第14話 麗しい天使様(笑)
「ソニアさん!この道って正しいんですか!?」
「えー何!?全然聞こえませんよ!」
「この道正しいんですか!?」
「このイチゴ
ダメだ、この吹雪で全然聞こえないらしい。なんだよイチゴって・・・。
俺達は突然横殴りの風と雪に見舞われてしまった。正直視界も悪く、今はこの異世界の管理者と言うソニアの案内だけが頼りの状況だ。
この山に登った時には、あんな装備なんていらねーだろとか思っていたが、まさかこんな吹雪いてくるなんて思いもしなかった。やっぱ必要だからギルドで最低限の物は用意しているんだろう。
つーか管理者ならこういう状態になること知ってたんじゃねーの?前もって教えてくれればそれなりの心構えも出来たのに。
「ソニアさん!」
「なんですか!?」
「管理者なら吹雪の事知ってたでしょ!なんで教えてくれなかったんですか!」
ソニアは俺の質問にはすぐに答えず、俺が質問をしてから10秒ほど余裕で経ってから、
「え?なんですか?」
等と、鈍感系ライトノベル主人公が使うようなテンプレートな返事をしてきやがった。
こいつ絶対聞こえてるだろ!?と言うか、さっきからソニアの言葉は俺に届いてるんだから、あいつにも俺の声は聞こえてるはずだ。そう思って俺はトラップを仕掛けることにした。
「あ!あんな所に10万ゴールドが!」
「え!?どこですか!?どこに10万ゴールドが!?」
うわー引くわー。何、今の食いつき方。
「ねえどこですか!?全然見当たらないんですけど!」
「嘘に決まってるじゃないですか。何でこんなとこにおかね・・・ううぉおおおっ」
俺がそう言いかけている途中でソニアは俺の方へ凄い勢いでやってきて、胸ぐらを掴んでガンガン揺らし始めた。
「なんでそんな嘘つくんですか!この私の絶望感は一体どうすれば良いんですか!」
絶望って、そこまでお金好きか!?
「わか・・・わかったから!悪かったから!」
俺は無理やりソニアの手を掴んで揺らすのを止めさせた。うげー頭をガンガン揺さぶられて気持ち悪い・・・。
「
そう言うとソニアは再び前に歩き始めた。
くそー、あいつ思い切り頭を揺らしやがって。おかげでなんか気持ち悪いんだけど・・・。つーか、吹雪の雪がなんかいい具合に回転して、気持ち悪いのも重なって意識が・・・。
ふと気が付くと、俺は宿の自分の部屋の中にいた。
「出雲優さん、この前のグリズリー退治お疲れさまでした」
目の前には超が付くほどの美人が俺に話しかけている。そうだ、俺は異世界に来て、この麗しい天使「ソニア」と冒険をしているんだった。
冒険者ギルドで俺は、この美しい天使の従者となる事が出来たんだ。それ以来俺達コンビは、異世界を股にかける大冒険を繰り返し、数多のクエストをこなして多くの人達を救ってきた。
「優さん、たまにはご両親と妹さんにお手紙を書いては如何ですか?」
「え?日本へ届けることが出来るんですか?」
「はい、天使の権限で、特別に日本まで配達しちゃいます」
そう言って人差し指を立てて俺にウインクをしてきた。くそー可愛いな~こんな人が俺の彼女だったらなあ。そんな事を考えながら俺は家族に手紙を書きだした。
拝啓、お父さんお母さん、そして妹よ、元気ですか?僕は元気です。
今僕は、
なんと天使様は勇者様なんですよ?
そして僕は勇者に仕える者として充実した生活を送っていm・・・。
・・・さん・・・ぐるさん・・・。
あれなんだ?誰かの声が聞こえるような気がする。俺はいま家族に手紙を書いてるんだよ。読んだ人誰もが心温まるような手紙さ。だから邪魔しないでくれるかな。
「出雲優さん!起きてください!」
突然女の声が聞こえたかと思うと、俺の顔に衝撃が走った。
「いってええええっ!」
気が付くと、ソニアが俺の上に馬乗りになってビンタをしていた。
「ちょっと!なんでビンタして・・・あれ?なんだこれ!ちょー寒いんですけど!」
「しっかりと気を持ってください!じゃないと凍え死んじゃいますよ!」
ソニアの言葉に慌てて周囲を見回すと、辺り一面吹雪で視界が真っ白だった。なんだこれ!?
と言うか、俺相当危険な状態だったんじゃないか?だってあのソニアを「天使様」と呼んだり「充実した日々」とかあり得ないワードがバンバン出てたからな。
それにしてもあんな夢を見るなんて、
そこは見渡す限りの雪雪雪!そうだ・・・思い出した!俺達はクエストに来ていたんだった・・・。
「えっと僕は気を失っていたんですか?」
「そうです。突然バタッと倒れたからびっくりしました!」
なるほど、それで半分くらい雪に埋もれていたのか・・・。
「それにしても、出雲優さんが私に対してあのような感情をお持ちとは気付きませんでした」
「え?何の事です?」
「またまた~寝言で言ってましたよ~。麗しい天使様とか~このこの~。も~そんな風に思ってるなら正直に言ってくれれば、もうちょっと普段の扱いを良くしてあげたのに~」
等と、俺を軽くつつきながら、そんな気持ち悪い事を言ってきた。
なるほど、俺は気を失っている間にあの夢に関係する寝言を言っていたのか・・・。そう言う事なら仕方ない。俺も正直に自分の気持ちをソニアに打ち明けることにした。
「いや~日頃のストレスから余程逃げたかったんですかね~。夢の中で現実逃避してました~。いや~現実とはかけ離れた夢を見ちゃってたみたいです(笑)」
俺がそう言うと、ソニアは吹雪の中でもはっきりわかるくらい無表情にり、それから猛烈な勢いで俺に怒りだした。
「はああああ!?なぜあなたが現実逃避するんですか!?あなたが見た夢はまさに現実そのものじゃないですか!全然現実とかけ離れていませんよね!」
「どこの誰が麗しい天使様なんですかね!?そんな人いたら紹介して欲しいですよ!あ、!思い出した!大体僕が気絶したのもあんたが俺をあんなに揺さぶったからじゃないですか!」
俺がそう言うとソニアは俺を揺さぶる手をピタッと止めた。
「出雲優さん、あなたが気絶したのは後方からキラービーにぶつかられたからで・・・」
「嘘つけ!」
キラービーって、確か
「そ、それはともかく・・・あ!優さん!
またこいつはごまかそうとして適当な事を・・・と、思ったら本当に目の前に洞窟があった。まじかよ!これで少しは楽になりそうだ・・・。
俺とソニアは急いで洞窟の中に逃げ込んだ。中に入ると、洞窟と言うよりは単なる穴と言ったほうが正解なくらい奥行きは無かった。しかし風の方向が逆なせいか、穴の中に吹雪は入って来ず、案外温かかった。
「落ち着くまでここで大人しくしていましょう」
「そうですね」
俺はソニアの意見に賛成し、その場に腰をドカッと下ろした。
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