第6話 家族……か……

 「ところで、どうやってここに来たん?」

そうは言われても、明らかにゲートっていうか、そこそこの大きさの穴が、ここに……

 「えっ!?ない!!なんで!?」

 そうた君は、頭の上にクエスチョンマークを浮かばせているが、あたしも混乱している。

 「ない?なにがだよ」

 この反応は分かる。何も知らない人に、急にこんなことを言ったら、普通にそう言われる。一旦冷静になろう。

 「えっと……」


 あたしは、ここまで来る前の起こったことを、ある程度詳細に話した。しかし、この手の話の理解度合いが高いのは、なぜなのだろうか。

 「アリーナさんの話が、正しいならば、確かにゲートが何らかの理由っで、なくなったってこと?」

 「それ以外考えられない。あと、アリナでいい」

 …………………。

 分からない。ゲートはどこへいったのか。

そして流れる、沈黙という間みたいな沈黙。

 「「帰れなくね!?」」

 どうしよう、もしかしてリナ子に、いつかできる彼氏を見せつけて、マウントとることも……いや、それは帰れても無理か。

 この世界魔法がないなら、魔力の補充ができる食材が、あるとも限らないし、課題終わらせてないし、あたし終わっ……

 「そうく~ん!!ご飯できたぞー!!」

そうた君の顔は、血の気がひいて真っ青になっていた。そんなにびびる相手なのか?今の声の主は。

 「父さんだ……ごめん、ちょっと待ってて」

 そう言うと、いそいそと部屋を出た。とっとっとっと、足音が耳に残って、次第に消えていった。

 一瞬、多分そうた君が、お父さんがいるであろうところの、ドアを開けたとき、楽しそうな声が耳に入った。

 「家族……か……」

暖かい声達が、団欒しているしている風景が脳裏を過って、ふと、呟いていた。そして、この世界は、退屈な世界ではないかもしれないという、淡い期待が生まれていた。

 しかし、それと同時に、今の声とは対照的な、父親の像が薄らと、それでいて存在は大きく、浮かんできた。



 最後に顔を見たのは、二年前だったかな。

 「生活費は気にしなくていい。小塚いは計画的に使え。私立ヴァーグナー大学付属高等学校に進学しなさい。受験の手続きは気にするな」

 その一言と、お金を沢山置いて、すぐに去っていった。見慣れない黒い服と、革の鞄を握った後ろ姿は、あっという間に消えていった。

 そんな父親が、嫌いだった。いつもあたしを一人にして、冷たいお金を側に残す。愛情は金で買えると、真顔で言いそうな人だ。

 父親にも事情があるだろうけれど、仕事のことを何も教えてくれないし、必要最低限のこと以外で、口すら開かない。一方的に要件を言って、あたしが話しかけると、まるで聞こえていないかのように無視をする。


 だから、家族の暖かさは、熱いくらい伝わってくる。

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