第34話 新メンバー加入

「ちょっと待ってください」


 しかし最大の援護射撃はロベルトさん本人から放たれた。


「お気持ちは有難いのですが、私は最初にソニアさん達から誘われています。彼女達には恩もありますし、せっかくのお誘いで申し訳ないのですが・・・」


 ロベルトさんは神妙な面持ちでそうアリアに答えた。よーしよく言ったロベルトさん!このままなし崩しにアリアもロベルトさんもパーティーに参加させる方向に行かせてもらう!


 しかし俺が発言するよりも早く、アリアが話し始めてしまった。


「そうですか・・・。すみません強引に誘ってしまって・・・。実は最近仲間と悲しい別れが立て続けだったものですから・・・」


 うつむいた顔でそんな事を言い出すアリア。悲しい別れっつーか、どう考えてもあんたのせいだけどな。


 しかしはた目にはアリアが悲劇のヒロインのように映っている事だろう。何しろ内情知ってるおれでも錯覚してしまいそうになる。


「そうだったんですか。よろしければお話をお聞かせ願いますか?」


 アリアの言葉に心から同乗しているロベルトさん。まずい!せっかく良い流れがこちらに来てたのに!


 このままではロベルトさんが同情心からアリアパーティーに行ってしまう可能性が!どうすればいい!?


「はい、一人目のメンバーは私達が未熟で不甲斐ないばかりに強敵のつめに・・・。そして最近、何者かに魔法陣を破壊されてダンジョンで生き別れになってしまいました・・・」


 そしてそっと涙を拭うアリア。その魔法陣の話を出されると、俺としては話に割って入りにくいんだが。


 ふとソニアのほうを向くと、クエストが張り出されている掲示板の前に移動しており、完全に見ざる聞かざるを貫くようだ。あの野郎!


「なので、いくら勇者とは言え一人で行動するのは心細く、妹のソニアが信頼するあなたならと、つい暴走してしまいました・・・。申し訳ありません」


 そう言って、涙をぬぐうアリア。そして完全に同情の目でアリアを見ているロベルトさん。


 あれ?これやばくね?このままだと、アリアとロベルトさんだけでパーティー作っちゃう流れじゃね?


 まずいー!せっかく異世界に来て初めて俺に興味を持ってくれた異性だというのに!サイコパスだと言う点を除けば、美人だし年上だし、言う事無しなのにー---!


 もちろんアリアのサイコパスな面をロベルトさんに暴露すれば、アリアがロベルトさんと一緒に組むことは無くなるだろう。しかしそれと同時に俺とアリアが組むことも消滅してしまう!


 どうする?どうする俺!?


「駄目よ!ロベルトさんは私のパーティーに入るのが決まってるんだから!例えお姉さまでもこれは譲れないわ!」


 俺がどうしようと悩んでいると、いつの間にか掲示板から戻ってきていたソニアが力強くそう断言する。


「私達とロベルトさんは誰にも邪魔できない深い絆で繋がっているの!」


 そのソニアの言葉に「はっ」とした表情になるロベルトさん。いいぞソニア、もっと言ってやれ!


 しかしこいつすげえな!よくこの空気の中その発言が出来たな!?しかし今はこいつの空気を読まない性格がありがたい!


 しかしこれで状況は五分に戻っただけ。事態は膠着したままだ。そう思っていると・・・。


「ソニア、出雲優いずもすぐる、ちょっとこっちへ」


 突然アリアが俺とソニアをギルドの隅っこへ来るように言い出した。


「何ですかお姉さま。何を言われてもロベルトさんは渡しませんよ」


「そうですよ!アリアさんも一緒にパーティーに来るべきです!」


「ちょっとなんでそうなるのよ!私はロベルトさんだけを誘ってるの!」


「ちょっとあんたは黙っててくれ!」


 もうお前は何も話さなくていいから!変なこと言ってアリアさんが離脱しちゃったら本末転倒だから!


「あの小高い山の山腹の洞窟にあった魔法陣」


 俺とソニアがギャーギャーと言い争いをしていると、アリアが突然静かにそんな話をし出した。


「あれ壊したの、あなた達じゃないわよね?」


 顔は笑っているが目が笑っていない。やばい、これは本気だ。絶対肯定こうていしちゃダメな奴だ。


「ち、違うわよ~お姉さまったら何を言ってるのかしら~おほほほほ」


「そ、そうですよ~そんな場所行った事もありませんよ~ねえソニアさん」


「ええ、そうですとも優さん」


 ソニアは平静を装い笑おうとしているが、どう考えてても引きつった笑いにしかなっていない。多分俺もそうだろう。


「そう、わかったわ。でももし・・・」


「もし!?」


 やばい!こえが裏返ってしまった!


「もし犯人を見つけたら教えてね?ぎったぎたのズタボロにしてあげるから。ええ、絶対ただじゃ済まさない。地獄の底まで追いかけても制裁するから」


 そう、笑ってない目で俺達に言ってきた。


「も、もちろんよ!お姉さまを危険な目に合わせた奴をゆ、許しはしないわ!」


 ソニアがすげえ汗だくになりながらそう断言した。


「そう、ありがとう。ところで・・・」


「と、ところで?」


「私とロベルトさんがパーティーを組むことに異存はあるかしら?」


「「ないです・・・」」


「ありがとう」


 今度は満面の笑みで俺達にそう答えた。


 そしてそのままアリアと共にロベルトさんの所へ戻ると、


「ロベルトさん、ソニアと優さんがロベルトさんと私でパティーを組むことに賛成してくれました」


 と、明るい声で宣言した。


「え?ソニアさん本当ですか?」


「本当です・・・。アリアは勇者として信頼できますし、経験も豊富なのでロベルトさんの最初のメンバーとして最適だと思います」


 ロベルトさんに問われたソニアは、蚊の鳴くような、それはそれはか細い声でロベルトさんに返事をした。


「えっと出雲さん?」


 そんなソニアの様子を見たロベルトさんは、今度は俺に確認をしてくる。


「アリアさんと一緒にクエストを受けましたが、ここぞという時の機転の早さや、経験からくる的確な判断能力など、ロベルトさんの冒険生活を豊かなものにしてくれると思います」


 なので俺も思い切りアリアを持ち上げる返事をした。


「そ、そうですか・・・」


 それからしばらく考える仕草をしていたロベルトさんだが、


「よし、わかりました!信頼するお二人がそれほどいうのなら、アリアさんとパーティーを組んでみたいと思います!アリアさんよろしくお願いします!」


「ええこちらこそ」


 と、話はまとまったようだ。


「それじゃあ今後の方針についてあなたの家で会議をしましょう」


「僕の家ですか?まあ、構いませんが」


 そう言って二人は俺達に挨拶をして、ギルドを出て行った。アリアパーティーにロベルトさんという将来有能な新メンバーが加入した瞬間だ。


 そして残された俺とソニアは、テーブルに目を落として二人でどんよりと俯いていた。


 くそー!なんでこうなった!?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る