第15話 クエスト完了(泣)
それにしても、そこまで大きくない山だからと言って舐めてたなあ。まじで死ぬとこだったんじゃないか?それにしても、なんでこんな小さい山に本格的な冬の山を再現してるんだろ?ソニアに聞いてみるか。
「あの」
「なんでしょう?」
「こん小さな山なのに、なんでこんな吹雪で前も見えなくなるくらいの本格的な冬山を演出しているのかな~と思いまして」
「あら?この山の冬は登山家の方々に好評なんですよ?」
「え?ホントに?」
「はい。この辺りにはそういった場所が無いものですから、街のそばで手軽に本格的な登山が出来ると評判なんです」
まじかよ・・・。
「春になるとそれはもう見事な桜が咲いて、それを肴に宴会を行ったりと、それはもうオールシーズンで大活躍なんです!」
ソニアは身を乗り出して鼻息荒く俺に説明してくる。なるほど、これはソニア案件なんだろう。4週間毎に季節が変わるとか、常識人だったら絶対思いつかないからな。
「この世界はソニアさん以外にはどなたが管理に関わっていたんですか?」
俺は少し天界のお仕事と言うものに興味がわいてそう聞いてみた。
「この世界は私と父と・・・姉が管理運営していました」
姉の部分を言うのに少し間があったな。そういえば、この世界に来るとき、最初は乗り気だったのに姉が来ていることを聞いた途端、途端に行きたくないと駄々をこねてたような・・・。
このソニアがそこまで嫌がる姉って一体どんなやばい奴なんだろう?怖いもの見たさでちょっと気になるよな。ソニアに姉の事を聞くか聞くまいか・・・とか考えていたら、
「さあ、そろそろ休みましょう。ずっと歩いてたので、少々疲れてしまいました」
と言って、ソニアは寝袋の用意を始めた。なので俺も姉の事を聞くのは今度でいいやと思い寝袋の準備をして眠りについた。二人ともかなり疲れていたからか、すぐに眠りについてしまった。
「ぐるさん・・・・すぐるさん・・・」
あれ?なんか俺を呼ぶ声が聞こえる・・・なんだこれ?
「優さん!
そんな声が聞こえたかと思うと、思い切り顔に衝撃が走った。
「いってえ!」
ふと見ると、ソニアが俺に馬乗りになってビンタのポーズをしている。なんだこれ!?昨日もこんな光景を見たような・・・。と言うか・・・え?何これ?すげえ頭がガンガンする!あとなんかすげえ熱いような寒いような・・・。
「出雲優さん、すぐにこれを飲んでください!」
「え?でもなんか今何も口に入らないのですが・・・」
やべえ!なんか
「良いから飲んで!」
そう言ってソニアは俺に無理やり謎の飲料水を飲ませた。あれ?なんかひんやりして飲みやすいかも・・・。そう思いながら、俺は渡された分を全て飲んでしまった。
「あの、ありがとうございました。後何これすげえ暑いんですけど・・・」
そう言いながら、俺は寝袋からはい出た。さっきの飲み物が効いたのか、頭痛や寒気はおさまったようだ。その代わりすげえ暑い。体が熱で熱いとかじゃなくて、肌で感じる温度が暑いような・・・。
「あの、これなんでこんなに暑いんです?」
だって昨日はあんなに寒かったのに、いますげえ暑いんだぜ。
「出雲優さん。カラフル山は夏の周期に入りました」
「・・・は?いやいやいや、昨日まであんなに猛吹雪だったじゃないですか!」
おかしいだろ!?それに大体冬の次は春だろ?何で夏なんだよ!
「カラフル山の周期は4週間毎にランダムで変化するんです。春夏秋冬の順番ではありません」
なんだそれ・・・。
「あ、と言うかさっきの飲み物は何だったんです?飲んだら頭痛も寒気も収まったんですが・・・」
「あれは氷草を煎じたものです。水で溶かして優さんに飲ませたんです」
「え?もしかして俺、熱中症だったんですか?」
「顔が真っ赤になって凄い汗だったので慌てました」
「そうですか、ありがとうございます、助けてもらって・・・」
まじかよ・・・今回ばかりはこいつに感謝しなきゃな。
・・・あれ?ちょっと待て?
「あの・・・」
「なんですか?」
「さっき氷草を煎じたと言ってましたけど・・・」
「はい。昨日あなたが大量に採取した氷草を使いました」
まじかよ・・・なんてこった。
「あ、でもでも1本だけは残ってますよ!」
たぶん、あれ全部換金したら1か月は暮らせるほどの報酬は入ってたなあ。俺は少々がっかりしたが、まあ命あってのものだしな。ここは素直にソニアに感謝・・・いやちょっとまてよ?
「あの、つかぬことをお伺いしますが・・・」
「あら?私への感謝の言葉は不要ですよ。勇者として従者を保護するのは当たり前の事ですから」
「はあ。ところであなたはカラフル山も管理してたんですよね?」
「そうですけど?」
何当たり前のことを言ってんのよ見たいな目で俺を見る自称天使。
「でしたら、ソニアさんは季節の周期も把握してたのでは?」
俺がそう言うと、ソニアは俺から視線を逸らし、明後日の方向を向きだした。
「ふう、それにしても暑いですね。こう暑いと水浴びとかしたくなりませんか?特別に私の水着姿を見ることを許可しましょう」
「おお!それはいいですね・・・ってなるかあああああああっ!ふざけんな!あんた絶対周期の事忘れてたろ!?」
「仕方ないじゃないですか!目の前のクエストに集中してたんですから!」
「お前は雪だるまで遊んでただけだろうがああ!」
「はあああ!?あなたを看病したり凍死しそうな所を助けてあげたり大忙しでした!」
「それもこれも、あんたが全部忘れてるからじゃねーか!ふざけんな!」
「ちょっとお客さん、いい加減にしてくれんかね!」
俺とソニアが大げんかをしていると、いつの間にかおじいさんが俺達の後ろに立っていた。あれこの人確か・・・。
「えっと、この山の管理者の方ですよね?こんな所までどうしたんです?」
「どうしたもこうしたも、洞窟で喧嘩をしている奴がいるって別の客が教えてくれたんだよ」
あちゃー、これは恥ずかしい・・・。
「それはすみませんでした。えっと、その為にわざわざ山の上まで来られたんですか?」
「何を言っとるんだ。あそこを見てみ」
そう言われて、俺はおじいさんが指を刺した方向を見た。そこには「出口」と書かれたゲートが存在していた。
「あれ?出雲優さん、私、なんか見覚えのあるゲートが見えるんですけど・・・」
「奇遇ですねソニアさん、俺もあのゲートは見覚えがあります」
そして俺はこの山に入った時の事を思い出していた。俺が山に入った瞬間洞窟が目に入ったのをしっかりと覚えている。そして俺はゲートと洞窟を交互に見比べていた。
つまり俺達は、出口まで辿り着いておきながらそれに気付かず、入口そばの洞窟で吹雪の夜を過ごし、夜が明けると夏の蒸し蒸しした洞窟内で寝袋にくるまって熱中症になりかけ、そして貴重なクエストの採取アイテムを薬として使ったと・・・。
「ソニアさん」
「何でしょうか・・・」
「帰りますか・・・?」
「ソウデスネ」
様々なアクシデントによりすっかり心が折れてしまった俺とソニアは、とっとと宿に帰ることにした。
「あんたら
色んな事を勘違いしてそうな管理人のおじさんに訂正する元気は、もう俺とソニアには残っていなかった。とにかく家に帰って今日はふて寝しよう、そうしよう!
そう固く誓ったのだった。そして俺達は初めての二人でのクエストを完了した。くそー!
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