第18話最下層へ


「ハアアアアッ!」


 全力の一振り。オークナイトをぶった斬る。


 横からさらにオークナイトが襲いかかってくる。


「ウオオオオッ!」


 迅君がタックルして動きを止める。俺も動き、首を飛ばす。


「みんな下がって! 私の後ろに!」


 舞ちゃんが叫ぶ。


 下層へと向かうたび、魔物のレベルも量も桁違いになっていく。


 俺達が息を上げていると、沈黙していた赤月さんが動く。


「月野さん」

「はい!」

「俺が少し変わるよ。盾の使い方を良く見てるんだ」


 赤月は前に出ると、久しぶりとばかりに肩を鳴らす。


「攻撃の2人。動けるかい?」

「はい」

「あったりめぇだ!」


 俺達は再び前に出る。不思議なことが起こった。俺たちの前に盾が浮遊している。舞ちゃんが出す盾よりもより洗練されている。


「自由に動いて構わないよ」


 俺は言われるがままに魔物の群れに突っ込む。2.3匹倒したところで、ゴーストライダー。E判定が襲いかかるが、反応する前に盾が俺を守る。凄い滑らかな動き。


「盾って、動かせたのか?」


 そんなことを気にしているうちに、他の魔物も向かってくるが、盾が縦横無尽に動き、俺のことを守る。同時に迅君も絶妙に守る。凄まじい操作術だった。


 舞も驚いていた。盾が動かせたことも、あれほどの操作術にも、どれも最高レベル。赤月さん。本当に凄い。


「月野さんも盾を出してやってみてごらん?」

「わ、私のレベルでも出来るんですか?」

「出来る。君の能力ギフトならね」


 月野は気合を入れて、盾を出すと、操作を試みる。


 月野のイメージに盾が反応する。


「う、動きますけど、難しい」

「徐々に慣れればいい。まだ時間はある。最下層では月野さん1人に任せる」

「私1人に?」


 月野が赤月を見る。


「探索者になるんだろう。出来るよね?」

「…はい!」


 赤月は微笑み、月野はひたすらに盾を動かす。


 魔物を斬り捨てながら、盾のレッスンを受ける舞ちゃんと教える赤月さんをみていた。


「似てる」

「あ?」


 近くの迅君は汗だくで魔物を倒していた。


「あの2人。似てるなって」

「そうか? そうだな」


 何かあるのかな? まあ考えても仕方ない。俺は魔物を狩ることに集中し直した。


__


 ダンジョンに潜って一ヶ月。遂に最下層手前まできた。


 ネメアのおかげで眠ることは出来てるが、万全とはいかない。赤月さんはまるで疲れている様子はない。流石としか言いようがない。能力が【盾】じゃなく、攻撃系の何かなら間違いなく、探索者のトップになってただろうなって人だ。そう感じる。


 ここにサルバドールがいる。そんな風に思うのは言い過ぎだろうか。


「疲れてるかい?」


 赤月さんが話しかけてきた。


「少しだけですが」

「少しだけか。君も超越してるね。剣の腕も並じゃない。【剣聖】に達しているんだろう?」


 俺の心臓が高鳴る。初めて会う、他の超越者だ。


「赤月さんも並の盾じゃないですよね?」

「ああ。俺の盾は【消失の盾】。天使の盾を超え、辿り着いた盾さ」

「天使の盾を。す、凄いですね」


 大天使が星5ならその上もいくつかは天使シリーズか。それを越えたなら一体…


「君は最終的にはどうなるの?」

「…【剣帝】に」


 俺は恐る恐る伝える。


「【剣帝】かぁ! 凄いじゃないか!」

「知ってるんですか?」

「昔知り合いにね」


 昔…か。今はどうなんだろうか?


「あの! SPのレベルアップ以外の上げ方って知ってますか?」

「ん? んー。黄金の桃」

「黄金の桃、ですか?」


 何じゃそりゃ?


「もう少し高い位置に行けば、耳に入ってくるくらい有名な話だ。実際ブラックマーケットなんかで取引されてる。食べたら+10程、SPが手に入る。お高いけどな」

「それは凄いですね!」

「ただ一回しか効果はないそうだから、騙されて何回も買わされないようにね」


 赤月さんが忠告してくれる。


「他には知らないな。あまり興味もなくてね。何かわかったら教えよう」

「お願いします!」

「気にしなくて良い。君には期待してる。あ、あー。みんなをしっかり守るんだ」


 俺は頷く。頑張ります。嬉しいこと言ってくれるなぁ。


「寝ようか。君らは明日大変だよ」

「はい」


 焚き火の前で横になる。色々聞けたことで、高揚し、なかなか寝付けなかった。


__


 次の日、準備万端で、下へと向かう。舞ちゃんはみんなを守ると言う重役で、かなり緊張していた。


 下の層に着くと、黒い人影…?


「魔人だね。当たりかな。B判定だ」


 赤月さんがみんなに伝える。


「あの、一体じゃ…これやばいっす!」


 魔人は一体じゃなかった。


「ありゃ。『巣』が出来てるな。母体がいるようだ」

「母体?」


 月野が尋ねる。


「女性の魔人さ。単為生殖が可能で。生まれる魔人は男になり、死ぬまで母のために動く。母体の魔人の強さはB+判定だ。こんなところでこんなことになるとはな。君たち引きが強いね」

「初めて聞いたぞ。そんなもん」


 迅君がキレる。


「魔人は魔族の手駒だ。勝手に増えるように作られているんだ」

「逃げなきゃ。10体はいるわ」


 一ノ瀬さんが逃げる体勢になる。


 その時、俺たちの侵入に気づいた魔人がこちらを見つめる。


「…ニ…ニ…ンゲ…ンンンン!!」


 その声に魔人達が一斉にこちらを向く。


「逃げられねぇ! 舞ちゃん頼む!」

「うん!」

「2人も覚悟決めよう。ここまでで強くなった!」


 迅君も戦闘態勢を取る。一ノ瀬さんも頷く。


 剣を振り、構える。


「行くぞ!」


 魔人の群れ。災厄のミッションに挑む。


名前:一ノ瀬薫

種族:人間

Lv:25/100

HP:220/220

MP:295/295

攻撃力:130

防御力:130

俊敏:130

器用:130

運:25


SP:0


ギフト一覧 

逆行:Lv6⭐︎⭐︎

結界壁:Lv1 ⭐︎⭐︎

MP強化:Lv10 ⭐︎

HP強化:Lv1 ⭐︎

防御力強化:Lv1 ⭐︎


名前:綱紀迅

種族:人間

Lv:25/100

HP:220/220

MP:220/220

攻撃力:195

防御力:130

俊敏:130

器用:130

運:25


SP:0


ギフト一覧 

求道者:Lv1 ⭐︎⭐︎

武道:Lv1 ⭐︎⭐︎

攻撃力強化:Lv10 ⭐︎

俊敏強化:Lv6 ⭐︎

MP強化:Lv1 ⭐︎

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