第16話【盾】
一ノ瀬は走っていた。いつものお決まりの目許家を目指して、もうみんな集まっているはずだ。途中で迅君を見つける。
「迅君!」
「おー。一ノ瀬。目許の家行くとこ? 一緒に行こうぜ」
「それより朗報! 朗報!」
はしゃぐ一ノ瀬。
「どうした?」
「決まったの! 面倒見てくれるギルド!」
迅君は少し思考停止。
「マジで!?」
__
「えっと【盾】か。G級のギルド。メンバーも5人か。ギルドを維持するにはギリギリの人数だな」
「しかも5人のうち3人は名義貸しみたいな感じってネットに書いてあるね」
一ノ瀬さんの話を聞いて早速調べた俺と舞ちゃんが話す。
「でもでも! やっと見てくれるって!」
「そうだぜ!」
一ノ瀬さんと迅君はこちらを説得しているようだ。
「別に調べただけさ。お願いしよう。舞ちゃん、問題ないよね?」
「うん!」
元気に頷く舞ちゃん。
俺達は早速そのギルドの人に連絡をした。
__
東京 某雑居ビル
「ここかな?」
「そうだね」
狭いビルがいくつも並ぶビル街の一つが俺たちの目指していた場所。その中の一つにギルド【盾】が入っていた。
「行ってみよう」
雑居ビルの中に入り、階段を登る。3階がギルドの場所だった。何も書かれていない黒く薄汚れた扉をノックする。暫く待つと、扉が開く。
扉から覗き込むように1人の女の子がこちらを見ている。同い年くらいの子かな。
「あの」
「………」
「ご依頼の件でお話ししたく、参りました」
「………」
え? あれ? ど、どうしたの?
「あー。悪いね。入ってくれ!」
奥の方から声がする。気づくと扉は大きく開けられていた。扉のそばにニット帽を深く被った女の子が立っている。俺と同じくらいの背格好だ。髪はニット帽でよく分からない。顔はふとエルフを思わせる。そんな整った顔立ちだ。
奥のソファに座る男性がギルドマスターか。部屋の中にいるのに、黒のロングコートを着ている。頭は少し伸びてボサボサだ。年齢は40歳だそうだ。
この男の人、妙だな。先輩なのに妙に緊張しているように見える。
「悪いね。その子はあまり話さない。普段は俺達は森で生活してるから」
「森、ですか?」
舞ちゃんが尋ねる。
「君は………」
突然男性が止まる。舞ちゃんを見つめている。
「あの…?」
舞ちゃんは戸惑い気味だ。
「あ、ああ…ごめんよ。そうだ。平和になったからね。キャンピングカーで旅しているんだ。ただ少しお金が必要になってダンジョンに行こうか迷ってたら。ニーナ。その扉の女の子が、仕事を見つけてくれてね」
「ダンジョンの方が稼ぎが良いのでは?」
俺は単純な疑問を口にする。
「ダンジョンに行こうにも、俺の力は【盾】だ。攻略は難しくてね。誰かの護衛なら役に立てる」
「なるほど。お名前は、
みんなで頭を下げる。
「そんなに畏まらなくてもいいよ。あの、応募に俺と同じ【盾】の力を持つ人がいるらしいね。
舞ちゃんが手を上げる。赤月さんは舞ちゃんを見つめる。
「やっぱり、君が…」
俺の目は赤月さんを見ていた。あの瞳は…潤んでいる?
「そうか………ありがとう。どんなダンジョンがお望みだい?」
「夏休みいっぱい経験を積みたいと思って、ダンジョンスケール2に挑みたいです」
俺が考えを伝える。
「夏休みいっぱいならスケール3でも良いんじゃないか? 低層でも良い魔物が多い」
スケール3という言葉にビビる。他のみんなもそうだ。それ程に1段階違えば、世界が違う。
「平気だよ。俺がいるんだ」
ふふんと不敵な赤月さん。あんたG級やんと心の中でみんなで総ツッコミを入れた。
__
東京 月野邸
「舞が向かうダンジョンは分かったか?」
「はい。横浜の○○ダンジョンです」
月野邸は立派な日本家屋。庭園があり池がある。木も何もかもが最高級品だ。家の前には豪華な門があり、監視カメラがそこら中を睨んでいる。
その家の一室の上座に月野グループ総裁・
「あの子に何かないように警戒しつつ、周りを排除しろ。舞とは似つかわしくない連中だ」
「は!」
部下は深々と頭を下げ、退出する。
月野成幸は娘のことを思う。今は何かと反抗期だが可愛い娘よ。娘のためなら何でもする。だがやはり一点気になる。娘の
【盾】。その能力は珍しくない。だがあのエルフの一撃にも耐えるとなれば、すでに星4クラスの防御力に達している。恐るべき力。我が娘は
月野成幸は襖を開けて天仰ぐ。サルバドールども、いつか必ず。月野成幸の瞳は熱く燃える。その瞳は戦争時代から何も変わっていなかった。
名前:月野舞
種族:人間
Lv:30/100
HP:245/245
MP:245/245
攻撃力:155
防御力:255
俊敏:155
器用:155
運:30
SP:0
ギフト一覧
騎士の盾:Lv1 ⭐︎⭐︎⭐︎
魅了:Lv1 ⭐︎⭐︎
HP強化:Lv1 ⭐︎
防御力強化:Lv10 ⭐︎
器用強化:Lv1 ⭐︎
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