第24話 突入
それからしばらくの間、俺達の間に流れる空気は非常に重たいものだった。「生の
ふとロベルトさんの顔を見ると、相変わらず真っ青な顔色で、もはやそこに感情の色は全く見えない。さっきまでプロポーズの事とか楽しく話していたのに何でこうなってしまったのか・・・。
俺はロベルトさんの方を見る事に耐え切れず、今度はソニアのほうを向いた。ソニアは顔色こそ普通だが、いつもコロコロと変化する見慣れた表情はそこには無く、能面のような表情となっている。
しかし何でこんな事になっているんだ?ロベルトさんの話を聞いた限りじゃ、婚約者さんとは仲睦まじい印象しかなかった。一体何が起こっているんだ・・・。
そんな事を考えていると、家の中が静かになった。どうやら情事が終わったか休憩に入ったんだろう。これからどうすんのこれ?突入すんの?そう思ってたら、
「さて、私は家に入ります。申し訳ないのですが、もう少し付き合っていただけますか?」
そんな事をロベルトさんが言い出した。
「え?あ、はい、それは良いのですが、無関係の僕達が入っても良いんでしょうか?」
だってどう考えてもこれから起こるのは婚約者同士の修羅場だろ?無関係の俺達が立ち入って良いとは思えんけど・・・。
「私が怒りのあまり何かしでかさないよう、見ておいて欲しいのと、まあ、証人が欲しいので・・・と言う所です」
「わ、わかりました!この私がしっかりと見ていてあげますから!」
ロベルトさんの言葉を聞いたソニアが慌ててそう言った。やべえ、ロベルトさん、この調子じゃ何しでかすかわかったもんじゃない。こりゃ確かに目を離さないほうが良いかも。
それにしても、まさか高校生の身でこんな修羅場に居合わせるとは思いもしなかった。うちの親父とお袋も喧嘩こそしていたが、そこまで深刻なモノは見たことないからなあ。
しかしロベルトさん、証人が欲しいとか言ってたけど、俺達を証人にして一体何をどうするつもりなんだろう?
そんな事を考えながらロベルトさんを先頭に、俺達は家の中へと相手に気付かれないように静かに入っていった。家の中へ入りリビングへいくと、女性ものの服が生々しく脱ぎ散らかっていた。しかも予想通り男物の服もそこにはあった。
やばい!今日はそこそこ温かい気温で、しかもさっきまで夏のカラフル山に居たと言うのに、今はまるで極寒の地にいるような寒気を覚えてしまう。1日で四季を経験できるとか、さすがファンタジー世界だな!
いかん、俺も色々と動揺しているらしい・・・。そんな事を考えていると、くいくいっと俺の腕が引っ張られる感覚がしたので振り返ると、ソニアが俺の袖を引っ張っていた。
「どうしました?」
「優さん、あなた良いのですか?あなたの年齢くらいの方がこんなものを見た日には、トラウマになってしまうかもしれませんよ」
俺はソニアが大人としてもっともな事を言い出したのですげえ驚いた。
「あの、どうかしましたか?」
俺が驚いて固まっているとソニアが俺にそう聞いてきた。いやそりゃ固まるだろ?普段だったら「え?そこまでして人の情事に首を突っ込みたいのですか?最低ですね」とか言われそうなもんじゃん。
「いえ、ソニアさんが常識的な事を言ってるので大変驚いていました」
なので俺は正直にソニアに答えた。
「ちょっとあなた!私の事なんだと思ってるんですか!」
「うわ、ちょっと!大きな声出さないでくださいよ!」
ソニアが大きな声で怒りだしたので慌てて止めに入ったが、その俺の声もでかかったように思える。
「誰かいるの!?」
寝室から女の声が聞こえてきた。たぶん、婚約者のフィリアって人だろう。しまった、こっそり部屋に入るはずがばれてしまった・・・とか考えていたら、ロベルトさんが素早い動きで寝室のドアを開いた。
バン!という音と共に開かれたドアの向こうでは、大きめのベッドの上に男女が裸で身を寄せ合っていた。女の方は肩の部分までシーツを引っ張って体を隠している。多分この女性がロベルトさんの婚約者である「フィリア」なんだろう。
そして俺はそのフィリアさんと一緒にベッド身を寄せている男に目を向けた。こいつがフィリアの浮気相手か・・・。なんつーかその、ロベルトさんと違い、色々と「チャラそう」な感じが伝わってくるんだが・・・。
「ロ、ロベルト、お前しばらく帰ってこないんじゃなかったのか・・・」
その少しチャラそうな男は、ロベルトさんの姿を見るとそう声をかけてきた。あれ?こいつ知り合いなの?
「あれ?あなた、あの男と知り合いなんですか?」
ソニアも同じように思ったらしく、ロベルトさんにそう尋ねていた。
「ええ、まあ・・・」
ロベルトさんは物凄く渋い顔でそう答えてくれた。
なんかさ、単なるご近所の知り合いと言うよりは、結構身近な友人のような感じがするんだよなあ。ロベルトさんの事を「お前」とか言ってたし。すっげえ嫌な予感がするわ・・・。
「なぜ君とハリーがこんな事になっているのか・・・。説明をしてもらえますか?」
ロベルトさんのその言葉を聞いて、俺は目の前が真っ暗になるような気分になった。ロベルトさんの口から出た浮気相手の名前、それはさっき聞いたばかりの、ロベルトさんのもう一人の
つまり、幼馴染二人に裏切られたって事かよ・・・。
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