匹は私の方に襲いかかってきたのだ。

なんたる凶暴性か、

私は、他の感情を抑えて

動くのが面倒くさいという感情が強く芽生えていた。

だが、やるしかない

私は重い腰を上げて戦闘姿勢を取った。

まさに、金曜日の朝

今週最後の就業につくサラリーマンの起床くらい重い身体だった。

私は、この状況でこのゴブリンという生き物を倒して、かつ役に立たなくなったズタズタの網の代わりを探し出して縛ってかつ、あと200メートルほどの距離を移動しなくてはいけないのだ。

とりあえずは目の前のこれをどうにする。

ゴブリンという生き物が私の右手の射程圏内に入ると、

私はゴブリンという生き物の鼻を狙ってジャブを放った。

ゴブリンという生き物は私より3.4回りほど小さいためリーチという戦闘力の差があったが、歳という戦闘力の差の前にはどうにもならなかった。

遅すぎるフットワーク、

一間置いたタルすぎるジャブ、

加えて覇気のないスナップ、

おそらく自然で幾度となく危険をくぐり抜けてきたであろう、現役の野生児

ゴブリンという生き物の前では無力だった。

あっという間に、ジャブをくぐり抜けられ

首の後ろに飛びつかれ、羽交い締めのように

私の首を絞めてきた。

死、、、死ぬぅ、、、。

と思った。

最後の力を振り絞り、

また、ゴブリンという生き物の鼻に向かって

肘鉄を放つと、クリーンヒットした。

そして、ゴブリンは倒れ込み。

私は肘をぶっ壊し、倒れ込んだ。

その後、縄、、、!網、、、!

何かヤツを捕まえるもの、、、!

と懐をまさぐると、私が元世界から引き継いでいたのであろう、うどんのパックが入っていたのである。

わたしはそれを使い、今倒したゴブリンという生き物を捕縛した。

もう一匹のここまで捕まえて持ってきたゴブリンは森へ逃げていったみたいだ。

私は、間髪入れずに街へと戻った。


私は、ゴブリンを駆除申し立てをした

政府(お城)へと報酬と身柄引渡しのために訪れた。

すると、門兵に

「駆除依頼のクエストを受注しますか?」

「えぇーっと、、、いやもうやってきて、

ここにほら

ゴブリン、、、これでしょ?」

と言うが、

門兵に

「駆除依頼のクエストを受注しますか?」

「だーかーらー

見たらわかんだろぉーがよぉ!

さっさと金渡して

このよくわからん生き物どうにかせい!」

門兵

「駆除依頼のクエストを受注しますか?」

「うるせィ!

じゃあ受けるよ!受ける!

ほら、ここにいるだろぉ

よくわからんねぇ緑の生き物がよぉ!?」

門兵

「では今から50分以内に

ゴブリンを三匹討伐してください」


「、、、。

もう、帰って寝ますわ。」


私は香川県産のうどんが絡まった。

緑の生き物を門兵の前に置き

その場を去った。


そして、自宅に帰ると

水で体を洗い流し、

ゆっくりと就寝した。



次回、「蕎麦派ゴブリンに復讐される林幹雄」



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異世界に生命を宿したうどん大好きおじさん林幹雄48歳(戦士) 林幹雄 @nasumaboo

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