第3話 つまらない世界

※雰囲気がちょっとあれです


 つまらない世界。春思期真っ盛りの自分は、そんなことを思っていた。


 俺は、さっき倉庫から取り出したロープを、強く握り締めていた。楽な方法ができるならその方法をしたいのだが、をする方法を、俺はこれ以外で知らない。



 中学生までは、簡単に成績を伸ばせた。どちらかといえば、成績上位組にいた。だから親の期待は今でも大きい。

 しかし、突然成績が下がり始めて、気付けば前まで正直見下していた人に呆気なく抜かれてしまう始末。

 人間関係も微妙で、幼馴染み一人を除けば、友達未満知り合い以上という関係になるだろうから、ほとんど孤独だ。

 初めから底辺だったら、可哀想なんて言ってくれる人がいるかもしれない。

 才能があったり、努力家だったりしたら、親の期待が辛いことはないかもしれない。

 けれども残念なことに、自分は中途半端だった。


 物語で出てくるキャラクターには良くも悪くも個性があって、一人一人にドラマが、あって……。

 だから、俺は好きだった。ラノベとか、漫画とか、そういった創作物が。

 でも、それは“創作物”であって、どこかの誰かが描いた夢物語に過ぎない。

 だから俺は、つまらないなんて思っていた。

 そういった夢の憧れが強くなる度に、現実は受け入れ難くなってくる。

 きっと自分は、ごく一般的な思春期の子供で、もっと大きなことで、悲しんだり、悩んだりしている人はたくさんいると思う。


 でも、俺は辛くて、誰かはもっと辛くて、俺は友達が少なくて、誰かは友達がいなくて、俺は成績が下がっていて、誰かは努力しても底辺で、俺は幸せで、誰かはもっと幸せで……


 段々分かんなくなって、最終的に、

 「このつまらない世界から抜け出そう」

そんな言葉が出てしまった。

 でも何故かそこに、後悔とか、止めようという感情は湧かなくて、少しだけ晴れがましい気持ちになっていた。

 それに、自分の部屋から見る夜景は、なかなかに綺麗だ。この世界の最後がこれなら、よかったとすら思う。



 今までに感じたことの無い、不思議な感情をガソリンに、自分は階段を上る。心成しかいつもより速く進んでいる気がする。

 家族がリビングで騒いでいる。三つ上の兄と一つ上の姉は明るく、兄に関しては、もう成人しているというのに、自分よりも子供みたいだ。親も仲が良く、そんな自分とのコントラストが、重い鎖のように絡み付いてくる。

 俺は二階にある、手前から三番目にある部屋の扉の前に、立ち止まった。

 ドアノブに手を当てると、急に鼓動が速くなった。さっきまで勢いがあったのに、目前になると恐怖を見せつけてくる、がその手を止める。

 俺は、息を深く吸ってゆっくり吐き出すと、なんだか笑みが浮かんできた。


 そうだ、俺はもういなくなる。覚悟は決めた。未練も後悔も、そんなものはもう捨てた。


 そんな風に自分を言い聞かせて、自分はドアノブを引いた。

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