第3話 よし!別行動だ!

 天界の神様がいた場所で白い霧みたいな物に包まれた後、俺と悪魔みたいなはずれ天使は薄暗い洞窟のような場所へ立っていた。


 所々松明たいまつのような物が設置されており、真っ暗ではないが薄暗く不気味な雰囲気をかもし出している。


 つーか、あの神様も異世界へ送るなら、もっと町のはずれとかそういう場所に送ってくれよ。なんだよここ、怖えんだけど・・・。


 まあしかしこの感じ、本当に異世界に来てしまったんだろうか?そもそも電気じゃなく松明だしな。


 でも一番現代日本じゃないと確信できるのが、目の前に多きな魔法陣が描かれてある事だ。どう考えても日本じゃないんだろうなあ・・・。


 そしてそんな異世界に、よりによってハズレくじで当たった天使と来ることになるとは夢にも思わなかった。


 つーかまじでどうなるんだよ。魔法も剣も特殊能力も無いんだろ?どうやって剣と魔法の世界でやっていくんだよ。


 そう思いつつ、俺は横目でソニアの方を見てみた。


「どうしましょう。まさかお姉さまが地上に降り立っているとは予想できませんでした・・・」


 等と独り言を言いつつ思いつめた顔をしていた。つーか、そんなに嫌がられている姉ちゃんて一体どんな奴なんだ?逆に興味がわいてきたわ。


 正直声を掛けるのもためらってしまいそうな雰囲気をかもし出しているが、ここからどうすれば良いのか見当も付かないので、声をかけさせていただくことにしよう。


「あ、あの・・・」


 俺はなるべく波風立たないように、角が立たないように恐る恐る話しかけた。


「なんですか!?」


 ソニアは「キッ」と俺をにらみつけながら反応した。


 こえええ!超こええ!なんで俺が睨まれなきゃいけないのかは全く理解できんが、とにかくこええ・・。


「あの、これからどうすれば良いか全然わからないんですけど・・・」


 俺はなるべく相手の目を見ないようにしながら、なるべく刺激しないように下手に下手に話しかけた。


「はあ?そんなの自分で考えればいいじゃないですか!自分で異世界生活を選んだんですよね!?」


 いや確かに異世界は俺が選んだけどさあ。大体こいつ、俺を導くことくらい余裕ですとか華麗なる異世界生活を堪能させてあげますとか言ってたじゃねーか。なんでキレてんだよ。


 あ、そういえば、神様が俺達を異世界に送る時に、100万ゴールドを支度金したくきんとして渡しておくとか言ってたんだよな。とりあえずそれを渡してもらう事にしよう。


 いやちょっと待てよ・・・。俺はこの天使を見ながら今後の事を考えてみた。


 この天使は戦闘が全くできない。しかも本人は否定していたが、はずれくじに入れられるような存在だ。その上俺をからかって楽しんでいた節もある。


 そんな性格が悪くて使えない天使が俺の異世界生活に必要か?だってこいつがいなくて困る事なんてたぶん無いぞ。大体こいつと一緒に居たら俺に彼女が出来ないじゃん!


 よし!別行動だ!


 そう思った俺はすぐさまソニアに提案する事にした。


 大体こいつも俺と一緒に行動することを嫌っている節がある。たぶんすんなりOKしてくれるんじゃないか?なので俺は早速ソニアにその案を話し始めた。


「天使様のいう事はよーくわかりました。では、先ほど神様から渡された支度金を半分下さい。それを持って別行動としましょう」


「・・・え?」


「あなたが特典の箱に入ってたのは僕のせいではありませんが、わざわざ足を引っ張りそうな俺にあなたが合わせる必要はありません。ありがとう天使様。これからはお姉さまと一緒に素敵な異世界ライフを満喫してください」


 俺は持ち上げるだけ天使を持ち上げてやった。お金をやりたくないとかごねられても困るし、ここはひとつ俺が大人になって気持ちよくお別れするためだ。


「それ、本気で言ってるのですか?」


 ソニアはかなり驚いた顔でそう言ってきた。当然俺は本気だ。こいつと別れてバラ色の異世界生活を満喫するのだ。邪竜の討伐など知った事じゃねー。


「もちろんです!」


 なので俺は思い切りソニアの言葉に「はい」と言ってやったぜ。こいつと別れて俺は初めて異世界での生活を満喫できる気がする。


 大体女連れで歩いていたら恋人も出来ないじゃないか!俺は日本では無しえなかった可愛い彼女を作ってラブラブ異世界ライフを満喫するんだ!


 俺のはっきりとした答えにかなり驚きの様子だったソニアだが、しばらく考えるそぶりを見せた後こう言いだした。


「わかりました。では一緒に異世界を冒険しましょう」


「そうでしょうそうでしょう・・・え?」


 は?この人俺の話聞いてたのか?俺は別々に行動しようって言ったんだぞ。なんでそうなるんだ?俺は明らかに動揺していた。


「えっと、あの・・・」


「私は今感動しています。あなたが自分の事を卑しい身分だと自覚しているとは・・・」


 こいつ、今俺の事を卑しい身分だとか言ったか?


「そのあなたの思いに免じて、一緒に行動する事を許可します」


 な、なんだと・・・!?もしかしてこいつと別行動したいが為に、思い切り自分下げ&こいつ上げしたのが裏目に出てしまったのか?冗談じゃない!こんな何もできない奴と一緒だなんて絶対にお断りだ!


「いえいえいえいえいえ天使様、私と一緒に行動するなどもったいないお言葉。ささ、そのお金を半分渡して自由に行動なさってください」


 ふざけるなよ!?何が悲しくてハズレ天使と一緒に行動せにゃならんのだ。こいつ顔とスタイルは良いけど性格最悪だからな。一緒に行動なんかしてたらストレスではげ散らかしてしまうわ!


「む?やけにお金にこだわりますね?もしや支度金が目当てでは・・・」


 まずい!思っていたことが顔に出ていたか?いやしかし、ここで引き下がるわけには・・・。そうやって俺が頭の中で、次の戦略を練っていると、突然ソニアが変な箱を取り出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る