第7話 こら、ガキ共

 「父さん、待って!!」

俺は扉を閉めかけた父さんを、慌てて引き留めようとした。父さんは動きを止めて、俺の方を向いた。

 「どうしたの、そうくん?そうくんの部屋に、洗濯した服を持っていくだけだけど。もしかして、父さんに入られるのは嫌なの?」

 父さんはショボンとした表情を浮かばせ、子供みたいな無垢な顔でこちらを見る。

 「いや、別にそういうわけじゃないけど……」

 「じあゃ大丈夫だね」

父さんは笑顔でそう言い放つと、扉を閉めて、どんどん階段を登っていった。俺はその行動に対して少し出遅れながら追いかけた。



 「そうた君、凄い勢いで、こっちに来てるな」

あたしは少々激しめの足音を察知すると、読んでいた本をショルダーバックに戻した。しかし、そうた君はどうして、こうも、勢いよく向かってきてるのだろうか。

 別にあたし悪いことしてないし、強いて言えば本を勝手に取ったくらいなんだし……

 そんなことを考えてると、部屋の扉が開いた。

 「そうた君、そんなにい……」

息を切らして、青ざめた顔をしているそうた君と、そうた君よりも一回り大きいエプロンを着た男性が、扉の手前に見える。

 「そうくんのお友達?」

 「……うん、父さん」

この人はそうた君の父親なのか。ガタイがいいし、なんというかそうた君とは対照的な気がする。というか、今あったばかりなのに友達なんだ。

 「そうなんだね。そうくんにお友達ができるなんて……なんて言う名前なの?」

 「アリーナ・フックス」

 「そうアリーナちゃん、そうくんが世話になってるね」

……これはどういう状況なのか。というか、そうた君外方向かないで!

 「何があったのー?」

 「そうたの彼女か」

奥から無垢な声がして、あたしやそうた君よりは年上の男の人と女の人が、顔を覗かせた。

 「ねぇそうたとはどんな関係なのー?」

 「君、魔法使いみたいだね」

 よくわからないところで、沢山の人に囲まれて、頭が混乱する。見た感じは、そうた君が一番年下なのに、そうた君が一番おとなしい。この人たち、もう聞き取れないくらいあたしに、話し掛けている。まるで、新しい物を見る子供だ。

 「小学生?」

おい、今のははっきり聞こえたぞ。

 「16ですけど」

「しゃべった~」とかなんとか言って、滅茶苦茶に騒いでいる。唐突なドタバタに正直頭が追いつかないが、、精神を無にして耐えるのだ。

 「こら、ガキ共アリーナちゃん困ってるじゃない」

 尖った口調で、私の目の前に現れたのは綺麗な顔立ちに、サラサラの髪の大人な女性は、あたしに手を差し伸べた。

 「大丈夫?コイツら変なことしてない?」

 「大丈夫です。というか、みんな元気ですね」

 「コイツら活きだけは良いからねぇ。こいつが、そうたの父親の陵矢、私が母親の美波、んで、長男の陽汰と、長女の安美、済まないね、家族が」

 なんというか、皆キャラが濃い。異世界の家族はこういうものなのか。なにはともあれ、みなみさんのおかげで、質問ラッシュからは免れた。

 これだけ忙しい家族がいると、結構みなみさんとそうた君は、苦労してるのかもしれない。


 でも、こんな家族がいたら毎日楽しそうだな……

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