第33話 私とパーティーを組んでもらえませんか

「ロベルトさん!」


 木の裏側から出てきたのは何とロベルトさんだった。


「何とか間に合ってよかったです」


「あの、今の魔法はロベルトさんが?」


「はい、実はギルドで話を聞いてすっ飛んで来たんですよ。でもまあ、まずはその女の子を家まで送りましょうか」


「あ、そうですね」


 そして俺達は、無事に保護した「ミケ」と飼い主のマリーちゃんを家まで無事に送り届けたのだった。


「ありがとーお兄ちゃんお姉ちゃん!」


 マリーちゃんは俺達と別れる際もずっと手を振って見送ってくれたよ。ミケと一緒にな。


 最後はミケに引っ掻かれたて散々だったけど、あの笑顔が見られたのなら怪我した甲斐もあったというもんだ。


 そして俺はギルドへの道中、何故ロベルトさんがあの場所にいたのかを聞くことにした。


「実は、たまたまギルドへ来てまして・・・」


 ロベルトさんの話では、ソロでも出来るクエストは無いかとギルドへ足を運んだら、受付の人から迷い猫を見かけたら連絡してほしいという話を聞いたそうだ。


 それでちょうど時間もあったし猫探しをすることにしたんだけれど、猫と言えば高い場所が好きだろうという事で、ずっとそういう場所を探していたのだという。


 そして最終的に大樹の場所へ来たら、あの場面に出くわし、慌ててスローの魔法を唱え、それを俺がどうにかこうにかミケをキャッチした・・・そういう事らしい。


「え?じゃあ本当の本当に偶然だったって事?」


「ええ、僕も今びっくりしています」


 まじか~。なんかそう考えると、ロベルトさんとは運命的なものを感じてしまうな。


 それにしても・・・。俺は俺とロベルトさんの後ろを大人しく歩くアリアの事を振り返った。


 実はロベルトさんが現れてからというものの、ずっと大人しくしてるんだ。


 俺はてっきり、「あら?出雲優いずもすぐる、このイケメンは誰?私に紹介しなさい」等と言ってくるものとばかり思ってたんだが、軽く挨拶あいさつを済ませた程度で全く会話に参加してこないんだ。


 なんかちょっと怖いんだが・・・。


「ただいま戻りました」


 俺達はギルドへ戻ると、早速リリーナさんへ報告を済ませる事にした。もちろん彼女は大喜びで、俺の手を取り飛び跳ねながら喜んでたよ。


「さすが出雲さんと勇者アリアさんのパーティーですね!私信じてました!」


「いえいえ今回はロベルトさんの活躍に凄く助けられたんですよ」


「もちろんですよ!咄嗟にスローを使われたんでしょ?凄くカッコいいです!」


 リリーナさんにそう言われて、ロベルトさんも恥ずかしそうに「いえいえ、そんな事は~」等と言っている。


 そんな和やかな雰囲気の中、俺が心底喜べてないのは、リリーナさんの後ろに物凄い仏頂面で立っているソニアが目に入ってしまっているからだ。


 あいつ、絶対自分を連れて行かなかった事を根に持ってる顔だぞあれは。どうしようかな~等と考えていると、ソニアが俺に声をかけてきた。


「出雲優さん、ちょっとこっちへ」


 そう言って、誰もいない場所へと俺を無理やり引っ張って来た。


「ちょっと!そんな引っ張らないで下さいよ!」


「優さん、一体どういうつもりです?」


「何がですかね」


 まあ大体内容はわかっている。どうして私も連れて行かなかったのか?って所だろう。けど面倒だから何もわからないふりをしてやれ。


「何が?じゃありません!どうして私に声をかけてくれなかったんですか!?」


 ほらやっぱりな!なんでだと?絶対こいつを連れて行ったら邪魔しかしないからだよ!失敗する未来しか見えんわ!


 しかし馬鹿正直にそう答えると絶対不機嫌が加速するので、なんとか誤魔化さなければ。


「あなたのお姉さんが参加したいと言ってきたからですよ」


「お姉さまが?」


 ソニアは疑いの目で俺を見ている。


「なんなら本人に聞いても良いですよ。ソニアさんが一緒に行動したがらない様子の感じだったので、一応気を使ったつもりだったんです」


 嘘だけどな。


「む、むう。まあ、そう言う理由なら致し方ありませんね。しかし今度からは一声かけるように」


 なんだこいつえらそうに!しかしソニアはそんな俺の心情などお構いなく、


「はぁ、もし私が華麗かれいに事件を解決したら、ますます勇者としての私の評判が上がるチャンスだったのに・・・」


 等と、うれいに満ちた表情でぽつりと語りやがった。やっぱこいつサイテー!


「あの・・・」


 俺とソニアの話が終わった所で、今までずっと無言だったアリアさんが話しかけていた。俺じゃなくてロベルトさんに。


「え?なんでしょうか?」


 級に話しかけられたロベルトさんもちょっとびっくりしている。


「あの、突然で申し訳ないのですが、私とパーティーを組んでもらえませんか?」


 アリアが発した言葉の意味がわからず、俺だけじゃなくソニアとロベルトさんもしばらくは無言だった。


「「「ええっー-----!?」」」


 見事に3人のこえがはもってしまった。今まで押し黙っていたかと思えば急にロベルト案とのパーティー要求。いったいどうなってるんだ?


 つーか、クエストやってる途中までは思い切り俺にアプローチかけてたじゃん!


 いや別にさ?アリアが超かわいいからって、急に他の奴の所へ行ってしまうのが惜しくなったとかそういうわけじゃないよ?けどおかしいだろ!?


「お姉さま一体どうしたのよ!ロベルトさんは私達のパーティーに入る予定なのよ!横取りするのはやめてください!」


 よし!よく言ったソニア!俺はロベルトさんもアリアも諦めない!何故なら二人とも俺達のパーティーに必要だからだ!決して下心なんかないからな!


「そうだ!二人ともパーティーに入れば良いじゃないですか!」


 ナイス判断だ俺!しかしアリアはそんな俺の言葉にも全く同意しなかった。


「勇者というのは、一緒に居ても意味が無いわ。それぞれのパーティーで独立し、お互いを補完しあいながら邪竜討伐を目指すのがベストなの」


 俺はアリアのもっともな言い分にぐうの音もでなかった。

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