第1.5話 ヴァー高

「リナ子、今日帰れる?」

リナ子ことリーナに、あたしはローブを被せる。

 あたしと同じ制服に、赤いリボンでお洒落している。リナ子は先程終わったばかりの授業から解放されて、ふと脱力していたようだ。

 「ありんこ~まえ見えない~」

 リナ子は機嫌の良い明るい声を出しながら顔をあたしに向ける。

 「ごめん、ごめん」

あたしはリナ子に被せたローブを、少し焦らしながら持ち上げた。

 現れたリナ子の顔は、優しい笑顔であたしを見ていた。同性であるあたしですら、思わず綺麗と感じさせる整った顔立ちは、取って付けたいほどである。

 「あ、あとすまないね、アリーナ・フックスちゃん。私は今日、フィン君と一緒に帰らなくてはいけないので」

 どこか自慢気に話す彼女の言葉は、やっぱり自慢話だった。というか、なぜかフルネームで呼ばれたのだろうか。

 「のろけ話ですか。その容姿だと、羨ましいとすら思えないので止めて下さい」

 流石に子の流れでのろけられては、あたしの精神に大いなるダメージを受けてしまうので、ここは止めなければならない。

 リナ子は、椅子の背もたれに組んだ腕を乗せるとニヤニヤしながらあたしの胸部を眺めてくる。

 「そっちでも仕掛けて来るか。リナ子め許すまじ」

 「お怒りですか、ありんこちゃん。私は小さくてもいいと思うけどな」

あたしはそっと自分の胸部を見る。身に纏っている制服は、あまりにもフラットで、内側のスポブラの意味が分からないほどである。小さいとまな板では、いや変なことは考えないでおこう。

 「リーナさん」

 教室の外から、男の子の声がした。どれどれと右手を向くと、そこには異性であるあたしがカッコいいと思えるほどのイケメンが、教室の扉の前に立っている。もしあたしが男の子だったらあの顔を取って付けたいほどだ。

 「フィン君だ~。またね、ありんこ」

 話の流れ的に、なんとなく気付いていたけれども、あの人がリナ子の彼氏……。美男美女カップルって、本当にいるんだな。

 羨ましいな、少なくとも容姿はお似合いなんだし。

 ……帰るか、あたしも。


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