第19話 死亡フラグ
ギルドで受けた破格の依頼、このクエストの内容は「カラフル山への同行者を募集」するのもだ。なんでも依頼者のロベルトさんは、夏のカラフル山に咲くと言う「
カラフル山自体はモンスターもおらず山としても非常に小さいので、危険と言う危険は無いんだけど、やはり一人での行動は推奨されない。
まあそういう俺も、前回のカラフル山でのクエストでは死にかけた上に熱中症の症状まででてしまったしなあ。一人だったらやばかったかもとは思う。熱中症の症状に上手く対処出来たのも、ソニアがこの世界についての知識を持っていたからだしな。
そういうわけで、冒険者になったばかりというロベルトさんを補佐するという形で依頼を受けることになった。
そしてギルドからロベルトさんへ連絡が行き、俺達は4日後にギルドの食堂で打ち合わせをすることになった。
「どうも初めまして!」
初めて会ったロベルトさんはとても気さくな人だった。ソニアもロベルトさんの事を気に入ったらしく「中々出来た人間じゃないですか」と俺に耳打ちして来たりしている。
「でも僕らでよかったんですか?こんなこと言うのもあれなんですけど、僕ら最近冒険者になったばかりでして」
後で話が違う!とか言われても困るので、俺は先に確認しておくことにした。
「あ、もちろんです!勇者さんのパーティーでしたら何の心配もありませんしね」
「なら良かったです」
おお、勇者効果すげえな。
「もちろんです。この男が何か悪さをしようものなら、この私が全力で阻止します!」
と、ビシッと俺を指さすソニア。
「何でですか!そんな事しませんよ!」
「いや、本当に面白い人達だ」
そう言いながらロベルトさんは豪快に笑い出した。
うーむ、本当に良さそうな人だな。正直言うと面倒くさい人だったらどうしよう?とか若干不安にはなっていたんだが、これならうまくやれそうだ。ソニアとも相性良さげだし。
「ところであなた「夏化粧」を採取してプロポーズでもするのかしら?」
突然ソニアがそんな事を言い出した。
「え?その花って結婚と何か関係があるんですか?」
「物を知らない
「最近こっちに来たばかりなんですよ?知らないに決まってるでしょ・・・」
俺は
あれ?何かいい感じじゃね?愉快な仲間とわいわい言いながらパーティーを組んでクエストに臨む・・・。なんか俺が求めていたものが今現実になってる気がする。そうだよ!俺が異世界に求めていたのはこれなんだよ!
「この国では、男の人が女の人にプロポーズをする時に「夏化粧」を送るのが一般的な習わしのです。「この美しい夏化粧の花のように僕の為だけに着飾って欲しい」という意味があるのですよ」
「へえ、なんだかロマンチックですね」
「そうなんです!なのでどうしても夏化粧の花を手に入れたくて!」
「素敵じゃない」
そう言ってソニアもニコニコしている。なるほどなあ。それを持ってプロポーズするって事か、だったらなおさら頑張らなきゃな!
「実はまだ彼女にはプロポーズの事は話してなくて」
ロベルトさんは少し照れながらそう言ってきた。
「あら?じゃあサプライズで申し込むのですね?」
「はい!なので、このクエストが終わったら彼女と結婚しようと思ってるんです」
「じゃあ絶対成功させないといけませんね!ソニア、俺達も頑張りましょう・・・あの、ソニアさん?」
俺がソニアに話しかけると、何故かソニアは引きつった笑みを浮かべていた。
「あのうソニアさん・・・?」
「はっ!そ、そうですね!この私が付いている限り泥船に乗った気持ちで・・・」
「違うから!それ沈んじゃう方だから!」
「お、大船に乗ったつもりでどっしり構えていてください!」
ソニアは慌てて言い直していた。一体どうしたんだこいつ?ちょっと様子が変なので俺はソニアにそっと尋ねてみた。
「あの、何か様子が変ですけど、どうかしたんですか?」
そう言うとソニアはロベルトには聞こえないような声で俺に話してきた。
「実は、天界での仕事の合間に日本のアニメやライトノベルなどを読み漁ってたんですが・・・」
ん?何の話だ?つーか、天界にそんなもん持ち込めるのかよ!そっちのが衝撃だわ。
「それでですね?時々そういう話の中であるじゃないですか、お約束って言うか・・・」
「お約束?」
いや、どれを指すのかよくわからないが・・・。
「例えば「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ」とか!」
「ああ、そういう奴ですか。フラグってやつですね」
「それ!フラグです!」
「で、そのフラグがどうしました?」
「さっきこの人「このクエストが終わったら結婚するんだ」って言ってました・・・」
「・・・」
なるほど。どうやらソニアはアニメやラノベの影響を受けまくっているって事だな。確かにアニメやラノベで「俺、この戦争から帰ったら結婚するんだ」みたいなセリフを言ったら「死亡フラグ」が立ち、言った本人が死んでしまい結婚できない・・・みたいな事はお約束となっている。
しかしあれはアニメや映画の世界であってこれは現実の話だからなあ。
「ソニアさん、あれはお話の中の出来事ですから。現実の話じゃありませんよ」
「そ、そうですよね?ま、まあこの私がいるんですから失敗するわけないんですけどね!」
立ち直り早いな!しかしそんな事気にするなんて可愛いところあるじゃん。
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