ごめんね清くん
「亜子さん、大変なときに清に会いに来てくれてありがとう」
清くんのお姉さんが出迎えてくれた。
祭壇には中学校の入学式のときに撮影した満開の桜のしたで笑う清くんの写真が遺影として飾られていた。
蝶子ママと白い花を一本ずつ捧げ、静かに手を合わせた。
「ごめんね、清くん。私、自分のことでいっぱいいっぱいで何もしてあげられなかった。助けることが出来なかった。ごめ…ん…ーー」
最後は涙に飲み込まれた。
小学生のとき、読み書きが苦手で、簡単な計算も出来なかった私。授業を受けていてもなにをしているのかさっぱり分からなくていつも空を見上げ、ぶつぶつと一人言を口にし空想の世界に浸っていた。人付き合いが苦手で、空気が読めなくて、いつもひとりでいた。
中学校に進学しても新しい環境にいつまでたっても慣れなくて。クラスにも馴染めなかった。
「いっぺんに色々言われて頭が真っ白になってパニックを起こしたとき、清くんが大丈夫って声を掛けてくれたよね。清くんは、私のその何倍も辛い思いをしていたのに、それなのに優しくしてくれたでしょう。私、拒食症を克服して、清くんの分まで精一杯生きる。もう二度とイジメで大切な命が奪われるのをみたくないもの。清くんの優しさに救われたこの命、私もいつか誰かを助けたい。だから、約束を守るようにちゃんと見てて」
痩せて骨と皮だけになってしまった皺くちゃの手で涙を拭い、鼻を啜りながら遺影に話し掛けた。
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