第31話 冒険者仲間?

 俺達が家出猫「ミケ」の捜索を開始してから数時間が経った。アリアからの指示で、猫は高い場所が好きという事なので、道だけじゃなく屋根の上なんかにも目を光らせている。


 しかし、そう簡単には猫は見つからなかった。まあ、あんな小さな生き物をこの広い町の中で探すのだから、そりゃ難しいだろう。


 なので俺はアリアに提案をしてみる事に。


「あの、アリアさん」


「何?」


「応援頼んだほうが良くないですか?俺達だけじゃ限度があると思うんです」


 ここは初心者の冒険者が集まりやすい町という事もあり、それなりに人口も多い。猫の行動範囲がどれくらいかは知らないが、応援呼んで人海戦術で探したほうが良いんじゃないか?


「あなたの言うこともわかるけど、あまり大勢で探していると猫がびっくりして逃げてしまうかもしれないわ」


 そういうもんなのか・・・。そういえばあまり大きな声で呼ぶなとも言われたな。


「それに応援なら、ギルドに頼んだから」


「え?そうなんですか?」


「さっきちょっとだけ私が抜けた時間があったでしょ?あの時ギルドの冒険者達に猫を見かけたら連絡をくれるようにって頼んでおいたの。」


 まじかよ・・・・こいつ本当にソニアの姉か?サイコパスで痴女ちじょな所以外完璧だぞ。まあ、その点が致命的なんだが。


「じいいいっ」


「ん?どしたの?」


 気が付くと、マリーちゃんが俺とアリアをじー-っと見つめていた。


「あのね、お兄ちゃんとお姉ちゃんは恋人同士なの?」


 そして唐突にそんな事を尋ねてきた。


 なるほどそう来たか。子供って突然何の脈略も無しに話し出すことあるよな。まあこれだけ小さいと、単にクエストを一緒に受けている仲間だとか、そういう認識は持てないのかもしれないな。


 なので俺は猫を探しながら、マリーちゃんに冒険者の説明をしてやることにした。したんだが・・・。


「その通りよ!」


 俺が話そうとした瞬間、突然アリアがマリーちゃんに向かってそう宣言した。


「私とこのお兄ちゃんは、それはもうはふか~い絆で結ばれているの」


 そんなアリアをマリーちゃんは「ふぇ~」と言った感じの表情で見ている。


「ちょっと!あんた何言ってるんだ!あのねマリーちゃん、お兄ちゃんとお姉ちゃんは冒険者仲間なんだよ。断じて恋人では無いの。わかる?」


 俺はマリーちゃんの肩をつかんで力説した。この女はちょっと油断したらこんな子供にまで一体何を吹き込んでくれてるんだ!


「あら?ついに私の事を冒険者仲間だと認めてくれたのね」


「へ?」


「だって今「冒険者仲間」だってこの子に説明してたじゃない。ねえマリーちゃん」


 そう言って、アリアはマリーちゃんに話しかけた。


「え?いやそれは言葉のあやで・・・」


「ひどい!マリーちゃんに嘘ついてたのね!」


 え!?なんでそうなる!それ言うならお前だって恋人だって嘘ついてただろ!


「いやいやいや、そんなわけ・・・」


「お兄ちゃん、マリーに嘘ついたの・・・?」


 しかしマリーちゃんはアリアの言った言葉など忘れており、俺の言葉だけに反応していた。ひいいいいいいっ!やばい!マリーちゃんが泣きそう!


「いやいやいや、違うんだよ~お兄さんは嘘なんかついてないんだよ~」


「ホント?」


「うっ・・・」


 マリーちゃんは純真な瞳で俺を見つめてくる。駄目だ・・・。もうこれ以上否定するのは無理だ・・・。


「ほ、ホントだよ~」


「わーい冒険者だあ~仲間だあ~」


 マリーちゃんは何が嬉しいのか、辺りを喜び走り回っていた。


「これで私達も晴れてパーティー仲間ね」


 この女、最初からそのつもりだったのか・・・!


 いけしゃあしゃあとそう言うアリアを見て俺は、「こいつ・・・!後で絶対ギャフンと言わせてやる・・・」そう固く誓ったのだった。


 それからしばらく3人で町を探したが、ミケは一向に見つかる気配が無かった。


「二手に分かれましょう」


 そしてしばらくしてアリアがそう提案してきた。


「別れるのは良いんですが、猫が見つかった場合どうするんです?」


 アリアの話じゃマリーちゃんがいればミケは経過せずに捕まってくれるだろうと言っていた。


 けど、別れて探し始めたら、どっちかがマリーちゃんがいない状態になるわけで、その時はどうするんだ?


「その時の為にこれを渡しておくわ」


 そう言って、アリアは貝殻かいがらを俺に手渡した。


「えっとこれは?」


「この貝殻を使って、1キロ程度の距離なら私と会話ができるはずよ」


 え!?何その便利道具!俺も欲しいんですけど!


「あの、大丈夫ですか?そんな貴重なアイテム・・・」


「何言ってるのよ。勇者のスキルで特定のアイテムに伝達機能を付与できるのよ。ソニアは使ってなかったの?」


 あの女は勇者の威厳いげんにポイント全振りしようとしていました。


 くそーあの守銭奴め!今度ギルドの人に聞いて、勇者スキル一覧でももらってくることにしよう。それであいつが勝手にポイント割り振らないよう監視してやる!


 そして俺達は「アリア&マリー」と「俺」の二手に分かれて捜索を開始した。


 そうして1時間ほど経った頃。


出雲優いずもすぐる


 貝殻から俺を呼ぶ声が聞こえた。結構はっきり聞こえるもんだな。


「どうしました?」


「ギルドから連絡が入って、丘の上の木の上でミケを見たって情報が入ったの」


「え?ホントですか?」


「ええ、一度合流して一緒に丘まで急ぎましょう」


 俺達はギルドで合流し、丘の上に行くことにした。かなり高い木だという事で、落ちたりしないかアリアがかなり心配していた。


 後、カラス等の取に襲われる危険もあるらしい。これはマリーちゃんに聞こえないようにそっと俺にだけ言ってきた。


 そんな事になったら目も当てられない。俺達は急いで丘に行く事にした。

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