第3話 今まで食ったカボチャの個数をおぼえているのか?
「つまり願いを使わずに成し遂げられれば、丸ごと奇跡を頂戴できるって訳だ」
いやいや、しっかり三つ使い切って誠心誠意やらせていただきますよぉ!
「オヌシたぶん心の声と口に出している声が逆になっとるぞ」
「なにぃ!?」
そんな馬鹿な。金城鉄壁の心を持つオレがそんな初歩的ミスを犯すとは!
あまりの動揺に自制心のコントロールを失ったようだ。
「まあ好きにするがいい。オヌシの召喚が成功したからには、運命はこのワシに『肉料理』を選んでくれたのじゃ。じゃが運命はオヌシがやり遂げるとは言っておらぬ。失敗すればボッシュートだという事は忘れでないぞ」
何を言っているのかチンプンカンプンちんちんちんである。
「また意味の分からんことを。結局成功するのか失敗するのかどっちなんだ?」
「過程が消し飛び、肉料理という結果が残る。運命は決しておるが、過程は未だ曖昧じゃ。つまり『オヌシは失敗したが、色々あって肉料理文化は根付いた』という結果になってもおかしくはなかろうて」
なん……だと?
「欲をかくのもいいじゃろが、ワシも出来るなら早いほうがよい。オヌシの代で運命が決することを望んどるぞい。もうカボチャは嫌じゃ……」
オーケーオーケー分かったよ。
要はオレが依然変わらずバッチリ肉文化を広めればいいんだ。そして、そのための奇跡の行使を最小限にすれば、オレにもバッチリ見返りがある。
ウィンウィンだな。
そうなってくると願う奇跡の内容がより重要になる。
最小限の行使で最大限の効果を得られる願いにしなくてはッ!
オレはひっくり返ったちゃぶ台を起こして、その上にドカリと腰を掛けた。
足を組み、膝の上で頬杖をついて思考に没頭する。ロダンの『考える人』だ。
「よしジジイ、とにかくまずは情報だ。まずはお前の世界のこと教えてくれ」
「知らぬ」
ズコーッ!
思わずちゃぶ台から新喜劇バリにコケてしまった。
「知らんってどういうことだよ。お前の世界だろうがッ」
「いやーワシゃあオヌシを召喚するのと、三つの袋を作るのに全パワーを使っちってのぉ。それでも足らない分は記憶とか威厳とかも燃料にしちゃったから、もう絞りカスの素寒貧なんじゃ」
「おいおい、記憶と威厳とか燃料にしていいのものなのか?」
「いいんじゃいいんじゃ。記憶ったって人類の奴らは悪いことしてばっかりじゃし、覚えていたって胸クソじゃ。あー人類滅ぼしたいのぉ。まあとにかく今となっては思い出せぬ。ゴミ箱フォルダも空じゃ」
コイツ無茶苦茶だな。そんなんだからカボチャ料理しか文化が発展しなかったんじゃねえの?
オレは再びひっくり返したちゃぶ台を起こした。
そしてちゃぶ台の横に座り、天板の上に両肘をついて口の前で手を組んだ。ネルフの『考える司令』だ。
改めて考えてみる。そうすると、ほとんど事前状況が分からないまま異世界に行くことなっちまうじゃないか。それはちょっとリスキーだな。
「じゃあ現地に行ってみて、調査の上で願いを決めるってことになるんだな」
「あちゃー。それもNGじゃなー」
ナヌーッ!? もう何なのコイツやる気あんのかよ!?
瞬間湯沸かし器並みに沸騰したオレはジジイの襟首をつかみ上げ拳を振り上げた。
「ストップストップ! しょうがないんじゃ。その三つの袋はそう見えてスンゴイものなんじゃからして、もう神パワーゼロじゃ。だから無暗に次元は渡れないんじゃ。凄十なんじゃ!」
振り上げた拳はそのまま引っ込めるのは癪だったので、ジジイの頭に振り下ろしておいた。「なんでじゃ!」
か~ッ! さらに難易度がアップしてしまったじゃあないか。
肉食文化が根付いていない根本的原因が分からなくては、こっちは対処のしようがないぞ。
仮にその原因が『食肉に適する動物がいない』という理由でならば、奇跡を使って牛なり豚なりを世界中にばら撒けば解決への糸口になるだろう。
しかし原因が『宗教上の理由』だったとすれば、話はまったく変わってくる。
牛や豚をばら撒いて異世界に行った挙句、現地人に「牛・豚・鶏その他色々いっぱいいますが、生き物を食べるのはいけないことだと思います」と言われれば目もあてられない。
他にも、衛生上の理由かもしれない、消化器官等の生物学的な理由かもしれない。はたまた環境が悪いのか。
圧倒的っ……圧倒的、情報不足!
そういった意味で頼みの綱だったジジイは痴呆症ときていやがるッ!
これはもう使わざるを得ないのか……。
覇王翔吼拳を使わざるを得ないのか……。(錯乱)
「よしジジイ。最初の願いを使うぞ。一回現地を下見に行かせてくれ」
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